三花三星の少女たち ~A fight to save you~
雪広ゆう
プロローグ
EP0 Christmas Eve, 2025 ~惨劇~
腹部から溢れる鮮血、混濁し始める意識を保つ為に私は呻き声を上げる。
今日は
負傷者の数は一人や二人と言える次元を超えている。
只でさえ日々大勢の人々が訪れる
だから被害の甚大さは想像に難くない……戦闘の末に深い傷を負って精根尽き果てた私の身体、地に伏して視界一面に広がる星空を瞳に映しながら自分の無力さを痛感する。
「の、乃衣……」
次第に減る救いを求める声に摩耗する私の心――もういっそ楽になりたい。
と瞬間的に脳裏に過る最低最悪な思考を振り払う。まだ私にはやり残した事が沢山ある。此処で諦めては駄目だと意識を奮い立たせて親友の名前を何度も呟く。
乃衣は無事に避難出来たのだろうか? 私は
戦闘間際、花術を扱えない非戦闘員の乃衣達は遠くに避難するよう伝えている。
ただ死闘の結果、想像を凌ぐ程に被害範囲が拡大してしまったから――。
「救護隊は
「はいっ!」
そう遠くない場所から私が通う私立カルミア女学園の副会長、
彼女の指示に呼応する救護隊の生徒たち、その内の一人が私の姿を発見すると春妃に報告する。駆け寄る足音が近付く、そして数十秒後、霞む視界に春妃の蒼白な表情が映る。
死闘の末、最後の最後に雨小衣の反撃を食らって腹部を鋭利な光弾が貫通、腹部から溢れ出る鮮血が血溜りを形成し、意識が遠のき始めている事からその量は致死量寸前に達する。
動揺を見せる春妃の心を落ち着かせようと、私は力を振り絞って虚勢を張る。
「待ち……くたびれた、わ。陽が昇るかと……思ったわよ」
「あ、あぁあ……よく、頑張ったな、涼花。沙枝、会長の応急処置を――」
「副会長、救急も警察も未だ繋がりません」
「ふうぅ、はあぁ……回線がパンクしているんだろ、仕方ない。聖ル・リアン女学院の冷泉会長に応援を要請済みだ。……今は目の前の負傷者を救え。踏ん張るぞ」
切迫している春妃に頼み事は悪いけれども、私よりも乃衣や他の役員が心配で仕方ない。
「乃衣たちから……連絡は?」
「……心配するな。大丈夫だ。すまん、アリシアから連絡だ」
私が率いる生徒会に所属する広報部長のアリシア・ヴェルヘルミナ・エーレンフェルト、彼女から連絡を受けた春妃が少し不自然に思えた。
会話の内容が漏れない様に場を離れる。私の耳に入れたくない内容と容易に推察できたけれども、今の私に問い詰める余裕はない。
「冷泉会長が到着した様だ。陣頭指揮の為、離れる……涼花、大丈夫だから後は任せとけ」
「そう、ね……千華流に、よろしくと。……行って」
「ああ。沙枝は引き続き会長の治療を。これ程の大惨事だ。救急も言っている間に来るだろ」
脳裏に最悪の結果が拭えない……でも無力な今の私は、ただ乃衣の無事を願うだけだった。
――そして数日後、私の願いは空虚に響く。想像し得た残酷な結果を突き付けられる。
色々と心が摩耗し続けていた私に寄り添い続けてくれた精神的支柱、共に困難を乗り越えた親友でもある
だからこそだった。乃衣の訃報を病床で聞かされた時は一週間ほど茫然自失の状態で、現実感が薄れて、人生の中で一番の絶望感に打ち
その出来事が
春妃は未だ私が乃衣の呪縛に囚われていると言うけれども、私は春妃が思う以上に執念深い性格だ。私は乃衣を運命の楔から解き放つ方法を何十年も熟考し続けて、ようやく悲願の達成を果たせる所まで辿り着くことが出来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます