唐紅のお地蔵さんと。
朝日が夕日に
秋
私が住んでいる街には奇妙な話がある。それは赤色のお地蔵さんがあらわれるというものだ。『赤いお地蔵さんをみてしまうと死んでしまう、赤いお地蔵さんは死期に現れる』とよく近所のおばあちゃんが言ってくる。毎日毎日言ってくるので話を聞いてみたら鮮やかな赤色で綺麗なそうな。お地蔵さんには首に赤い布みたいなのを巻き付けているのもあるからてっきりそのことかと思っていたらどうやらそうではないらしく、体の色が赤色でそれを綺麗綺麗と言っているそうな。もし見たらどうすればいい?と聞いたら「どうすることもない、もうすぐ死ぬのだから。」と言われてしまった。
私はその話を聞いて思い出した、いや、思い出してしまった。私は何年も前に戦地で赤いお地蔵さんに会っている。そして言葉を交わした、私の存在を思い出したなら成仏するのだと。時代は変わりゆくのだと。そうか、だからか。街が明るく眩いのだと。この街に赤い手紙は無いのだと。墓石に私の名が刻まれているのだと。 ようやく理解ができた、妻よすまない。君が行った先に私はまだいない。すぐに行くよ。近所のおばさんにもお礼を言おう、秋でよかった。君の好きな季節だから。
唐紅のお地蔵さんと。 朝日が夕日に @MelonwaAmai
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