第20話 川崎の片隅で生きたいと叫ぶ

       




        僕はまだ生きている

        あの人との約束が「生きる」だからだ


        僕の唯一心を許せたあの人を

        裏切る事などできないのさ


        僕はこの空気の悪い川崎で

        産まれ育ってきた


        風俗やギャンブルに溺れていたあの頃

        川崎はお金さえあれば楽しむ事ができる


        あの人に出逢わなければ

        僕は借金まみれになっていただろう


        人の縁て凄いと思う


        僕とあの人を繋いだ糸が

        僕の生涯を決めたのだから


        今日も川崎の片隅で生きたいと叫ぶ


        自殺なんてするもんか

        僕を馬鹿にして来たあいつらを

        見返してやるのだ


        そして僕は天寿を全うするのさ

        それまでは這いつくばってでも生き抜いてやる


        最後は笑顔でこの世を去ろう


        ありがとうの言葉をあの人に

        伝えて全てにサヨウナラを言おう


        ありがとうアリガトウ

        さようならサヨウナラ






****






 あの人とは僕がお世話になった、亡くなった師匠の事です。


 師匠がいなければ、僕と兄は今のような大きな商いができていなかったでしょう。僕は途中でリタイヤしてしまいましたが、兄は仲間と共に業績を伸ばし続けています。


 僕には兄を陰ながら応援する事しかできません。兄の邪魔にならないように生きていくのでしょうね。


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