幸せを願って
シオンは必死に止めたが、時間が無いためカイルはシオンの支援抜きでも決行する事にした。
結果、シオンはカイルを死なせたく無いために持てる力を使い氷の壁を作る事になった。
「カイル御爺様……………申し訳ありません!」
ルインは自らの非力さに歯を食いしばっていた。
わざわざ死なせる為に向かわせてしまう自分の不甲斐なさにも憤慨していた。
「そんなに自分を責めるな。手から血がでておるぞ?ルインよ。お主はきっとよい王様になれるじゃろう。民を頼んだぞ」
ルインは小さく、はいと答えた。
ペルセウスも昔からカイルに可愛がってもらっていたので泣いていた。
「ペルセウス、ワシのもう一人の孫よ。お主もきっとよい領主となるじゃろう。植物学者としても頑張るのじゃぞ」
「はい………」
みんなはわかっていた。
高温になったフレイムに攻撃を加えると言うことは、爆発を誘発しそのまま生きてはいられないということを。
「ルイン王子!イオン皇女は退避を!ここは私が!」
泣きながらシオンは二人に叫ぶように言った。
「いや、オレも最後までここでシオンを守るよ」
「そうだな。今から逃げても間に合わないよ。それならアリエル様の側が、1番安全だと思うよ」
ポロンッ
「私もここに残りますわ!私にはピアノを弾くしかできませんけれど」
「もうヤケですわ!私もヴァイオリンを引き続けますわ!」
効果があるかわからないが、音楽は確かにフレイムに効いていた。ダメ元で演奏をして爆発を少しでも遅らせる事ができればと。
「カイル様に身体強化の魔法を掛けました」
「感謝する!」
カイルはそう言うと、駆け出した。
『今ならわかる。ワシが生きていた意味を!今この瞬間の為にあったのじゃと!』
フレイムまでの距離は僅か100メートルしかない。カイルは全力で駆け出した。
ワイズの結界魔法とシオンの氷の壁のおかげで、熱はだいぶん緩和されている。
さらには、アリエルもフレイムの熱を弱める為に地下から水をフレイムに当てた。
すでにフレイムは死んでいるのかまったく動いていなかった。だが、そのせいで下を向いている為に、懐まで入らないと逆鱗に攻撃を当てる事が、出来なかった。
『はぁはぁ、ワシの体力では一撃が限界じゃな』
そんな時、フレイムの身体の一部が爆発した。
「グワッ!?」
爆風がカイルを襲う!
もう一刻の猶予もなかった。
「カイル!これでっ!」
シオンは先程と同じく地面から氷柱を出して、フレイムの顎にぶつけた。
首が上を向いた事により、カイルは逆鱗を狙い易くなった。
「よし!見つけた!?」
首下にあった逆鱗はよく見ると色が違っており、すぐにわかった。
カイルは足を止めずに、その勢いのまま逆鱗に剣を突き刺した。カイルの剣も抜刀部隊の氷の属性が付加されたものだったので、深く突き刺す事ができた。
パリン!?
意外にも鏡が割れるような音がした。
「はぁはぁ、これで少しは──」
フレイムから溜め込んだ炎の熱量が溢れだしていた。
「カイル!早く戻ってきて!?」
距離は100メートル。
姿も見えるし声も届く!
カイルは戻ろうとしたが、体力の限界がやってきたため、倒れてしまった。
「カイル!?」
シオンは駆け寄ろうとしたが、結界が張ってあるためぶつかってしまった。
ガチンッ
「あいたっ!?」
『シオン、すでに結界を張りました。向うのは無理です』
「アリエル様!結界を解いて下さい!カイルが、カイルが死んじゃう!?」
拳で結界をドンドンッと叩くがびくともしなかった。今までになく取り乱すシオンに、兄ペルセウス以外は戸惑うばかりであった。
「はぁはぁ、シオンすまん。ワシはここまでじゃ」
ただでさえ弱っている身体に、さらに身体強化魔法まで使ったのだ。寿命を縮めていた。
『死に別れた愛する人とまた会えた。その奇跡だけで、アリエル様に最上級の感謝を』
カイルはやりきったと言う顔で最後を待った。
そして、遂にフレイムの身体が光りだし、爆発が始まった。
『グッ…………衝撃に備えて下さい!』
「アリエル様ーーーーーーーー!!!!!!」
シオンの叫び声と同時に、周囲は閃光に包まれ爆音が響き渡るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます