無敵ニートの俺に時代がようやく追いついた件~社会不適合者と何十年も馬鹿にされた俺だけど、モンスターが日本に溢れた結果レアな【ステータス】を与えられ一番社会に適合してます

にこん

第1話 今日も社会のゴミ。そして無敵の人

「どうも店長の佐藤です。今日はバイトの応募ありがとうございます」

「新井です」


俺のスカスカの履歴書。

そこにはこう書いてある。


新井 優一


学歴など、空白。

資格なし

その他も空白。

志望動機すらも空白。


そんな履歴書に目を落として溜息を吐く。


「今まで何をしてきたの?新井 優一君」


無機質な部屋の一室で俺は説教を食らっていた。

説教をしているのはコンビニの店長。


俺はコンビニのアルバイトの面接に来ていた。

たかがアルバイト。


そう思っていた俺はこうやって説教をされるとは思っていなかった。


「とりあえず志望動機、聞こうか」


そう言ってきた店長に答える。


「バイトに志望動機なんて必要ですか?金が欲しいから、それだけで事足りませんか?」


そう言うと口を開けてポカーンとする佐藤に俺は続ける。


「まさかコンビニのバイトくらいでゴタゴタ取り繕わないといけないわけですか?レジ打ち、ゴミ出し、品出し。やることなんてそんなもんですよね?御社の経営理念にどうたらこうたら長い話する必要あります?」


俺がそう言うと佐藤は履歴書を返してきた。


「ん、帰っていいよ。俺も忙しい。これから大阪に行く用事があるし」


バタン。

部屋を出ていった。


面接室に取り残された俺は自分の履歴書を見て不敵に笑った。


「また勝ったおちた


これで記念すべき通算500回目の不採用となった。



家に帰ってきた俺。

部屋に入る前に鍵を探していると。


ガチャ。


隣の部屋から男が出てきた。

金髪のゴツイ体のやつ。


たまにこうやって鉢合わせする程度の仲だ。


(うわーっ。DQNだ。見るからに今日もDQNだなぁ)


そいつが俺の顔を見てきた。


「あれ、クソニート君何してんの?www今日は引きこもりじゃないのか?」

「バイトの面接に行ってた」

「受かった?www」


笑いながら聞いてくる男に答える。


「落ちた」


すると大爆笑を始めたDQN。


「知ってたわwわりーわりーw配慮が足りなかったな。お前みたいなカスがバイトに受かるわけないもんなwwwじゃ、俺仕事行ってくっからwwwありがとなwww寝起き1番に笑わせてくれてwwwいやぁ、いい日になりそうだわ」


大爆笑しながら去っていくのを見送る。


その後もしばらくDQNの声が聞こえていた。


「新井 優一?!あなたは!犯罪者よ!働いてなくて恥ずかしくないの?!お母さんが泣くぞ!そうだそうだ!死んじまえ!社会のゴミ新井 優一!ニートは犯罪なんだぞ!社会不適合者のダニは死んじまえ〜」


散々な罵倒のされ方だ。

それにしてもこんなことを大声で叫ばなくていいじゃん。


表立っては言い返せないので心の中で見下す。


(もう夕方なのに。こんな時間から出ていく仕事か……俺ならやりたくねぇわ)


思いながら家に入る。


パソコンを起動してキーボードを叩き匿名掲示板にアクセスすることにした。


カタカタカタ。


スレッドを立てる。



【朗報】ワイニート500回目のアルバイトの面接に行き無事に不採用


1

大学卒業してから10年弱500回アルバイトの面接に行ったが全部不採用や

俺強すぎwww


俺以上の歴戦の猛者おりゅ?www


2

面接でどんな受け答えしてんねん


3

逆圧迫をモットーに受け答えしとる


4

そら受からんわ


受かるつもりないんか?


5

うん

俺みたいな大卒のエリートがコンビニバイトなんてやれるかい


俺は信じとるねん。

自分の可能性を。


俺にはもっといい天職があるって信じてる

信じて10年ニートやってきたんや!


その天職に。俺はピカピカの職歴なしの体で従事するんや!


6

あるといいね……

とにかく事件だけは起こすなや?無敵の人



それ以降このスレにレスがつくことは無かったので、音楽を聞きながら他のスレッドを眺めていた。

すると気になる書き込みを見かけた。



289

さっきクーポン使って出前頼んだんだけど配達員に腕噛まれた



290

は?

日本語でおk



291

いや、マジなんだって。

商品渡そうとされて受け取ろうとしたら噛み付かれた



292

デマ乙



293

こんな意味の無い嘘ついても仕方なくね?

防犯カメラ付けてるから証拠あるし名前ちょっと出すけど某ファミレスのチェーンだよ

つ写真



そう言いながらその男は噛まれたという腕の写真を貼っていた。



294

マジじゃん。

クーポン使われて生活苦しくてお前の腕食おうとしたってことか?



295 噛まれ犬

そんなわけないだろうけど。

あ、一応コテ(固定ネーム)付けとくわ



と、そんな感じで談笑している奴らだったけどそのうち噛まれたという噛まれ犬の様子がおかしくなっていた。



330 噛まれ犬

ちょ、やb

いkが

しんd


331

どうした?


332 噛まれ犬

110tano


333

釣りじゃないよな?


334 噛まれ犬

はy


その後噛まれ犬は10分ほど書き込まなくなり掲示板の流れは変わった。


350

一応さっきの噛まれたヤツのこと110しといたわ


351

俺も。

なんかの伝染病なんかね?

こわっ。



そこまで見て俺は別の窓で開いていた動画サイトのことがちらっと見えて。


とあるライブが急上昇していることに気づいた。


「ん?なんだ、これ東京の街のカメラ?なんだって、こんなのが急上昇?」


そのライブを見てみると


「え?人が人を噛んでる?」


スクランブル交差点ってやつか?

デカい交差点で人が人に噛み付いていてパニックになっているライブだった。


「……ちらっ」


俺はなんとなく気になって玄関に駆け寄るとドアチェーンをした。

鍵だけじゃなんとなく不安だった。


それでその場に座り込んで思った。


「やばくね?何これ、ゾンビ?」


そう思いながら立ち上がってまたライブを見ていた。


~1時間後~


ずっとライブはパニックになっていた。


「んだよこれ……」


何をすればいいのか分からなくなった俺は


「寝るか、悪い夢だろう」


何を思ったのかベッドに飛び込んでいた。

でもその時の俺は寝て起きたら何か変わってるだろう。

そんな思考で寝ることしかできなかったのだ。




ガンガンガン!!!

俺の家の扉を叩く音が聞こえて目覚めた。


誰だ誰だ。

ドアを叩くのは。


「クソニート!いるんだろ?!」


ドアを叩きながら声が聞こえてきた。

この声、隣のDQNか。


何事かと思って覗き穴から外を見ると


「助けてくれ!噛まれた!鍵落としちまって家ん中入れないんだよ!」


俺はニヤニヤしながら聞いてやる。


「え?なんだって?」

「外やべぇんだって!人が人を食ってやがる!俺も噛まれた!助けてくれ!」


いい気味だな。

さっき馬鹿にされたことを軽く仕返ししてやろう。


「あれ、お仕事は行かなくていいの?働いてないなんて恥ずかしいヤツだね君は」

「そんなこと言ってる場合じゃねぇよ!交通機関も全部止まってやがるんだよ!」


その時低い地獄の底から響くような唸り声が聞こえた。


「グゥゥゥゥ……」

「ひっ、きやがった!は、早くしてくれ!」


DQNが叫んでくる。

何か来ているらしいが。


「それが人に物を頼む態度?」

「わ、悪かった!助けてください!お願いします神様!」

「新井様って呼びなよ」

「新井様!頼む!頼む!」


DQNがそう言った時だった。


「うぎゃーーーーー!!!!」


次の瞬間。


ムシャッ。グチャッ。


扉越しに咀嚼音が聞こえる。


「く、食うな!食うな!助けろよ!クソニート!」


異常な咀嚼音を前に俺は動けなかった。

なんだ……今の音……。


俺は覗き穴から頑張って覗いてみると扉のスグそこでは人がDQNを食べていた。


「マジかよ……」


俺はそのままソロり、ソロりと後ろに下がってベッドまで抜き足差し足忍び足で向かっていった。


「やばくね?何あれ?ゾンビか?」


俺はDQNの叫び声が聞こえる中布団の中に潜り込んだ。


「夢だろ?これ、現実なのか?」


俺はそんなことを思いながらまた眠りに着くことにした。

だって、これどうしようもなくね?


俺ただのニートなんだけど。


いきなりゾンビみたいな化け物が出てきても俺にできることなんてなくね?


俺にできることなんてせいぜいこうして寝ることくらいだ。

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