第11話 シャナ事件

「足場、かなり悪いから気をつけて」

先を行くノワールが後ろを振り返ってそう言った。

「ひぃ……疲れた……」

カナリーは息を切らしながらノワールの後ろを必死でついていった。


ノワールとカナリーは今、森の中にいた。

鬱蒼と生い茂る木々……川のせせらぎが聞こえる。


2人が森に来た理由……それは、この森に住む竜が、ここ最近、頻繁に街に姿を現し、金髪の少女を探しているそうなのだ。

街の住民から、なぜ竜が金髪の少女を探すのか調査して欲しいと頼まれ、ノワールとカナリーが森に訪れることになった。


「早く……この事件、解決したいですね。街の皆さん、竜から生け贄を要求されるんじゃないかと怯えていましたから……。それにしても……この森、歩きづらいですね!!ゴツゴツした岩があっちこっちにあるし……背の高い草、邪魔!!」

カナリーは背の高い草を掻き分けながら、ノワールの後ろをついていく。

「この森……前はこんなに荒れてなかった」

ノワールがそう呟いた。

「そうなんですか?じゃあ何で……あ、もしかして、この森に住む竜と関係している?」

「うん……。たぶん、そうだと思う……」


すると、視界が急に開き、目の前に大きな洞窟があった。近くには綺麗な泉がある。


「……ノワールさん、洞窟から何か音……いや、声が聞こえませんか?」

「……うん。聞こえる。泣き声……みたいだね」


2人がそっと洞窟を覗いたその瞬間……。


「シャナ!!!!」


洞窟から大きな、鋼色の物体が姿を現し、そして……


「うわわわっ!?」


カナリーがガシッと鷲掴みされた!!


「カナリーさん!!」

ノワールがカナリーの名前を呼んだ瞬間、鋼色の物体……この森に住む竜がハッとした。

「シャナ……じゃない……」


竜はカナリーを手放し、そして丁寧に謝ってくれた。

姿を現した竜は、とてもやつれていた。


2人は洞窟の中に案内され、そこで竜から話を聞くことにした。


「シャナが……一週間も帰ってこないんだぁあ」

竜の瞳からだばだばと涙が溢れた。

「え~っと、シャナさんという水の精霊さんが貴方の奥様……。シャナさんと喧嘩して、家を出てかれ、一週間帰ってこないと」

カナリーは竜から聞いた話をメモ帳に書いていく。

「最近、街に行かれて金髪の女性を探しているのは貴方……ですか?」

ノワールがそう聞くと、竜は頷いた。


「シャナは美しい金髪の乙女でな……シャナが水の精霊に転生する前は人間だったんだ。だからシャナは、人間のことが好きで、精霊になった今も時々、街に行っては人間達と交流を深めていたんだ……」

「ふむふむ……つまり、貴方はシャナさんを探すために街に行ってたんですね」

カナリーは、竜が生け贄探しで街に行ってたわけではないとわかり安心した。

「シャナは……歌が上手で……!いつも私に素晴らしい歌を聞かせてくれたんだあぁ……。木漏れ日の中で……!動物達と戯れて歌う姿は本当に美しくて……!!」

竜は泣きながらシャナの良さを2人に語った。



「とりあえず……街で調査しているリリィさんにシャナさんを見つけたら連絡して欲しいって伝えておいたので……」

「俺の方もシエルさんと警察の方に連絡したので。シャナさん、きっと見つかりますよ」

カナリーとノワールがそう言うと、竜は少しホッとした顔になった。

「助かりました……。シャナが出ていってからパニックになってて……警察や、貴方達のような相談所に相談すれば良かったですね……」

竜は苦笑いしてそう言った。

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