スライムの俺が騙されてギャルになりましたが何か?

古嶺こいし

第1話、奥さん一万人記念ですって!!!!

 突然ではありますが、転生したらスライムになることが確定しました。


 あまりにも納得いかないので、目の前の白い豆電気みたいな光輝く玉状の物体に尋ねてみた。

 その玉は浮遊していて、目もないのに此方に視線的なものを送ってくる。

 それ曰く、神の代行人なんだそうだ。


「なんで?」

『徳徳ポイント不足です』

「なにその残高不足みたいな言い方。てかなにそのお得クーポンみたいなの」


 俺の質問に光の玉は答えてくれた。


『徳徳ポイントです。あなた、生前は徳を積みませんでしたね。業も積まれませんでしたし、成長しようと経験も積みませんでした』

「何か関係あんの?」

『大有りです。生きている間に何かしらの成長、よくも悪くも経験を積むとポイントは貯まります。しかし、あなた何もしようとしなかったので、全体的なポイント不足。次の形を得るために必要なポイントで構築できるのがスライムのような粘体生命体、菌糸類のみとなります』

「ほえー」


 そんなシステムなら、死ぬ前に教えてほしかったものだ。

 マジかー、じゃあ俺の前世は頑張って徳を積んだんだろうな。スライムじゃなかったし。


「わかった。ポイントが足りないのはわかったけど、せめてどの矮小生物か選ばせて」


 せめて外見がかっこいいのが良い。

 スライムにかっこいいも悪いもないだろうけど。


『どうぞ』


 目の前に本が現れた。

 死後の世界はゲームの様だった。

 浮遊していたその本を手に取りページを捲れば、あらゆる粘体生命体に菌糸類、微生物プランクトンウイルス等々がズラリと羅列していた。

 完全にカタログである。

 こんなにも見たくないカタログは初めてだと思いながら端から端まで眺めていると、ページの端の方には、3~100ポイント消費との表示がされているのを見つけた。

 もしやこれが徳徳ポイントということか。

 ということは、俺の所持ポイントは3以上100未満ポイントということらしい。


『決まりましたか?』

「待って」


 急かす代行人に俺は慌てて矮小生物カタログを流し見た。


「……」


 しかし売れ残り商品カタログをどんなに眺めても決まるはずがない。

 俺は諦めた。

 こうなったらと目をつぶって適当に開いたページに決めることにした。


「……うわ」


 ショッピングピンクのスライムに決まってしまった。

 隠密行動できないド派手スライム。

 チェンジしたい。

 でももう自分ルールを破るのもなんだかなーである。


「…………、これにします」

『マジ?』

「マジです」


 引くな代行人よ。

 俺だって嫌だ。でも開いたのがこれだったんだよ。

 しかし、代行人でも『マジ』って使うんだ。


『えー、ではスライムについての基本的なステータスを教えます。もっとも、誕生の瞬間に忘れてしまうことがほとんどなので、別に聞き流してくれても構いません』

「あい」


 目の前にホログラムのようなものが現れた。


 種族名は粘体生命体、生息域はGr-3エリア、パニエ・ソキュー。

 フォルムはゆるゆるになった餅だが、謎の光沢がある。

 種族固定スキルは補食と吸収、消化のみ。

 カスである。

 しかし、種族特化のスキルでは打撃無効と斬撃無効があった。


 これを活かせれば長く生きられるかもしれない。


 そうは思ったが、スライムで長生きしたとして何のメリットがあるのか。

 俺は考えるのを止めた。


『この基本的なステータスに、徳徳ポイントでオプションが幾つかつけられます』

「またでた徳徳ポイント」

『こちらです』


 スライムホログラムのとなりにオプション一覧が表示された。


 透明化

 毒性化

 酸噴出器官付属

 擬態

 変身


 色々あるんだなー、と眺める。

 この透明化とか良いじゃんと、指定するために文字をタップした。


「?」


 鳴り響く[ブブー]という音。


「??」


 もう一度タップしても同じ、隣の毒性化も同じ。

 なにこれ。


『ポイント不足ですね』

「なんで期待させて突き落とすの。鬼か」


 ちゃんと見てみたら、文字の横に200pとあった。


「ええー、こんなオプション無しのハードモード設定、生まれて秒で死ぬじゃん。……ん?あれ、これだけ色違う? ん!?ゼロポイント!???」


 変身の文字が他のと違って赤く浮き上がり、しかも獲得するためのポイントがゼロだった。


「これって俺でも付けられるってこと!??」

『はい。これは私が転生させる魂一万人記念のサービスとなってます』

「へえ!俺すっげーラッキーじゃん!!!じゃあこれつける!!!」


 即その変身の文字をタップすると、オプション付属完了しましたとの文字が出た。


「ところでこれ何に変身できるの??」

『転生先の世界において、サイキョーの存在に成れます』

「おおー!!」


 ドラゴンだろうか?それとも知らない神秘的な生物か。古の存在とかも浪漫があって良い!


『他に質問はありますか?』

「ありません!!」

『ああ、そうだ。ひとつだけ注意事項があります』

「なんですかい?」

『この変身するスキルはすぐには使えません。転生してからある程度成長するまで使えませんのでお気をつけください』

「わかった」


 確かに生まれたばかりの赤ん坊が、突然ドラゴンになったら捨てられるかもしれないしな。

 俺スライムだけど。


『それでは、良い来世を』


 体が光に包まれる。

 いや、自分の体が発光している。それがほどけて上へと飛んでいっている。


 楽しみだなー!

 待ってろよ来世!!










『…………、ふふっ』


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