奇跡
どれくらい続いたのか、眩い閃光と大きな爆発音が視界と音を奪った。
巨大な黒いキノコ雲が空高く舞い上がった。
シオン達はようやく自分が生きていると実感し、周囲を見渡した。周囲は酷い爆風の煙りで視界は悪かったが、アリエルの張った結界のおかげでこちら側には殆ど煙はやってこなかった。
「そうだ!アリエル様は!カイルは!?」
シオンは悪い視界の中で周りを見渡した。
視線の先には肩で息をするアリエルがいた。
「アリエル様!?」
『はぁはぁ、し、シオン無事ですか?」
シオンはアリエルを抱き締めた。
わかってる。アリエル様は最善を尽くした。アリエル様は悪くない。悪くないのだ。
だって、今もこんなに疲弊しながら私達を、多くの兵士達を守ってくれたのだから。
でも───
それだけの力があるなら、カイルを助けてくれたっていいじゃない!
シオンは必死に考えないようにした。
アリエル様は正しい事をしたのだと。
自分に言い聞かせるように強く抱き締めた。
『……………カイル先王陛下のおかげで、私も命を救われました。本当に無茶をする人です。誰かさんと一緒ですね』
アリエルは疲れ切った顔でシオンを見詰めた。
「あ、アリエルさ………ま……」
そんな時、後ろからシオンを呼ぶ声が聞こえた。
「シオン…………無事じゃったか?」
!?
「カイル!どうして!?」
『私が助けたんですよ♪』
アリエルがドヤ顔で言った。
「どうやって!?」
「それは、『アレ』のおかげです』
アリエルの指の先には、対フレイム用に掘った土豪の跡だった。
『フレイムに地下水をぶつける時の、通り道に使ったのです。そしてカイルさんが倒れた時、水を操って土豪の道を使ってこちら側に運んだんです』
なんと!?
それなら早く言ってよ!
『あの時は結界魔法とカイルさんを水で運ぶ為に、意識を2つに割いていたので集中していたんです。とても返事を返す暇がありませんでした』
うぐぐっ!
そう言われると言い返せないわ!?
シオンが安心して脱力した時、カイルがむせて血を吐いた。
…………えっ?
「御爺様!?」
「カイル様!」
イオンやペルセウスも視界が戻り、カイルの側に駆け寄った。
「ゴフッ、はぁはぁ…………大丈夫じゃ。ここまで生きることができたのは、すでに奇跡なのじゃから」
カイルは力なく微笑んだ。
「そ、そんな!?」
シオンはアリエルを見たが小さく首を振った。
ドドドッ!!!!
そこに、数名の騎馬がやってきた。
「ルイン!イオン!無事かーーーー!!!!」
現皇王ルークが子供達を心配してやってきた。本来は国の一大事と言うことで、シオンの街で、戦いの結果を待っていたのだが心配で馬を飛ばしてきたのだ。
「父上!ここです!御爺様が大変なんです!」
ルインは手を振って呼んだ。
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