第72話 秋の章(28)

 小さくなる彼の背中に向かって、もう一度ありがとうと言って私は、自宅へと戻る。


 なにが現実で、なにが真実なのかは、全てが終わればはっきりするはず。今の私には、双子Noelノエルがそばにいること、それが現実。


 フリューゲルを哀しませない。


 そう自分に言い聞かせ、明るい笑顔で自室のドアを開ける。


 「おかえり、アーラ」と聞こえるはずと、どこかで期待していた声は、しかし、私を迎えてはくれなかった。


 「フリューゲル、どこ?」


 彼を呼んでみるが、返事がない。


 「フリューゲル! フリューゲル!」


 私が話したいと思ったときはいつでも話せると言っていたくせに、フリューゲルは、どんなに呼んでもさっぱり反応をしてくれない。


 一体、どこへ行ってしまったの? フリューゲル。

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