【私には似合わない】はもったいない! ためらう必要のない心理学的根拠

エテルナ(旧おむすびころりん丸)

【私には似合わない】はもったいない! ためらう必要のない心理学的根拠

「私には似合わない」


一度は口にしたことがある、若しくは聞いたことのある言葉ではないでしょうか。

筆者は洋服のお仕事に携わっていたことがあり、この言葉を耳にする機会がしょっちゅうありました。

中には勧められたものを断りたい、という意志をオブラートに包み、建前として口にするケースもあるでしょうが――


・本当はこんなお洋服を着てみたい。

・派手な髪色に憧れる。


本心ではチャレンジしてみたいけれど、私には似合わないから。この理由で諦めてしまうのは、とてももったいない考えです。

ネットには着こなし術やら、似合わせる為の技が紹介されております。しかし本記事では小手先以前の話から、躊躇う必要のないことを心理学に基づき解説していきます。


【スポットライト効果】


人間というのは、他者の考えを読み取る生き物です。けれどいかに相手の気持ちに立って考えたところで、必ず己の感性や経験が混じります。

乗り移りでもしない限り、他者の気持ちを完全に理解することはできません。自分なりに解釈するのが当然です。

よって両者の間には、多かれ少なかれ齟齬が生じます。


例えばAさんが髪を切ったとします。

人気の美容室を予約して、仕上がりにも納得!前より可愛くなったと舞い上がり、ウキウキ気分で会社に向かいます。


Aさん

(ほら見て、可愛くなったでしょう? とても美しくなったでしょう? みんな見て、綺麗になった私を褒めてちょうだい!)

Bさん

「あ、おはようAさん」

Aさん

「Bさん……何か気付きません?」

Bさん

「いや別に、それよりこの案件を――」

Aさん

「……」(ジト目)

Bさん

「どしたの? ムスッとして……」


パッと見、Bさんは鈍感だなぁという小話に思えます。しかしこのケース、心理学的にはおかしなことではないのです。

AさんはBさんを含めた周囲の人々がどう感じるかを想像します。しかしその想像には当然、Aさんの主観が介入しており、Aさんの中では大きな変化だと認識している髪型は、Bさん含め皆も気付ける変化なのだと思っています。

けれど事実は気付かない。Aさんの予想するBさんの感覚と、実際のBさんの感覚にはズレがあったのです。


自分を中心に考えて、他の人も同じくらい自分を気にしているだろうと誤認してしまう効果、これをスポットライト効果といいます。

まるで舞台上のヒロインのように、皆が自分に注目しているだろうと錯覚します。


上記では残念なケースで取り上げましたが、実はこのスポットライト効果を鑑みれば、他人の目を伺う必要が薄いことが分かります。


【心理学者のトーマス・ギロビッチが行った実験】


①被験者は人気のないミュージシャンの顔が大きくプリントされたTシャツを着る。

②被験者はその状態でアンケート調査に参加。入室した部屋には既に4名ほどの人がアンケートに答える作業をしており、被験者は4名の真向かいに座り作業する。

③被験者は途中で呼び出され退出。実験者は被験者に、同室した人たちが、被験者の着ていたTシャツのミュージシャンの名を答えられるかどうかを問う。


結果

被験者の推測:平均46%の人が答えられるだろうと推測。

実際に答えられた人:23%

※補足 これらの実験映像を第三者に見せ、どれだけの人が回答できるかを尋ねたところ、24%が回答できるだろうと予測。


この結果から分かること、それはつまり——


【自分が思うほど、他人はあなたのことを気にしていないということ】


・被験者の心情

やばっ! こんなダサいTシャツ着るのかよ。うわっ、みんな見てるし……やっぱダセェって思ってるんだろうな。

・向かいに座るA・B・C、三名の心情

誰か入って来たな(チラ) さっ、アンケートの続きやろ。

・向かいに座る残りの一人、Dの心情

あ、〇〇のTシャツ着てる。まあいいや、続きやろ。


恐らくこんなところでしょう。

被験者は意識されてるのだろうと予測しましたが、実際は被験者の思う半分程度しか意識を向けていませんでした。

また実験にはないですが、気付けた人の感じ方の違い、つまり【気にしている度合い】というのも両者の間に剥離があることでしょう。

人類みなナルシスト――というのは語弊がありますが、そもそも自分が自分を一番気にするというのは至極当然のことです。


こんなファッションをしたら笑われてしまう

こんな髪色にしたら変に思われるだろう


あなたにとって大きな変化だとする事柄は、周りにとってはほんの小さな変化です。

同時に他人も他人で己を一番気にしていて、そしてあなたにとっては些細なことに映ります。

この心理効果さえ知っていれば、他人の目を気にしてもしょうがないということが分かります。


私を見てどう思ったかな?

変だと思われているかな?

陰で笑い者にされていないかな?


どれも自意識過剰です!

相手はとっくに自分のことを考えてます。

今、あなたが自分を中心に考えているように!


また己の価値観でいう似合う似合わないの認識は、あくまでこれまでの生き方や経験を知る、あなただけに創られたあなただけの見解です。

あなたの歴史や生き様を知らない人からすれば、そもそも何が似合うか似合わないかの偏見もなく、あなたにとっては自分のイメージと異なる事柄も、相手にとってはそもそもそういう人間としか映りません。


自分には似合わないと諦めている事柄がある方、己の先入観も他人の目も幻想なのは立証されておりますから、どうぞ気兼ねなく、好きに生きることをお勧めします。(犯罪以外で!)


他者にとってあなたの変化は大差ない、という事実は少し寂しい気もします。

けれどあなたには、挑戦する自信と新たな体験が得られます。それはとても素晴らしいことなのだと筆者は思います。

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