湖底での語らい

「よく来たな!! 盛大にとはいかないが、存分に歓迎しようではないか特異個体イレギュラーよ!!!」

「………は?」


湖の中は神殿だった...いや、有り得んだろう? 少なくとも今入っていく時に見た光景は底が見えない程深く突き出た岩礁と飛び出た根と魚しか見えなかったが、それでもこんな湖の中とは思えない異様な光景では無かったはずだ。それに


「うん? あぁ!! この身の領域の中に立ち入ってくれたのでな!! 折角の機会であるが故に勝手にだが招待させてもらった!!!!」


こいつは、何だ? 肉体は間違いなく精霊だ。歪んで堕ちていたとはいえども、あの森で殺した精霊と全く同じ気配を感じ取れる。それに引き摺り込まれたこの神殿から感じられる物もあの森の二つの湖で感じ取った物と同様の物である。


しかし、それで精霊であると言うには中身が違い過ぎる。少なくとも今の俺よりも遥かに強く、暫定的に最低でもリーズィと同等以上の力を持ち合わせている様な感覚を感じられるのに、精霊という俺でも殺すことが出来る様な肉体に強引に収まっている奇妙な歪さが滲み出てきている。正体を探りきれない、刻み込んだ知識の中を辿っても合致する存在が見つからない...得体の知れない怪物か何かか? …………此処で殺しておくべきか?


「フッハッハッハ!!! まぁそう警戒してくれるな!! 近くに来たから話してみたいと思ったというのは紛れもない真実であるぞ!!!」

「………お前は、」

「うん?」

「お前は一体なんだ? 精霊の肉体にそれよりも遥かに高位で超常の力を無理矢理押し込んで固めている様な...お前はなんだ?」

「? ……あぁ!! そうかそうか、我々とはまだ対面したことが無かったか!! うむうむ、それは申し訳ないことをした!!!」

「なにを...ッ!?」

「おっと、すまんが抑えてくれると助かる! この身はあくまで借り物に過ぎぬし、それにお主の力に耐えきれるようには作っておらぬのでな!!」


お前はなんだ、そう訊ねれば思案している様な空白が一瞬挟まってそれから納得がいったように声を上げて、それから押し込まれている精霊の肉体の中から弾けだすように押し込まれている歪さの正体が外側に飛び出すように広がっていく。咄嗟に魔法と呪いを構えて叩きつけようとしたが、音も間もなく作り出された水で構築された錫杖が俺の首筋に真っ直ぐ突き当てられて動きを牽制される。無論牽制風情で止まる気も無く、遺跡で破壊した精霊具よりも遥かに強い力が籠っている錫杖を数度死んででも破壊しようと構えた魔法と呪いを叩きつけようとして飛び出すように広がっていった物が周囲の神殿へと溶けるようにして消えていく。それを知覚した直後、目の前の異様な精霊はゆっくりとその口を開き始める。



「創世の神より与えられしは水、神界にて刻まれし名をミヅハ。雨でも海でも川でも流れでも融解でもなくただ水を権能とする水の神ミヅハ、我らが観測に存在し得ぬ最上の特異個体イレギュラーであり純血なる龍種の英雄にして盟友たるドラコー・ウルティム・スペーよ。当初の予定よりも幾ばくか速い邂逅となってしまったが、まぁ益にならん下らん決まりなど放っておいて我と語らい合おうではないか。我の分かる範囲であるのならばお主の疑問を解消してやろう、お主の望みを叶えてやろう、お主に力を与えてやろう」



…………クソッタレ、得体の知れない化け物の方が遥かにマシだったじゃねぇか。何でこんなところに純正の神がいるんだよ...!!


────────────────────────



「と、まぁ堅苦しいのはここまでにしておこう。儂はそこまで格式だとか形式だとかに拘りがあるわけではないのでな」

「…………   ■■■■■■■...」

「ぬ?」

歪曲・排斥■■■■■■

「おぉ、なるほどなるほど。これは確かに戦神共が戦いたいと喚きたてるわけだ、これだけの力に才能に成長性を兼ね備えているのならばな。だがまぁ今日は戦いに来たわけではない、故にこの場はただただ話し合うためだけの場としておこうではないか、のぉ?」


先手を切るために魔法を詠唱と共に叩きつけようとして、首と四肢を全く同時に多方向から刺し貫かれて千切り落とされる。知覚できない速度で殺されたが即座に再生して魔法を叩き込もうとする、だが再生した直後に虚空から伸びてきた鎖によって全身を拘束されて魔法の構築を妨害される。鎖を引き千切ろうにも腕と足に全力で力を込めても軋む事もせず、魔法を通して鎖を内側から崩壊させようとしても無詠唱無動作で構築した先から霧散するように解かされていく。


「ハッハッハ!!! 悪いとは思うが、生憎自由にしたら儂は兎も角、この肉体は容易く殺されてしまうからな!! 儂の権能によって封じさせてもらったぞ!!」

「……………目的は何だ?」

「うん? あぁ、この肉体が仕掛けた封印が解き放たれたのを観測してな、この肉体の本来の持ち主から助けの要請があったのもあって下りて来ただけだ。お主が解放した本人だというのが分かっていれば来る気はなかったが...ふむ、いやはや存外来ても良かったかもしれんがな」

「………なに?」

「そう、敵意を向けるな。何も戦争を仕掛け来た訳ではない、この語らいが終わって解き放たれた獣の死を確認したら帰るとするからのう」

「………………」


………敵意はない、殺意も無い。圧は感じるが、権能を解放して俺を拘束している副産物として溢れ出ている物だろう...敵意は納めても良いかもしれんな。何時でも逃げられるように魔法の構築と呪いを吐き散らせるように体内で準備だけをしておいて、あとは大人しく話に興じているというのを取り繕っておくか。ついでに聞き出せる限りのことを全て聞き出してしまおう、正しいかどうかの整合性などは取れる気がしていないがな。それでも今の段階で出来る事は限られている。


「………はぁ、それで何を話したいんだ?」

「む? おぉ、ようやく落ち着いて話す気になってくれたか!! 外界とは隔絶されいる空間とはいえ長時間拘束しておくのは忍びなかったので助かるのう!!! それで何を話したいかじゃったな? うーむ、そうじゃなまずは」

「………」

「お主が封印を除去した獣、それを殺し切るだけの確信は持っておるのか? 持っておらぬのならば封印を掛け直すんじゃが」

「……殺すだけならば容易だ。少なくとも封印が効くような生物ならば確実に殺せる、封印から解き放って即座に殺すなどという事は出来ないがな」

「殺せるのならば構わん、どのみち儂の封印も千年ちょっとで崩れ落ちて獣を解放する予定じゃったからのう」

「そんなことでいいのか?」

「良いんじゃよ、儂にとっては所詮ただ並外れた力を持って誕生しただけの獣。太古の龍とこの地の精霊が封印することを選び、正しき形に正しき手順で封印の延長を望んだ事じゃから封印を延長しようとしただけじゃ」

「………何なんだ? この地の獣は」


龍と精霊が封印することを望み、力を削ぎ落し続けているのにそれでも神による再封印を望むだけの生物。はっきりというが力の度合いとしては俺の知っている限りではリーズィと同等か少し劣るぐらいの実力の保有者だろう。そんな生物がそう簡単に誕生しないだろうし、そもそもリーズィとて王同士の闘争と同族同士での喰らい合いに神の呪いへの抵抗で力を付けた結果のアレだからな。


「うむ、まぁ当然の質問じゃろうな」

「……」

「この地に封じられし獣、封じられる前に呼称されし呼び名は赤に染まりし獣。儂らにとってはいつの日か生まれるだろうというのが分かっていた、絶対の王と成るべくして生まれて絶対の王と成るべくために世界を喰らう獣の王」

「……獣の王?」

「うむ。世界に存在する数多の獣を統べ、獣たちから畏怖と崇拝と信仰をその身その魂に集める事となる未来を持ち合わせている一匹の獣。その名をジャバウォック・ルイン・ヴォーパル、絶対的な暴力を宿した獣だ」

「…ふむ」

「その名と共に生まれ持ち魂に刻み込まれし力は魂喰たまはみ。従来の生命には干渉する事が不可能である魂への干渉を可能とし、その血肉と共に魂を喰らい魂と共にある力を取り込むという貪食なる力」

「……力?」

「お主らの知覚方法で言うのならば根源と呼称している力の事じゃな。実際その呼称は誤ちではない、むしろ的を得ていると言っても良いじゃろうな。とはいえすべてが正しいのかといわれるとそうではない、一つだけ誤解しておる」

「なに?」

「根源というのは魔法だけではない。根源というのはその生命が持っている権能の特性、それこそ根源が水であるというのならばその生命はありとあらゆる水が起因となる現象を操れるじゃろう。それこそ今儂がしているようにのう」


権能、だと? …………有り得んだろう、そう易々と根源を知覚してそこから力を引きずり出すだけで権能として力を振るえるのならば、この世界はもっと混沌としているし王と呼ばれている生物同士の闘争は世界の在り方を変質させているはずだ。それに根源が存在しているのは魂の奥底、魔法の流れを辿った果てにある力の形でありそれをそのまま引きずり出して力として行使することなど...待て、魂の奥底? そこから力を引きずり出せるわけがないはずだ。そんなことをすれば当人の魂がズタボロになり、傷ついた魂はその傷を起点に自己崩壊を引き起こして崩れていくはずだ。少なくとも俺がそれをやろうとした時はそうなって、数えていただけでも数十回に渡って魂の崩壊と再生を繰り返した。

………そういう事か、そういう事なのか?


「お? 気付いたようじゃな、その想定通りじゃ。魂の奥底の力なぞ知覚していたとしても引きずり出すことなど出来ん。そのようなことをすれば魂が崩壊を引き起こして、そのまま輪廻へと戻ることもなく魂は消えて残った肉体は物言わぬ虚ろとなるじゃろうな。それこそ魂の強度が格上でもない限りの」

「………つまり、ジャバウォックは」

「純血の龍よりも遥かに魂の強度は高いぞ。そうじゃなぁ...今の龍王は儂らを除けばこの世界の頂点に君臨するからのう、そこから数段は下になるがそれでもお主らよりも強度は高いのう。お主の伴侶である龍は問題ないじゃろうが、同行者であるあの蝙蝠と兎は間違いなく殺されればそのまま魂を奪われるじゃろうな」

「……そうか」


戦わせるつもりだったが、そうなってくると後ろで待機させておいた方が良いか? 捕食行動自体を呪いで禁止すれば対処は出来そうかもしれないが、取り込んでいる力によっては直接戦う事自体にも何か悪影響を及ぼすやもしれんな。

………………まて、王になるべくして生まれた?


「王になるべくして生まれたとはどういうことだ?」

「む? 知らんのか?」

「力が特出した奴が王と呼ばれるようになるというのは知っているが、王と成るべくして生まれるというのは知らん。イレギュラーとは違うのか?」

「そうか、そこまでか…………ふむ、詳しいことを儂は語れん。これに関しては儂らの主が定めた事であるがゆえに語ることは出来ぬ、出来ぬが...語れる限りのことは此の場で語っても良いじゃろう。お主には幾つか借りがあるからの」

「……?」


借り? 何か神々に対して仮になるようなこと...神骸の一件か? そこまで大きな貸しになるとは思えない、というか本質的に解決したのはリーズィが龍王であり神骸を殺し切れる力を持っていただけだろうに。俺は所詮ただ呪いを背負い続けただけで大したことはしていないんだがな。


「王と成るべくして生まれし生命、それはこの世界がこの世界となった時に儂らが主によってこの世界に組み込まれた超常の理。この世界を安定させず不安定とさせるために世界の全てを相手取り、他の王という呼称を授かった生命を喰らいその実と魂を成長させ昇華させ進化させ、そうしてこの世界の絶対の王へと成ってそれからその一つ上へと進む優待券を持つ生命の事じゃ」

「優待券?」

「うむ、お主の知己で言うのならば今代の龍王。あの黄金に輝き世界を塗り潰すブレスはその優待券の証明、つまるところ並の生物が立ち向かうために壁を数十枚以上越えなければならない力の事じゃ」

「……あのブレスか、あれが優待券」

「うむ、アレが優待券の正体じゃな。それに一目見れば絶対に分かるようになっておる、何せ優待券は幾週も回った末にその色でしか表せぬからな」

「色?」

「色じゃ。龍王ならば黄金、ジャバウォックならば赤じゃな」

「………色持ちがどれだけいるのか教えてくれるか?」


知れるのならば知っておきたい、これから戦うジャバウォック次第だがこの旅の向かう先の候補としてこれらの生命と戦う事を考えたい。数にはよるがその内ラビ助とヘルディの成長を間に合わせて戦いに参加させることが出来る可能性もあるしな。場所は分からなくともそれだけの力を持っているのならば旅を続けている内に何処にいるのかという話を聞くだろう。


「少し待て...名前くらいならば問題は、無いかのう? …………まぁ怒られたら怒られたでその時に対応すれば良いじゃろう。怒られたとしても所詮はただの小言に過ぎんじゃろうし、その程度ならば何の問題も無いじゃろう」

「……良いのか?」


無理をしてまで聞くつもりは無い、無理して話が終わるくらいならばもっと別の話を聞くが。



「大丈夫じゃ、気にするでない...それで色持ちじゃな。まずは黄金の龍王リーズィ・ウルティム・ヴィクトリーツァ、彼奴は黄金のブレスを絶対の象徴としながら区分としては同類である王を喰らい続けて相応の力を手に入れておる。明確に出てきているのはその巨躯じゃな、並大抵の龍どころか何十万という歳月を積み重ねた龍であっても到達し得ない程の巨躯に並大抵の攻撃を通さない鱗もじゃな」

「次は赤の獣王ジャバウォック・ルイン・ヴォーパル、此奴は赤く染まる爪牙を絶対の象徴としてその力を持って数多の生物を喰らいその力をその身に溜め込み暴虐のために振るっておった。始まりの時は容易に殺されるだけの実力しか持っていなかったが、それは他者を喰らい続ける事により精霊を容易に屠り真っ当な声明では殺し切れぬだけの力を手に入れた存在じゃ」

「三匹目は橙...ではないな。黒じゃ、黒の空王ヴィーチェ・ジズ・ソルム、お主の友であった王という地位に固執した龍であり王に成るべくして生まれた先代の空王であるジズの全てを喰らいつくして空王の座を奪い取ったある種特異個体イレギュラーに近しい生命ではあるな。空を支配するに足る力を持ち、龍の劣化であり繁殖させやすいように誕生した竜を統括してこの世界の空を支配しようとしている。絶対の象徴は全てを飲み込む黒の翼じゃ」

「四匹目は白の妖王で名前は、教えられんな。此奴に関しては詳しいことは決まりによって教えることは出来ぬのじゃが、まぁ言える事は此奴に関しては儂の観測していた限りでは龍王と同等の力を持っておったのう。配下も多くおって基本的には搦手と軍略で制圧をしておるのじゃが、本人の実力としては龍王と同じく単独でこの世界を破壊し尽くせるだけの実力は持っておるのう」

「まぁ妖王はここまでにしておこうかの。それで五匹目は青の海王ワタツミ・リヴ・タルムラシュ。澱み無き青の鱗はありとあらゆる害を打ち消す絶対の象徴としており、海の底の更に奥底まで沈み込んだその場所で自身以外の生物の生存を許さない領域を構築しながら生存しておるのう。海の王という呼称ではあるが別段海の生物を支配しておるわけではない、とはいえ海を過度に荒らせばその瞬間に奥底から海面に浮上して荒らした主を殺すまでありとあらゆる物を巻き込みながら暴れ続ける程には激情家であり自身の感情を抑えようともせん奴じゃ」

「六匹目はお主も名前だけは知っておるの、緑の精霊王オベロン。代替わりはしておるがその力は確と今代の精霊王に引き継がれておる、その絶対の象徴は視界の届くもの全てを植物で侵食し尽くす不可逆的な緑化現象。今代はそんなでもないというか精霊全体で見ても温厚で善良気味じゃが、先代は非常に自己中心的でのう、ある場所を領域としておった精霊を己の手の物にするためにその精霊の領域であった砂漠を鬱蒼としたジャングルへと作り変えて領域を塗り潰し、最終的にはその精霊が自害するまでは欲望の赴くままに暴れ続けておった。代替わりが終わった瞬間に自らの妻であったティターニアによって首と四肢を切り落とされてバラバラにされて殺されたようじゃがの」

「七匹目は紫の毒王バビロン・インク・リリートゥ。毒のような鮮やかな光沢を持つ紫色の髪を携えた淫魔であり、最低でも数億年は生きて放蕩し続け己の欲望の赴くままに他の生物を喰らっては玩具のように捨てておる奴じゃな。つい先日聖女に手を出そうとして返り討ちに合いその傷の修復のために何処かへと隠れてはおるんじゃが、強い生命を本能的に察知してその場所へと向かっていくような奴じゃからその内お主らも遭遇することになるじゃろうな。絶対の象徴はその毒のように美しい肉体じゃな、大抵の生物を抵抗させずに屈服させる毒じゃ」

「八匹目は灰の幻王ベルフェゴル・コントラ・ラジエ。神々ですら本気で見ようとしなければ見る事すら敵わない姿隠しの幻影を扱う怠惰の権化、そうでありながら自らの怠惰を守るために勤勉に思考を巡らせて外敵を打ち払うある種矛盾の化身と言っていいような奴じゃな。絶対の象徴はその幻影、生物の目と脳に灰色の霧を潜り込ませて自らを知覚させない、それを乗り越えたとしても世界そのものを幻影で騙して自らを存在していないかのように誤魔化す化け物じゃな。今此奴が何処におるのかは儂は知らん、物好きな奴は知っておるかもしれんがまぁ知りたくなったのならば何処かで神を呼び出すと良いじゃろう」

「それで最後の九匹目はまだ明確な色が無いのう。言うなれば無色の人王、現龍王を超える可能性の力を持ちながらもまだ力を目覚めさせるだけの困難と接触しておらぬ最も新しく若い優待券持ちといったところじゃな。まぁ生涯目覚めない可能性もあるくらいじゃし、目覚めたところで他の優待券持ちに敵わない事もあるようなよく分からん奴じゃけどのう」



……………リーズィクラスが目覚めていないのも含めて残り八匹、話の感じを聞く限り妖王と毒王はおそらく遭遇して戦う事になるだろうし、ヴィーチェも今後の旅の行く末を決めた結果戦う事になるやもしれん。いや、王に成りたがっていたヴィーチェの事を考えるとまず間違いなく力を欲して他の王に戦いを挑むだろうし、自らが力を手に入れられるだけの力を持つ相手ならば襲い掛かるだろう。

まだ覚醒していない人王とこれから戦う獣王は放っておいて残る三匹、精霊王と戦おうとしなければ戦う事もないだろうし、神の目から見る性質が正しいのならば俺も戦う理由はない。一応相性的に考えてもそこまで不利ではない、有利という訳でもないが。幻王と海王は分からんが、この世界を統べて回り尽くすと決めた場合には戦う事になるだろうが...問題なく殺せるな。戦い方によって勝ち方は変わってくるだろうが、一対一で戦うことが出来る状況に持ち込んだのであれば問題なく殺し切れるな。


「……終わりか?」

「うむ、終わりじゃな。一匹一匹は世界を壊せるだけの力を持っておるが、活動的になっている奴はそう多くはないし活動的になっている奴も壊そうとするよりも支配しようとする動きの方が多いのう」

「そうか...それじゃあ次の質問良いか?」

「良いぞ、何が聞きたいんじゃ?」


優待券持ちが何かは分かった。その上でこれだけは聞いておきたいと思った物が一つだけ出来てしまった、この場所から脱出するにしてもせめてこれだけは聞いてから脱出したい。



「……お前が俺のことを呼称するイレギュラー、これは一体どういう意味だ?」

「………ふう、お主の事についてじゃな?」

「いや違う。イレギュラーという言葉が持つ意味を聞いている」

「じゃからお主の事についてという意味になるのう」

「……………なに?」

「儂ら、より正確に言うならば儂らの主がイレギュラーと意図的に呼称して行く末を楽しみに観測し続けているのはお主が唯一じゃ。これまでに前例はなく、おそらく今後同例が現れることも間違いなく無いのう」


「故にイレギュラーというのはお主の事じゃよ、ドラコー」


………どういうことだ? 俺が最初で最後? 創世の神が意図的に呼称して観測している?

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