チー牛学園~君達にはこれから恋をしてもらいます~

サニキ リオ

プロローグ

 新たに始まった学園生活。

 多くの生徒が新たな環境で始まる新生活に心を躍らせている。

 緊張して校門を潜れば、これから三年間過ごすことになる校舎が出迎える。

 張り出されたクラス分け表。

 入学式で自分達を歓迎してくれる先輩や教師達。

 顔も知らないクラスメイト達。

 そのどれもが新鮮で、自分はこの学園の生徒になったんだという実感を与えてくれる。

 きっとこれから自分は人生の中でも忘れられない青春の一ページを飾ることになる。

 そんな風に考えていた者も少なくはなかった。

 だが、思い描いていた青春の一ページは、入学一週間後に担任教師から放たれた言葉によって破り捨てられることになった。

 クラスのムードメーカー的な男子も、

 笑顔を浮かべて雑談に興じていたギャルも、

 大人しく読書に興じていた男子も、

 元気が取り得の運動部の女子も、

 誰もが静まり返り、唖然とした表情で担任教師の言葉を聞いていた。


「せ、先生。もう一度言ってもらえますか?」


 担任教師の言葉が信じられなかった者が声を震わせながら発言する。

 それだけ担任教師の言葉は信じられないような内容だったのだ。


「んー、聞こえませんでしたかー? では、もう一度言うのでしっかり聞いてくださいねー」


 重苦しい空気には似つかわしくない緩い口調で担任教師は同じ言葉を繰り返す。


「あなたは既定の課題をクリアしなかったため、退学処分になりましたー」


 退学処分。

 本来、問題を起こした生徒や成績が一定水準を下回り続けたものに適用される措置。

 生徒にとっては死刑宣告にも等しいそれはあっけなく執行された。


「前に余程のことがなければ退学にはならないって言いましたけどー……つまり、余程のことがあれば退学になるってことでもあるんですよー」


 担任教師は退学処分になる生徒を真っ直ぐに見据えて告げる。


「どうしてあなたがモテないのか。その答えが退学理由ですよー」


 この学園は、恋愛弱者のままでは生き残れない――恋愛が必修科目の学園なのだ。

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