第152話 離乳食
消えた大玉スイカを探していた丈二たち。
しかし、スイカの行方は見当もつかない。
そして、丈二たちもいつまでもスイカを探しているわけにもいかない。
犬猫族たちに聞き込みをした後、丈二はマンドラゴラたちと別れて日常業務へと戻っていた。
「しっかし、ドコに消えたんだろうな……」
「ぐるぅ」
おはぎと共に丈二が歩くのは猫族たちの宿舎。そこにある子猫たちの保育部屋が目的地だ。
魔力を有している影響か、元気で食欲旺盛な子猫たちの飼育を手伝うために丈二は日に何度が子猫たちの部屋に訪れている。
丈二が部屋に入ると、みゃあみゃあと鳴き喚く子猫たちが丈二に群がる。
ご飯を寄こせとの催促だ。
「はいはい。ちょっとだけ待っててくれ」
「ぐるぅ!」
丈二はズボンに子猫たちをぶら下げながらテーブルに向かう。
ズボンから落ちた子猫は代わりとばかりに、おはぎに突撃していた。
持ってきた荷物を置いて、小皿に子猫用の離乳ペーストを分けた。
「ほーら、ごはんだぞ」
丈二が床に皿を置くと、皿に進軍を始める子猫たち。
トテトテと、まだおぼつかない足取りで走り抜ける。
唯一、猫又だけは成長が早い。大人の猫もびっくりするような俊敏さで飛びついていた。
並べられた皿の前に、キレイに整列した子猫たちはあむあむとペースト状のご飯を食べ始める。
「まだ皿から食べれない子もいるのか」
しかし、中には皿からご飯を食べるのに慣れないのかジッと丈二を見上げて鳴いている子猫も居た。
そんな子には丈二がエサをつまんで口へと運ぶと、ようやく食べ始めた。
丈二の指ごと食べようとするので、ちょっと痛いが仕方がない。少しずつ練習すれば、そのうち皿から食べるようになるだろう。
そうしてお腹を膨らませた子猫たち。
しかし、それはそれ。これはこれ。食後にはミルクを所望する子猫たち。『次はミルクだ!』と丈二に突撃して騒ぎ出す。
「はいはい。順番に並ぶんだぞ」
丈二は用意してきていたミルクを子猫たちに与えていく。
ミルクを飲み終えて満足した子猫は、トイレに向かうと真剣な眼差して用を足し。短い手足でケリケリと処理をしていた。
その後は元気よく走り出して、おはぎに遊んでもらっている。
そうして何匹めかの子猫にミルクを与えていると、丈二は地面に黒い物が落ちているのを見つけた。
「なんだこれ……土?」
指先でつまむと、それは柔らかい土だった。
まるで畑の土のようにふかふかとしている。
「猫族の毛にでも付いてたのか?」
猫族の宿舎は土足禁止。
猫族たちは外では裸足で活動しているが、屋内に入るときにはタオルで拭いている。
しかし、毛についた土まで細かく落としているわけでは無い。
毛に絡まっていた土を落として行ったのだろうか。
「うにゃん」
「……ん?」
土を見ていると、どこからか大人の猫の鳴き声が聞こえた。
声を追いかけると部屋の窓。
暑さを和らげるために開け放たれた窓から、母猫が部屋に入って来ていた。
どうやら出入り口として使っているらしい。
入って来た母猫は、あぐらをかいた丈二の足に頭を擦り付けてきた。
ぐるぐると甘えるように鳴いている。
どうやら、自分にもおやつを寄こせと要求しているらしい。
「おやつだな。子猫たちの後であげるからな」
「にゃん」
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