エアガン・ゲーム
伊流河 イルカ
エピローグ
「ハア・・・ハア・・ハア・・・・・ハア・・・・。」
誰もいないホームセンターを、息を切らしながら走っていた。後ろには血が滴り、その血は左腕から流れていた。
「何で誰もいないの・・・・」
何かから逃げるように、後ろを確認するように走っていた。辺りを見渡すが、昼間の明かりのついたホームセンターに、人は誰もいなかった。
「うう・・・開けて!・・・何で開かないの」
走りついた自動ドアは、前に立っても開かず、ガラスの自動ドアを叩くが、割れることもなかった。ドアに左腕の血の跡がついていた。
外はまだ明るく、店の中には誰も入ってこなかった。普段なら人があふれているのに誰もいない、真夜中よりも不気味な景色だった。
「うあああああああ・・・・・・やめてくれ・・・・・!」
後ろの声に驚き、近くの洋服売り場に姿を隠した。
「あああああ・・・来るなあああああああ・・・」
スーツを着た男が走り、先ほど叩いた自動ドアを、同じように叩いた。仕切りに後ろを確認し、恐怖の表情を浮かべていた。
「逃げんなよ、おっさん。」
「デブのくせに逃げるのはえーな。」
スーツを着た男の後ろから、黒いパーカーを着た、帽子とマスクで顔を隠した二人の男が笑いながら歩いてきた。
「うあああああ・・・・たすけてえええええ!」
「あはははははダッセー・・・・・・」
そう言ったマスクの男の一人が、右腕をスーツの男に向けた。その手には何もなかったが、何かを握っているようで、人差し指だけが少し出ていた。
「バン・・・・。」
ブシュ・・・・・
「ああああああああああああああああ・・・・・・・・」
マスクの男が人差し指を引くと、自動ドアを叩く男の腹部から、血が噴き出した。血が出ているところには、穴が開いていた。まるで銃で撃たれたようだった。
「・・・うるせえな。」
ブッシュ・・・ブッシュ・・・・ブッシュ・・・
叫び続ける男にイラついた声を出し、もう一人のマスクの男が何度も倒れたスーツの男を撃ちぬいた。その男も手には何も持っていなかっが、銃を撃っているような構えだった。
透明な銃がそこにあるようだった。
「ヒュー・・・ヒュー・・・・・・」
スーツの男の血は水溜まりの様に広がり、風船から空気が抜けるような音がした。
ガタッ・・・・・・
死体になった男に驚き、体が近くの服を置いてあった机にぶつかった。マスクの男二人がこちらをギロリと見た。
「ひっ・・・・・」
見えない銃をマスクの男達が構えた。急いでそこから逃げるが、何かに躓いたのか、地面に倒れた。
「い・・・・た・・・」
躓いたと思ったが、足が痛い・・・・熱い。何とか起き上がろうとしたが、足に力が入らない。
パチャ・・・・
足が濡れた感覚がした。足を見るとそこには大量の血が流れ、とても自分の血には見えなかった。
後ろを振り返ると男達が近づいてきた。
「ラッキー女じゃん。」
「もう時間無いから楽しめねえよ。さっさと殺せ。」
「まじかよー、まぁ殺すのも気持ちいいからいいか。」
「ハハハ、確かに。」
男達は楽しそうに会話をしていた。追いつかれるのが解っていたが、地を這ってでも逃げようとした。
「逃げんなよ。」
ブシュ・・・・ブシュ・・・・・・
「ああああああ・・・・・・」
手を打ち抜かれ、地を這うことすらできなくなった。
「殺せよ・・・・」
「痛めつけるのがいいのに。」
「変態が・・・うるさいの嫌いだから早く殺せよ。」
「はいはい・・・」
ブシュ・・・・・
「うが・・・・・・」
次はお腹を打ち抜かれた。いたぶって遊んでいる。
自分から出る血と一緒に、自分の命も流れているのを感じた。もうじき死ぬのだと。
「チッ・・・・・・俺が殺す。」
もう一人の男が見えない銃を構えた。その透明な銃口が自分の頭を狙っているのが分かった。
ブシュ・・・・・ブシュブシュ・・・
その打ち抜く音は、自分の身体からは聞こえなかった。
「・・・・・あ?」
銃を撃とうとした男の身体が、撃ち抜かれた。撃ってきた方を向くが、続けて弾丸を受けて倒れた。
「何だ!」
いたぶって遊んでいた男も、銃弾が飛んでくる方向を向くが、動きが止まった。
「遊んでるからこうなる。」
ブシュ・・・・・
男の頭が吹き飛んだ。
「頭狙えよ。」
何かマイクを着けているのか、テレビの犯人の様な声だった。白いニット帽と、白いパーカーを着た、ウサギの仮面が見えない銃で男を撃ち殺した。
「お前・・・・シロウサギか・・・・プレイヤー殺しの。」
「・・・・・。」
最初に撃たれた男が、まだ生きていた。その男の言葉にウサギは何も言わなかった。
「エアガン・ゲームしといて、NPC殺ししか狙わないとかヒーロー気取りかよ。」
「・・・・・・。」
「ま・・・・。」
ブシュ・・・
何も言わずに、男の頭をウサギは撃ち抜いた。そして、こちらをウサギは見た。
「こ・・・・ろ・・して。」
自分がもう助からないのが解り、激しい痛みだけが残った。いち早くこの苦しみから逃れたかった。
「・・・・すまない。」
ウサギは見えない銃を構え、こちらに向けた。銃口はしっかりと頭を向いていた。
ブシュ・・・・
トリガーが引かれ、死体になった。しかし、その死体は消えた。まるでゲームの様に、先ほどまでの死体はすべて消えた。
周りにはいつの間にか人が戻り、いつものホームセンターの風景だった。あの惨状はまるで空気の様に見えなくなった。ただ一人、ウサギを残して。
ウサギは静かに仮面を外し、人混みの中に消えていった。
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