第42話 優志が見た夢
N
優志
ラデク
サラー
アルス
アイネ
ユーリ
ヴィット
サクビー
サーシャ
猫勇者たち
魔王ゴディーヴァ
神父
————
Nある日の夜——。
目に映っていたのはやはり、“夢の世界グランアース”の光景だった。
しかし優志自身はというと——映画館のような場所で座席に座っており、ベルトにより固く身体が拘束されている。
そして映画館のスクリーンには、夢の世界グランアースの風景が映っているのである——。
優志「何ですか、ここは。……く、動けません。誰か、ベルトを外してもらえませんか!」
呼びかけてもその映画館には、優志の他に誰もいない。
誰も優志を、助けない。
諦めた優志は、スクリーンに映る夢の世界グランアースの風景が、繁華街モヤマにある宿屋の、食堂の風景へと変わったことに気づく。
優志(あれ? あそこにいるのは……私ではないですか。ラデクくん、サラーさんもいて、ちょうど食事が終わったところでしょうか)
優志
視点が止まるとそこには、ピシッとした青いタキシードを身につけた黒髪の男子が、映し出される。
その男子は——。
優志(
アルス「これから宜しく頼みます!」
現実世界における男性アイドルグループ“ジョーカー&プリンセス”の北村修司そっくりのタキシード男子は、ハキハキとした口調でそう言うと、軽く頭を下げた。
優志「こちらこそ宜しくお願い致します、アルス王子様」
ラデク「まさか王子アルス様が一緒に戦ってくれるなんて!」
サラー「心強いわねー。アルス様ー、よろしくねー」
優志(そうです、アルスさんです!)
勇者ミオンのパーティーに、オトヨーク島を治めるリベル王の子息、アルス王子が加入したのである。
そこでスクリーンは暗転、場面が変わる。
優志(これは……!)
赤茶けた荒野で勇者ミオン一行は、何者かと激しいバトルを繰り広げていた。
戦っていた敵は、魔王軍三幹部——ヴィット、サクビー、サーシャ。
優志「3連“フォルテシモ”ッ!!」
優志=勇者ミオンが発した必殺技が、ヴィット、サクビー、サーシャにそれぞれ命中。敵陣に大きな隙が出来る。
優志「アイネさん! ユーリさん! 今です!」
勇者ミオンが叫ぶと、新しくパーティーに加わったであろう2人の少女が、魔王軍三幹部の前に躍り出た。
優志(アイネ? ユーリ? ……あっ! ライブハウス“
そう——2人の少女は、
しかし悠木の姿は——桃色のサイドテールの髪、桃色の大きなリボン、音符の形をした金ピカの装飾があしらわれた白とピンクを基調とした可愛らしいドレス姿。
雪白の姿は——青色のロングヘアに金色のティアラ、白と水色基調のセーラー服をモチーフとしたアイドル衣装に、コバルトブルーのネクタイ。
その姿はまさしく、アニメで見るような美少女魔法戦士。
2人の足元では、白と黒の毛玉がぴょんぴょんと跳ね回り、白の毛玉は「みゅー!」と、黒の毛玉は「ぴのー!」と鳴いている。まるで、2人に声援を送っているかのようであった。
優志(これは、どういうことでしょうか……?)
アイネ「覚悟しなさいっ!」
ユーリ「これで終わりよ!」
アイネ&ユーリ「「“フラタニティ・フラッシュ”!」」
2人の美少女魔法戦士から放たれた純白の輝きが、魔王軍三幹部を覆い尽くす。
ヴィット「おのれェェェェッ……!!」
サクビー「ギャビー!!」
サーシャ「オ……オホホホ……これまで……ですか……グブッ」
ヴィット、サクビー、サーシャは眩い光と共に同時に爆散し、勇者ミオン一行は魔王軍三幹部との戦いに見事、勝利した。
優志(あ、勝ちました……! 強いですね、あの子たち……。ん? また場面が変わります……)
再びスクリーンは暗転。
次に映された場所は、魔王城の、王の間だった。
壁にある松明の青紫色の炎がぼんやりと放たれるだけの薄暗い空間で——魔王ゴディーヴァと、勇者ミオンのパーティーが対峙していた。
すぐに暗転し、場面が変わる——。
部屋の所々に炎が上がり、床には穴が空き、柱も数本倒れていた。
近くには、焼け焦げた敵の将軍らしき屍体が横たわっていた。
既に、激しい戦いが繰り広げられたらしい。
勇者ミオンのパーティーにはラデク、サラー、僧侶リュカ、アルス王子。
そしてやはり、
先ほどと同じく、悠木の髪色はピンク色、衣装も白とピンク色基調で、音符の形をした可愛らしいアクセサリーで飾られている。
雪白も髪色は水色で、衣装も白と水色基調のセーラー服をモチーフとしたものになっていた。
さらに、3人の勇者が増えていた。
勇者の冠をつけた艶やかな黒髪に、前髪だけが銀色に染まった男前な顔。黒色と紫色の鎧と盾、紫色の光を帯びた剣を持つイケメン勇者。
同じく勇者の冠をつけた銀髪のロングヘアを後ろで2つに括り、白系統の塗装で金色の飾りがついた軽量の鎧と盾に、銀色に輝く剣を持つ、色白美女の勇者。
無造作な茶色の髪、太い眉に鋭い眼。青色基調の道着を身につけ、両手には銀色に光るグローブを装着し、ファイティングポーズでステップを踏む武闘派の男性勇者。
新たに加わっていた3人の勇者は、頭に猫耳をつけ、腰に猫のような尻尾を生やしていた。
優志「魔王ゴディーヴァ……これで最後です! 行きますよ!」
勇者ミオンの掛け声を合図に、僧侶リュカが何らかの魔術を詠唱する。するとパーティー10人の周囲にオレンジ色のオーラが出現。
ラデク「てやああ!! “
まずはラデクがゴディーヴァの腹部に突撃、双剣での斬撃を喰らわせた。
サラー「“アルティ”!」
直後、サラーの魔法が炸裂。おそらく最強の魔法だろう。魔王の間全体が、太陽の如き眩い光に満たされる。
怯んだ魔王ゴディーヴァの隙を逃さず、3人の猫耳勇者たちが手を取り合うと、それぞれの武器——紫色の剣、銀色の剣、銀色のグローブを魔王ゴディーヴァに向け、叫ぶ。
猫勇者たち「「「“セイクリッド・キャットアロー ”!!」」」
矢継ぎ早に、2人の美少女魔法戦士——悠木、雪白のコンビ技も放たれる。
アイネ&ユーリ「「“フラタニティ・フラッシュ”!!」」
放たれた巨大な光の矢と、桃色と空色に輝く光の弾丸が、同時に魔王ゴディーヴァの身体を貫く。
アルス「“リヒト・レーゲン”!」
さらに、アルス王子の魔法が発動。天井から無数の光の矢が夕立ちの如く、ゴディーヴァの頭上に降り注ぐ。
そして——。
優志「……“スフォルツァンド”!!」
勇者ミオンが放った巨大な白い光の弾丸が、魔王ゴディーヴァを包み込んだ。
魔王ゴディーヴァ「ウ……ウアアアアアアアアアッ……!!」
断末魔を上げ、諸悪の根源——魔王ゴディーヴァは、目も開けていられぬほどの眩い光に焼き尽くされ、消滅。
勇者ミオン一行はついに魔王を倒し、長い冒険に終止符を打ったのである——。
優志「ついにやりましたね! さあ、リベル王様のところへ報告しに行きましょう!」
勇者ミオン一行は、床に現れた虹色のワープゲートへと消えていった。
優志(やけにあっさりと倒しましたね……)
魔王は倒され、魔族が滅び、平和な世界が戻った後——。
次の場面は、王城で行われている結婚式であった。
神父「それでは 花嫁花婿のご入場です!」
入場してきた2人は——。
タキシード姿のアルス王子と、ウェディングドレスに身を包んだ悠木愛音であった。
神父「本日これより神の
アルス「はい、誓います」
神父「汝、アイネはアルスを夫とし……健やかなる時も病める時も、その身を共にすることを誓いますか?」
アイネ「はい! 誓いまあすッ!」
神父「よろしい。では指輪を交換し、神の御前で2人が夫婦となることの証……誓いの口づけを!」
アルス王子と悠木は互いに抱きしめ、口づけを交わす。
神父「おお……神よ! どうか末長く、この二人を見守って下さいますよう……」
湧き上がる歓声の中に、ラデクやサラー、僧侶リュカの声が混じる。
——悠木は、確か“ジョーカー&プリンセス”の
そしてアルス王子は、やはり北村修司そっくりだ。顔も背の高さも、本人そのままだ。
つまり——悠木は、最推しとの結婚を実現させていたと言っても同然である。
優志(もしこれを悠木さんが見たら、きっと喜ぶでしょう。……そういえば、私……勇者ミオンは何処へ?)
神父「さて、アルス様とアイネ様、そしてこの場におられる仲間と共に魔王を討ち倒した、今は亡き勇者……ミオン様のご活躍を、決して忘れてはなりませぬ。勇者ミオン様とその仲間たちのお陰で、これからオトヨーク島はまた、平和な日々が始まるのです」
優志(そんな……。平和を取り戻したのに、私は死んだのですか……?)
またもスクリーンは暗転、場面は変わる——。
ある曇りの日。
繁華街モヤマのすぐ近くの草地で、アルス王子と悠木が、向かい合って話をしている。
アルス「これから王城に向かうから。留守番頼むね、アイネ」
アイネ「うんっ! シチュー作って待ってるから!」
手を振る悠木。アルス王子は振り返り、微笑みを返す。
そしてアルス王子が街道へと一歩踏み出した、その時——。
轟音と閃光が、辺りを包み込む。
アイネ「きゃっ!?」
落雷が、悠木の近くの地面を抉ったのだ。
耳を貫くほどの破裂音と共に発生した衝撃波と突風が悠木を襲う。悠木は吹き飛ばされ、転倒した。
起き上がった悠木の目に映ったのは——信じがたい光景だった。
アイネ「……アルス? 嘘でしょ? ……アルス!!」
それは、落雷の直撃を受け、全身から血を流して横たわるアルス王子の姿だった。
悠木は駆け寄って心音を確かめたが、アルスの心臓は既に止まっていたらしい。
魔王ゴディーヴァ『ワハハハ……ワシの恨み、思い知れ……! 幸せなど……すぐに消えて無くなってしまうものなのだ!』
響いてくる、倒したはずの魔王ゴディーヴァの禍々しい声——。
ショッキングな光景に、優志は思わず目を覆った。
優志(魔王ゴディーヴァ! 生きていたんですか! ……ダメです、これは悠木さんには見せられないです!)
そう思った瞬間、優志は夢から覚める——。
♢
優志「はぁ、はぁ……。今の夢は一体……?」
まだ春先だというのに、布団は寝汗でぐっしょりであった。
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