第11話 ふたたびスライム


「ねえお兄ちゃん、これみた?」

「え……?」


 翌朝、美玖が動画サイトの管理画面を見せてくれた。

 そこにはなんと、1万ものPVと、500ものチャンネル登録者が記されていた。

 おかしい、昨日までチャンネル登録者は5人とかだったのに……。

 なにがあったんだ?


「なんか、伸びてるな」

「そうなんよ。なんでやろ」

「うーん、オッサンがダンジョン探索者初心者としてやってるからじゃないか? それで面白がって、見る人が増えたのかもしれん」

「うーん。そうなんかなぁ……? なんか違うような?」


 もしくは、うちのダンジョンが成長するダンジョンだからだろうか。

 まあなんにしても、動画が伸びるのはいいことだ。

 この調子で動画が伸びてくれれば、うちのダンジョンにもいずれ探索者がやってくるだろう。


「それにしても、探索者さんたちは来ないねえ……」

「ま、まだ動画伸び始めたばかりだからな。そのうちくるだろう」

「そうやとええけど……」

「とりあえず、俺は今日もダンジョンに潜ってみるよ。人気なんだったら、はやく次の動画あげたほうがいいだろうしな」

「うん、せやね」


 ということで、俺は支度をして、再びダンジョンへ。



 ◇



 再び埋蔵金ダンジョンの第一階層だ。

 俺はあたりを見まわした。

 昨日のゴブリンたちはいないようだ。

 どこまでもだだっぴろい草原が広がっている。

 

 すると、今度はスライムがぴょこと草むらから姿を現した。


 おお、この前倒したスライムと同じだな。

 この前スライム倒して一気にレベルが上がったんだよな。

 もしかしたら、俺が知らないだけでスライムってのはそういうものなのかもしれない。

 これはぜひこのスライムも倒したいところだな。


「えい……!」


 ――ダダダダ!

 俺はスライムに向けて発砲する。

 しかし、スライムの身体に弾かれてしまう。


「なに……!?」


 この前はビーストモードで素手で倒したからな。

 弾丸よりもビーストモードの素手のほうが威力が上なのかな。

 まさか弾丸を弾くなんて、スライムって結構堅いんだな。

 そういえば、俺は目が悪くてよく見えてなかったけど、こう見ると、どことなく光沢があって堅そうな身体をしているもんな……。


「だったら、もう一度素手で倒すまでだ!」


 俺はビーストモードを使用し、スライムに襲いかかる。

 しかし、捕まえようとするも、スライムにひょいと逃げられてしまう。


「くそ……すばしっこいな……」


 このスライム、かなりすばしっこいんだよな……。

 そうこうしているうちに、スライムは俺から逃げようとする。

 

「あ、待て……!」


 せっかくビーストモードまで使ったんだし、経験値も欲しいから倒してしまいたい。

 それに、スライムのコアは50万で売れたしな。

 このスライム、いや……50万を逃がすわけにはいかない!

 俺は咄嗟にネメシスフィールドを発動させた。

 もったいない気もするが、しかたない。


「えい!」


 ネメシスフィールドで動きを止め、ビーストモードで素手でスライムを貫く!

 スライムを素手で貫くと、一撃で仕留めることができた。


「ふぅ……なんとかなったな」


 それにしても、ネメシスフィールドとビーストモードを両方使用してようやくスライム一匹倒せるのか……。

 これは先が思いやられるな……。

 初心者ようのダンジョンだとかっていってたけど、ほんとうなのかな。

 まあ、俺でもこうやって一応はやっていけてるから、そうなのかな。

 だが、このスキルがなかったらとてもじゃないがやっていけんな。

 俺ももっと若ければ、スムーズに攻略できたんだろうがな。

 この歳だから、これでも十分やれているほうだろう。


「さて、レベルはあがったかな」


 この前このスライムを倒したら、レベルが一気に25まで上がってたんだ。

 今回もレベルがあがってるといいが……。


「ステータスオープン……お……!」


 ステータスを確認すると、俺のレベルは35まであがっていた。

 くしくも、俺と同じ年齢だ。

 どうやら、スライムというのはレベルがあがりやすいみたいだ。

 そのかわりに、とんでもなく素早かったり、倒しにくいみたいだけどな。

 スライムって俺の印象じゃ、最弱モンスターっていうイメージだったんだけどな。

 どうやら、ゴブリンよりも強そうだぞ。

 スライムってこんなに倒しにくいモンスターなんだったっけ。

 そこは、ゲームとかとは違うようだ。


 俺も一応は、RPGのゲームとかやったことはある。

 けどまあ、あまり世代じゃないし、はまらなかったのもあって、序盤しかやったことないんだよな、そういうゲーム。

 もしかしたら、中盤以降には強いスライムなんかも出てくるのかもしれない。

 とにかく、スライムが最弱というイメージは置いておいたほうがよさそうだ。

 さあて、じゃあスライムを倒してスライムコアももぎ取ったことだし、いったん帰るか。

 ネメシスフィールドとビーストモードを使ったから、この先こころもとないしな。

 それにしても、毎回ネメシスフィールドとビーストモード使ってちゃこの先が思いやられるな。

 今後はこれらのスキルをなんとか温存して進めるようにしよう。

 そのためにも、いったんまた東京にいって装備を買おうか。

 魔石も売りたいしな。


 俺はいったんダンジョンを出て、動画をアップロードし、そのあしで東京に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る