fantasy
ムラサキハルカ
ドリンクバー怪人
Ⅰ
あれはたしか、まだ高校生の頃のことだったと思う。両親が法事で家を空けていて、おもにイタリア料理をだすファミレスで夕食をとっていた時のことだ。
当時は実家暮らしだったうえにあまり金もなかったから、外食に慣れていなかった。だからかもしれないが、外の店に行く度にうきうきしていた気がする。その中でも特に気分を上げるのはドリンクバーだった。
夢みたいな機械だ。ドリンクサーバーに対しての当時の僕の印象を語るとすれば、その一点に尽きる。くどいようだが、当時はあまりお金がなかった。それに加えて母親があまりジュースというものが好きじゃなかったからか、家にいる時は飲むこと自体が稀だったのだ。
そんなわけで、訪れた店にドリンクバーがあれば、コップを手にはしゃぎまくっていた。オレンジジュースやグレープ系のジュースやカルピス、メロンソーダやジンジャエール。コーヒー……はまだ、苦くて舌に合わなかったが、背伸びするようにして一杯くらい鼻を摘まむか、こっそり砂糖を入れて飲んでいた。さすがにジュースとジュースを混ぜるのは、中学生の時の学園祭の打ち上げで試した時に酷い味になってからはやらなくなっていたが、とにもかくにも、純粋にこの夢の機械とそこから出てくる飲み物を楽しんでいた。
こうした状況を踏まえた上で話を最初に戻す。この日の僕もまた、ドキドキワクワクしながらドリンクバーへと足取り軽やかに向かっていた。
そして、怪人を目撃することとなる。
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