第3話 崩落
ガズムに逃げてきた子どもたちは、母親を引き連れて数を増やしていた。ガズムにある比較的大きな街に着くと、魔法を使って壁を築いている魔道士がそこらに見える。ひとまず安心できると思ったのだが、すぐに鐘が鳴り響く
「敵が来たぞ!」
「もう陥落したのかよっ!?」
「クソっ、まだ何も終わってねえよ」
「もういい、女子供を急いで避難させろ!」
一部の男の人達によって子供と女性は全員誘導されてさらに大きな地区であるカメリアに逃げ込む。一部の子ども──ガズムにいた子たちだろうか──は大泣きし、母親らによって抱えられて避難している
「ヘヘッ...大当たりだなぁ」
カメリアへと避難する道中、例の化け物に遭遇する。待ち伏せていたのだろうか。誘導していた男の人もいつの間にかガズムに戻ったのか居なくなっている。幸いなのはその化け物が1体だけということであるが、それでも抵抗力のない女子供が抗えるわけもなかった。子供が数名、後ろへ、つまりガズムの方向へ逃げ出した。あの化け物はそれを見逃さず追跡する
「逃さねえよ?」
鮮血が舞う。子供が倒れる。周りの子が泣く。それでも僕は当然目の前で殺されて気分が悪いのだが、それでも冷静だった。化け物の注意がガズムへ向かった子供に向いた、その隙を見逃さずカメリアへと走った。幸運なことに追っては来なかったが、耳をつんざくような悲鳴が後ろから聞こえた。
無我夢中で走り続けて十数分、ガズムに一番近い、カメリアの都市に着いた。もうすでに壁が完成間近であり、避難活動も着々と進んでいる。
「ガズムから逃げてきたのか。あっちは?どうなってる。」
街へ入ってすぐ街の人に話しかけられる。なんとなくだが、恐らくこの人も死ぬんだろう、そう思えてしまった。頭を振ってそんな考えを追いやる。
「もうすでに化け物たちが来てて...」
「そうか...もう、そこまで来たのか。あっちに避難用の馬車があるから向かいなさい」
その人は最後にありがとうと一言残し、数名と話し始める。云われた通り、道を進むと子どもたちだけを載せた馬車が見えてきた。
「来たか。どこからきたんだい?」
「ガズムから来ました」
「ガズムからかい?他の子は?いないのか?」
「出るときには街は襲われてて...」
「成程。云わせて悪かったな」
「いえ...」
涙はもう流れなくなっていた。御者の人に載せてもらい、馬車は出発する。
ヴェルニアからここに逃げてくるまでに師匠や親を失って、紛らわすように動き回った。その疲労のせいか足はもう動かず、ただ眠りたかった。眠ってすべてを忘れたかった。
「(もし─もしこれが夢で寝たら覚めたらいいのに)」
たらればの話をしてもどうしようもない。そう考えれるほど見たものが現実であるという事を実感していた。
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