寄り道:戦果選別と夕食

「これはハンティングビーストの毛皮ですね。しかも傷無しでこのサイズ、白金貨五枚はいけますね。

こちらは初めて見ましたが、この肌触り、この感触、そしてこの強度。これはよく調べないと分かりませんが、王国から服飾技術者を招集した方がいいですね。この牙と爪は、同じ狼からの素材ですか...白金貨五十枚が最低価格でしょうか...

こちらの火かき棒は……? ノルド、少しこの火かき棒を強めに上から下に振り下ろしてみてくれ。

………感謝する、やはり魔法武器でしたか。軽くて取り回すも良い、それでいて大きさもそこそこで収納しやすい...ギルドに売るのは止めておいて、商会でオークションに出しましょう。

それで次は、この鎧ですか。傷無しのリビングアーマーの鎧は初めて見ましたが、ふむなるほどこれは確かに判断に困りますね。ミスリルを基準にして鉄と銀、それからこれは金でしょうか? 取り敢えず色々と検査や点検も必要ですが.....すぐに売るのは止めておきましょう。価値を把握できるまでは、一定以上の金額を払ってくれる相手を待ちましょう。

この猪の牙は籠の中の荷物に突っ込んでおいてくれ。

この大鉈は純銀製ですね。見た目が物騒ではありますが純度はかなり高く不浄ではない。こちらは教会の方に提示してみますか。魔法武器ではないみたいですし、鋳潰すにしても使い道が時計くらいですしね。

あとはリッチの装備ですね。あまり値段は付かないのですが...どうやら元々の状態から変化しているみたいですね。触れた時に感じる嫌悪感や忌避感を感じませんし、見た目の禍々しさを消えていますね。呪術ギルドなら大して吹っ掛けなくても、白金貨千枚は出してくれる気がしますよ。

ノルド、ラガル包装をしてから丁寧に籠の中へ積んでくれ。揺れる事もなければ倒される事もないだろうが、下手に積み上げて崩れ落ちて傷ついたり欠損したりしない様に気をつけて積むように。私は今からこの箱の中身の選別を始める」



塔の中で拾った戦果を並べれば、サルバはすぐに胸元からモノクルとメモとペンを取り出して選別を開始する。ちなみに推定霊薬だった代物は、種類としては正解だった様だ。ただオチミズと呼んでおり、とんでもない代物を扱う様にしていたので、おそらくサルバが想定していた霊薬とは全く違う代物だったのだろう。


それから選別に付き合うかとサルバに聞かれたが、どれがどんな価値なのか分からないし、そもそも欲しい物も無いので全部持っていけと伝えて、俺は横で忙しなく選別作業をしているサルバたちと食事の用意をしているグレイスたちを眺めている。

……あ、耳当て渡すの忘れてる...まぁいいか。

適当に保護と修繕と防衛でも重ね掛けて、ラネアかラヴィニャにでも渡しておこう。そこまで大した価値では無いだろうしな。



「………暇だな」


文字通りやる事がなくて暇だった。

魔法の練習を始めれば待たせてしまうし、かといって手伝う事があるかと言われれば何も無い。

この状態で一人でジュースを飲むのも、適当な食事を用意して食べるのもどうかと思うので、漠然と周囲を見ている事しかする事がない。


「………暇だね」

「………暇っすね、龍人の旦那」

「……ティオだったか、何の用だ?」

「うちも暇なんですよ、荷積みもあの二人で十分ですし選別は手伝えない、料理は全く分からないアズラは寝てるんでやる事無いんっすよ」

「そうか、俺も無いな」

「そうみたいっすね」

「…………お前がどう言う過程を経て、サルバの奴隷になったのか教えてくれ」

「別にいいっすけど、オーナーからは?」

「簡単な概要だけで、詳しくは聞いてない。

生憎だが人間社会に関する知識は欠片も無いんでな、色々と知りたいんだ」

「そういうことっすか、じゃあ話しますか!」

「あぁ、聞かせてくれ」

「結論から言うっすと、土地神の生贄になりそうだったところをオーナーが土地神を殴り飛ばしながら助けてくれたって感じっすね」


────────────────────────



「用意、出来ました」

「キノコと牛の肉とタケノコを塩と胡椒と適当なスパイスで香り付けながら焼いた物と、残ってた名称不明の牛骨で作ったスープだけですけどね。

あと綺麗な水で洗ってカットした野菜ですね、欲しかったら勝手にとってください。ラネアとラヴィニャが頑張ってくれたので早めに終わりましたね」

「うん! 頑張った!!」

「...はい」

「ご苦労、サルバたちを呼んできて食事にするか。

ティオはテントの中のアズラを起こしてくるといい」

「え、寝かせといた方が良くないっすか?」

「途中で起きて空腹の耐えさせるのと、今起こして食事を摂らせて寝かすのと、どっちがいい?」

「あ、じゃあ起こして来るっす」


俺もまだ選別作業中のサルバを呼んで来るか。


「サルバ、進み具合はどうだ?」

「……ん? ドラコー様? 申し訳ありません、少し行き詰まっていますね。全て纏めて同じ値段で売れると言うのであればそれで良かったのですが、中にオリハルコンなどの稀少物質が入っておりまして。全て見て仕分けなければ、なりませんので...」

「そうか、取り敢えず食事にしようじゃないか。

あまり詰めすぎても効率が落ちるだけだ、取り敢えず用意してくれた食事でも楽しもうじゃないか」

「ふむ……そうですね、このまま続けていても仕方ないですね。分かりました、食事にしましょう。

ノルド、ラガル食事にするぞ」

「了解、オーナー」

「オーナー、見張ってなくてもいいのですか?」

「周辺に生物の気配はないし、念の為だがここら一帯に不可侵の結界を貼っておくしな」

「なるほど、ありがとうございます。

ということらしい、食事を楽しんでから作業再開だ」

「了解です、オーナー」


サルバに声を掛けて、選別作業を中断させて横で稀少物質とそうでない物を取り分けていたノルドとラガルを連れて食事の用意がしてある場所に移動させる。

それを見送ってから、簡易的に外界からの侵入を許可しない結界を貼っていく。範囲は食事の場所を基点にしてこちらは馬車まで反対側はテントのある場所から少し奥に伸ばした楕円形に貼っておく。出発時に結界の間近に獣や魔獣が寄って来ている、なんて事が起きるのを避けるために結界の外枠には忌避の呪いを薄い膜の様に展開しておく。

…………こんな物でいいか、俺も戻ろう。




「やっと戻って来ましたね、さぁ此方に」

「…まだ食べてなかったか、すまんな」

「いえいえ、どうぞ。おかわりは多少はあります」

「感謝する」


結界と呪いを雑に貼って戻ってみれば、全員が食べる事なく座っており、俺を待っていたのは明白だったので簡単に謝罪をしながらグレイスが示した席へと向かう。席に座ればグレイスがスッと皿に盛り付けられた食事とコップに注がれた水を差し出してくれるので、感謝の言葉を述べる。一応この場にはアズラを含めた全員が座っている様である。


「では音頭をドラコー様に取って頂きましょうか」

「...グレイス」

「まぁ、待たせていたという事で」

「はぁ....正式な場ではないから堅苦しい挨拶は無しだ。諸君、存分に食事を楽しんでくれ」


それだけ言って、コップに入った水の中に氷を作り出してカランと鳴らせば、皆が食事を始める。それを見届けてから、俺も同じようにゆっくりと食べ始める。


美味いと言う声、食材が何なのかを考える声、ポリポリと野菜を齧る音、和気藹々と話す声。

グレイスとの二人旅では作れない、活気のある食事風景に何処となく満足感を得ながら食事を進める。



……サルバを商会に送り届けたら、奴隷を買ってみてもいいかもしれんな。そこそこに明るくて、そこそこに地理だの歴史だのを知っている様な奴隷を。

グレイスとよく相談してからだがな。



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崩壊スターレイルやってたら遅れました。

ごめーんね(*・ω・)ノ

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