2022年のベッドの上で

@kamimuraharu

第1話 好みでない下着の女

 このベッドで何人の女を抱いたのか、覚えていない。中学生の頃は忘れるほど女を抱くことがかっこいいと思っていた。その頃を羨ましく思う。

 セックスをする時は、それが子孫を残す行為だからなのかもしれないが生きている実感がある。女の肌の艶、胸の何とも言えない触り心地。そして何より女の情けなく、そして色気のある吐息。それが僕の生きるを作る橋の足場となるのだ。

 昨晩寝た女は昨日ジョイバーにいた女だ。ビールを4杯、カクテルを5杯飲んで酔い潰れていたらしい。トイレで嘔吐している所を目撃して、これは狙い目だと感じた。もちろん家に持ち帰り、ベットの上で1戦繰り広げた。その女は鼻が高くて綺麗な二重の美しい女であった。おまけに巨乳と言える胸を持つ素晴らしい女だ。下着は自分の好みでない物であったため、少し残念であったが。

 好みでない下着の女は僕よりも早く起きて、コーヒーを淹れていた。


「あなたも飲むかしら?」


「砂糖は多めでよろしく」


あなたと言う呼び方は少し引っかかったが、気の利くいい女だった。しかし、この女ももう一生会うことのない人となる。それを悲しいと思うことはないし、知り合いが増えることは面倒であった。だから嫌ではなかった。


「ジョイバーにはよく来るのか?」


「いいえ、初めてきたのよ。本当は昨日もホテルに泊まるつもりだったの。」


「東京に旅行なんて趣味が悪いな」


「憧れなのよ」


東京に憧れる意味がわからない、僕はそう思う。それは都会に住んでいるから思うことなのか?


「なぜ憧れるんだい?」


「第1に人間は今住んでいる環境と違う環境に興味を持つの。都会に住んでいる人は田舎に憧れる。田舎に住んでいる人は都会に憧れる。子供の頃の旅行だってそうでしょ?あなたは都会に住んでいるんだから、田舎に旅行したでしょ」


僕は家族で旅行など行ったことがなかったが、うんっと答えた。



 好みでない下着の彼女と別れた後1人になった。僕は部屋に閉じこもったり、人と口を聞かなかったりするほど病んではいない。病み度にしてはレベルは低いものの、心のどこかに暗い色の何かを抱えていた。それが感覚として分かりすぎるから、水銀でないかと怖くなるほどであった。

 起きるのが遅かったのか、あと1時間で日の入りとなる所だった。僕は顔を洗い、髪の毛を整えて玄関のドアを開けた。外は心地の良い秋の風と共に、枯れた葉を散らせている。夕日が綺麗なこの時期に夕日を見ようと思わないのが何故なのか不思議に思う。LINEの待ち受け画面はネットで拾った夕日の写真であるが。



 家からジョイバーまでは徒歩5分ほどであった。ジョイバーのドアを開けると、見慣れた顔の男が1人いた。僕の唯一の親友である丈だ。


「何を飲む?」


「丈と同じのを1つ」

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