第4話 解決のカギ
【今は4時。最短距離で時を操作せよ。酒を献杯、背に刻め、凍える唇、未だ見ぬ茜空へ。間違えば爆発する】
『トゥエルヴランドは12をモチーフにしている。我らが日本で12といえば、十二支だよね? 暗号の【今は4時】っていうのは、今年は兎年であることを意味していた。兎年はねずみ年から数えて4番目だよね。1から12までの
観覧車の中央に位置する〝天摩
『暗号の文字には、よく見ると方位の漢字と、干支の漢字がそれぞれ含まれている。【酒を献杯】には【酉】と【南】。つまり、南に酉。酉年はねずみ年を1とすると、10。つまり、一番下に10番のゴンドラを移動!』
現在は6番のゴンドラにお客様を乗せたところ、1番下に6番のゴンドラがあり、12番のゴンドラが一番上に来ている。10番のゴンドラを一番下に移動させるには、最短距離はゴンドラを逆回転で4つ動かす。
もうこれに賭けるしかない。
操作スタッフである僕がそう判断した。
あまりにも自信満々なシュダくんの言う通りに僕はゴンドラを動かす。
ゴンドラがゴゴゴゴゴゴと揺れている。僕の操作盤を握る手も震えている。人の命が掛かっている。それを感じずにはいられなかった。
観覧車を時計に見立て、時を動かす。
操作係である、僕の役目だ。
ゴンドラを動かしている間にも、シュダくんの推理は続けられる。
『【背に刻め】には【北】と【亥】。つまり、北に亥。亥年はねずみ年を1とすると、12。つまり、一番上に12番のゴンドラを移動!』
先ほど4つ逆回転させたところ、今度は4つ正回転させる。その動きに何らかの意味があるのか。それともまさか本当に、金庫のダイヤルみたいに、このゴンドラをある一定の決まった法則によって動かすと、仕掛けが動いたりするのだろうか。
にわかには信じられない。それこそ非日常だ。
『【凍える唇】には【東】と【辰】。つまり、東に辰。辰年はねずみ年を1とすると、5。つまり、一番右に5番のゴンドラを移動!』
時計の文字盤で言う一番右は『3時の方角』。今はちょうど12番のゴンドラが一番上に位置していて、時計の文字盤と同じ形になっている。5番のゴンドラを『3時の方角』に移動させるには、左に2つ移動させる。逆回転だ。
『【未だ見ぬ茜空へ】には【未】と【西】。つまり、西に
一番左は『9時の方角』。そこに7番のゴンドラを移動させるには、4つ分正回転を行なう。
【間違えば爆発する】と書かれていて尚今爆発していない事実が、シュダくんの推理の裏付けにもなっている。
僕の操作盤を握る手にも震えが無くなってきた。
すごい。
彼の推理は合っていた!!
ゴンドラを移動させ終わると、『ゴゴゴゴゴゴ』と、まるで巨大ロボが地下の秘密基地から出てきそうなほどの壮大な音が、どこかから聞こえてきた。
『カチリ』
どこからともなく何かしらの小気味良い音が鳴った。
音がしたすぐ後に、爆弾の上にひとつのカギが落ちてきた。
本当にゲームみたいだ……。
「正解したんだ……、シュダくんすごい!!」
僕は思わずカギに近寄ったが、太い腕で制された。
「待て。お前は下がってろ。俺が開ける」
消し炭のタツは落ちてきたカギを持って、支柱にくくりつけられている爆弾に相対した。
僕を守ってくれているのか。確かに爆弾を開けて、一番爆風を浴びるのは、カギを使った人だ。
金属製の箱を開けて、中を確認した途端、刑事さんは箱を地面にたたきつけた。
鬼の形相で僕の胸ぐらを掴んだ。
「クソ野郎! やっぱりお前だったか」
「爆弾は!? 解除できたんですか!?」
「爆弾は偽物だったよ! こんな手紙が時計に貼り付けられていた」
〝消し炭のタツ〟さんが僕のおでこに貼り付けたメモを剥がして、よくよく読んでみると『ゲーム楽しかったね、スタッフより』と書かれていた。
爆弾魔はスタッフだった……!?
確かにスタッフならば観覧車にギミックを仕掛けることが出来るかもしれない。
爆弾は偽物で、爆破予告も嘘っぱちだった。
ハラハラドキドキのイベント。演出。シナリオ通り。
お客様の安全は守られた。
しかし、僕自身の安全は依然危険な状態だった。
爆弾魔現行犯から、爆弾魔未遂犯に。
最初の二択は健在だった!!
そんな最悪のシナリオを僕が書くわけが無い!
「違う! 違います!! 僕じゃない!!」
「ゲームは楽しかったかクソ野郎。たっぷり署で絞ってやるよ!」
「違いますよ。犯人はこの遊園地の中に居ます」
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