夏の章
第26話 夏の章(1)
《八月八日 金曜日 雷雨》
「あ~、もう! 暑~い!! 蒸し蒸しする~」
花壇の前でしゃがみこみながら、恨みがましく、空に向かってそう叫んだからといって、涼しくならないことくらい分かっている。
それでも、つい口をついて出てしまうほど、下界の夏は暑い。
毎日毎日、蒸し暑いし、時には息苦しい日さえある。もちろん清々しい日もあるけれど、今日の天気は最悪だ。
見上げた空は黒に近い灰色で、いかにも重たそうな雲が、どんよりと空一面を覆っている。遠くの方から、ゴロゴロと雷鳴が聞こえてくるから、もうじきこの辺りにもひと雨来るかも知れない。
雨が降って来たら、花壇の土が流れ出てしまう。そうならないように、急いで花壇のしきりであるレンガを並べ直しておかなくては。
私は、止めていた作業を再開した。そんな私の後ろで、フリューゲルがつぶやいた。
「ひどいね」
「ホントにね。花壇が勝手に壊れるなんてことないだろうから、誰かがやったんだろうけど……。こんなことして、何が楽しいのかしら」
蒸し暑い夏休みの午後、私は、学校の花壇の修復作業に追われている。
なぜかと言えば、それは私が園芸部に所属しているからだ。「部」と言っても、実際には、部員は私一人だけなのだが。長年休部状態だったこの部活に、私は入部した。
入部のきっかけは、友人である青島くんとの出会いにある。
春に怪我をしたとき以来、私たちは良き友人として交流している。私の怪我が完治するとすぐに、彼は約束通り、おじいさんを紹介してくれた。
青島くんのおじいさん、
園芸家には、果樹、野菜、
今は一線を退き、悠々自適に趣味を楽しんでいる。趣味は、もちろん園芸。その趣味の中に、私たちの学校の緑化整備という作業も含まれていた。
多大な労力を要する作業であるにも関わらず、無償のボランティアであること、校長とは旧知の仲であり、その縁で、学校の緑化整備を手伝っていることなどは、最近知ったばかりだ。
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