代替わり

 優大ゆうだい先輩達3年が卒部して、代替わり。

 新生チームで新人戦に挑み、勝って、勝って、負けた。

 そして、学年は上がり、新たな後輩せんりょくが入ってくる。

 後輩の中には女子も数名いたけど、全員インターハイ前に辞めてしまった。

 いとさんの寂しそうな表情かおが印象的だった。

 インターハイは、1年を2人加えて挑んだ。

 結果は、全国大会初戦落ち。

 薄暮はくぼ高校も初戦で落ちて、互いに悔しい結果となった。

 再び薄暮高校と練習試合をして、代替わり。

 糸さんは、女子の部長という肩書きと、キャプテンという肩書き両方を背負うことになった。


 僕達がチームの先頭に立つ、新人戦。

 ああ、みんなずっと待ってたんだと思うほど、新しいチームは"自由"だった。

 結果は、全国準優勝。

 優大先輩達と同じ結果だったけど、内容は全く違う。

 多分、みんな思っただろう。

 「今のこのチームだったら、全国優勝できる」

 新年度、女子の選手も3人入り、団体戦は出られなかったが、やっとダブルスに出場する事ができた。


 インターハイの結果。


 僕達黎明れいめい高校は、団体戦、個人戦共に優勝。

 ウチの高校では、初めての快挙だった。


 そして、僕のマネージャー仲間は。

 シングルスで、優勝した。


 今でも鮮明に思い出せる、最後のボール。

 コートを踏み締める音、呼吸音、瞬きの音さえ聞こえる気がする。

 「フー…」

 浅く長く息を吐いて、ボールを構える。

 高すぎず、低すぎず。無回転のトス。

 ボールは最高到達点へと達し、重力を思い出して一瞬、止まる。

 「ぉらッッッ!!!」

 唸り声のような声を出しながら、腕を振り下ろした。

 背中に、稲妻が走る。


 ボールはサービスコートへと着弾し、相手の手が届かない空間を食い破った。

 そのまま触らせず、ボールは壁へとぶつかる。

 「〜〜っしゃああああああ!!!!」

 彼女は大声で吠え、僕達も大声で吠え。

 優勝を、喜んだ。


 それから1週間後、恒例の練習試合。

 彼女は最後まで笑顔で、僕はぐちゃぐちゃになるまで泣きながら、卒部した。


 その、帰り道。

 「じゅんくん、一緒にマネージャーをしてくれてありがとう」

 いつものように話しながら、ゆっくり歩く道。

 「純くんのおかげで、ずっとテニス部にいることができた」

 僕のマネージャー仲間は、目に涙を浮かべて言う。


 「違うよ」


 僕は、君が誘ってくれたからテニス部ここにいたんだ。

 君のおかげで、楽しさを知ることができた。

 

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