昨日のことを消した先
黄色いハンカチと赤い薔薇
エピローグ
よくよく考えたらバカだったけど。
愛を謳って謳って雲の上なんてそんな恥ずかしいことを本気で信じて目標にしていたあのころ。
弱いけれど、でも力強く輝こうとする光に目を焼かれて、それ以外考えられなくなって。
その人に追いつきたくて、でもできなくて。
最後の言葉が
「お前には追いつけなかったなぁ、、、」
なんて。
そんなことを自分の手の中で弱々しく呟いて。
あんなに綺麗だった瞳なんかも、濁りきって何も見えないだろうに。
結局最後まで近いようで遠くにいて。
君を守ることが出来なかった上、守られてなくしてしまう僕を許しておくれ。
綺麗な黒い髪。
綺麗な日が当たると青く見える綺麗な青い瞳。
大きいというか切れ長の目。
かっこいい君。
君は最後まで、僕を男だと思ってただろうけど。
でもそんなの関係なく、君のとなりにたちたかった。
憎くて羨ましくて。
君は、僕が君の欲しいものを持っていると思っただろうけど、君も、僕が欲しいと思っているものを持っていたんだ。
圧倒的勇気。
力はそんなにないくせに、誰かのためにたたかえる。
力だけがある僕と、力だけがない君。
才能しかない僕と、才能だけがなかった君。
努力で補おうとして、何度でも立ち上がる。
君が隣にいると、醜い所が透けてしまって。
君が僕に追いつこうとしてくれていたから。
だからこそ、人間でいられた。
「次会うときは、その時は 」
口付けを落とそうとして、でもやめて。
言いかけて、何もかも遅いことに気づいて、やめて。
「さようなら。ドリンク。」
にんげんが、頬から流れ落ちた。
その瞬間、周りを埋めつくしていた影が消えた。
「本当に、失ってから気づく。」
いや、消された。
腕利きの騎士が何人がかりでようやく一体倒す化け物の群れを消した。
「は」
自嘲するように笑った。
そこに居たのは人間では無い。
世界の最終兵器。
終末に対するカウンター。
誰もが勝てないと一目でわかる、わかってしまう存在。
「まあ彼だけは、追いつこうとしてくれたんだけどね。」
誰に言う訳でも無く、そうつぶやき。
「つまらないなぁ。」
異形に埋め尽くされた地平線に向かって、神の槍が投擲された。
もう人間は残っていない、そんな世界で。
ふたりぼっちがひとりぼっちになっただけの。
そんなしょうもない話。
でも、最後に立ち会えたのが僕でよかった。
空には巨大な真っ直ぐな剣と歯車。
無数の槍と殺すまで殺す根暗な矢。
全てを押しつぶす強固な盾と、飲み飲み続けるダークマター。
神話と遜色のない光景が拡がっていた、そして終わって行く。
小さい頃から変な記憶が頭の中にあった。
絶対に信じたくない、そんな記憶が。
しかし無情なことに、
雨の日に、年齢が同じくらいのイケメンな子を助けたことで、確信に変わった。
「ってこれ、前の世界と一緒じゃねえかぁ!!」
ドリンクウォーター。2度目の人生である。
「嫌だァァアァアアア!」
親に怒られたけど俺は悪くないし、負けてない。
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