第8話
私にはそういう面があった。ふだんは真面目で従順なのに、時折、ふと思いついて大胆なことをして、両親や元夫を驚かせるのが好きだった。彼らの知らない自分を見せたい、演出したいという気持ちが強くなるときがあるのだ。
しかし…診察室でやるべきではなかった。
精神科医の堅い無表情を見て、私は自分のおふざけが過ぎたことを悟った。私は、彼が「違う」とか「意味がわからない」とか、その場で笑いながらごまかすだろうと、無意識に予想していたが、その予想は外れた。彼は想像していたより、真面目な男性で、身バレをおそれていたのだ。精神科医は、私のスマホを突きつけられて、その画面にTwitterの自分の匿名のアカウントが表示されているのを凝視していたが、押し殺すような声で「なぜ分かりました?」と訊いてきた。
一万人以上のフォロアーを持つ医師インフルエンサーなので、以前からよくリツイートが回ってきていたのでアカウントを知った、最初はもちろん気づかなかった、何気なく見ていたら、この診察室の窓から見える風景に似ている風景の画像があった、それでそのアカウントの最初の方を読んだら、先生のお名前が…。
その後、どうやって診察室を出たのか覚えていない。
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