【短編】桜木 ノノはピンクセイバーである。
MrR
桜木 ノノはピンクセイバーである。
【昼間・繁華街】
人が大勢行きかい、車の往来が激しい繁華街。
そんな街並みを一気に地獄に変えた。
『ザターンにひれ伏せ!!』
『人間狩りだ!!』
昭和の悪の組織のような戦闘員のような黒タイツの集団がトラックやジープと一緒に現れ、次々と人々を襲う。
「け、警察だ――うわぁ!?」
警察が来ようが怪人らしき存在に殺害される。
『我達ザターンに逆らう者は死を!!』
応援で駆け付けた警官達もどうすればいいのやら分からない状態だった。
まるで歯が立たない。
奴達はザターン。
謎の秘密結社、悪の組織である以外はなにも分かってはいない。
ただ分かるのは相手が警官だろうと自衛隊だろうと歯向かう者は容赦なく叩き潰してくると言う事だ。
それを止められる物は誰もいない。
『待ちなさい!!』
ピンク色の派手なバイクがやってくる。
乗ってる人間は昭和の戦隊ピンクのような背格好だ。
胸もそこそこあり、女らしさを強調している。
白いアンダースーツの上からピンクのレオタード、各プロテクターを身に纏っている。
声色からして10代半ばの女の子の声だ。
『キキ!?』
『キィ!?』
派手にバイクで戦闘員を轢き飛ばし、手に持った光線銃で次々と戦闘員を撃ち倒す。
そしてバイクから降りると手に持ったブレードで次々と戦闘員を斬り倒していく。
まるで特撮番組のヒーローさながらの戦い振りである。
『もう貴方達に誰も奪わせやしない!!』
そう言いながらピンクの戦士は戦う。
『現れたピンクセイバー!!』
そんなピンクの戦士、ピンクセイバーの快進撃を阻むかのようにエリマキトカゲのような怪人が現れた。
両手は赤く染まり、何人も人を殺めた証拠だった。
『アナタはここで倒します!!』
『やってみろ!!』
トカゲの爪とピンクの戦士の剣と銃が激突する。
戦いその物はピンクの戦士が優勢だ。
だが決定打には至らず、トカゲの怪人の攻撃を被弾する回数が増えて行く。
『この程度か!? ピンクセイバー!!』
『まだです!!』
そしてピンクセイバーは空中に飛び上がり、右足が光り輝き、必殺の蹴り技をトカゲ怪人の胴体に炸裂させる。
『そんな――馬鹿なッ!?』
数十メートル吹き飛びながらトカゲ怪人は爆散した。
『まだだ。まだ助けないと!!』
一息つく間もなくピンクセイバーは残党狩りを行う。
☆
【翌日・学校にて】
桜木 ノノはピンクセイバーである。
今は亡き父と母が残した研究データーを元にピンクセイバーとして悪の組織「ザターン」と戦うのであった。
そんな彼女にも日常はある。
学生としての日常が。
ピンク色のボブカット。
小動物のような可愛らしい顔立ちに大きな瞳。
そこそこあるバストサイズ。
人気と一緒に同性の嫉妬の視線すら集める女の子だった。
だが変身ヒロインを隠れてこっそりやっているせいで人付き合いはとても悪い。
誰が流した噂なのかパパ活をやっているなんて言う下品な噂まで出回っているぐらいだ。
これもそれも自分の付き合いが悪いせいなのだろうか。
本当は仲よく遊びたい。
だがそんな事をすれば多くの人間が死んでしまう。
更に――
「ピンクセイバーってエロいよな」
「どんな素顔なんだろうな」
「これで不細工だったら詐欺だぜ」
男達がそう言い、
「ピンクセイバーって何者かしら」
「あんなやらしい姿で戦うなんて変なの」
「やらしい女の子なのよきっと」
女達もそんな事を言う。
命懸けの戦いをしていると言うのにこれである。
一瞬投げ出したい気分になる。
でも自分が頑張らないと多くの人が死んでしまう。
それがとても辛かった。
「大丈夫?」
「マリネ先輩?」
海里 マリネ先輩。
黒髪のポニーテール。
温和そうな顔立ちに実年齢よりも上に見える落ち着いた雰囲気。
背も高く胸もあり、大和撫子然とした美女で人当りも良く、学園でも人気の美女だ。
「もしかしてピンクセイバーが悪く言われてる事がイヤなの?」
「それは――」
「ノノは好きだもんね、ピンクセイバーのこと」
「は、はい」
ギュッと後ろから抱きしめられるノノ。
マリネの大きく柔らかい乳房がノノの後頭部を圧迫する。
それを羨まし気に遠くから見る男性陣。
「私は好きだわ。まるでノノみたい」
「えっ!?」
「困っている人は放っておけないところ――貴方もそう言う何かがあるから付き合いが悪いみたいになってるんでしょう?」
「言わなくてもいい。だけど怪我には気をつけて」
「は、はい」
正直人前でこんな事を言われるのは恥ずかしかった。
だけど、とても心地よい雰囲気でもある。
☆
【放課後・とある研究所にて】
茶髪のお下げで眼鏡を掛けた何処か男らしい女性研究員のキサラさんと一緒にピンクセイバーのチェックを受ける。
「正直言うとギリギリだね」
「ギリギリですか?」
「スーツの性能限界とか連日の戦いの消耗率――遠からずウチにピンクセイバーは戦えなくなる」
「そんな――」
「なんとかしたいけど、正直今迄戦って来られたのも奇跡みたいなもんだ――もって10回、激しい損傷によっては残り1回になるね」
「どうにかする方法は?」
「世知辛い話だけど金と資源が無いんだ」
「そんな――」
厳しい現実を突きつけられる桜木 ノノ。
そんな矢先に警報が鳴り響く。
☆
【繁華街にて】
繁華街に現れたザターン。
戦うノノことピンクセイバー。
あと数回しか戦えなくなってもいい。
それでもノノは手を差し伸べ続ける。
戦い続ける。
☆
【10回目の戦い:桜木 ノノが通う学校のグラウンドにて】
雨が降る中、ピンクセイバーは地面に倒れ伏していた。
最後の一回。
よく持った方だと思う。
戦隊ピンクのようなパワードスーツから力が溢れてこない。
バイクも武器も使えない。
どうにか敵を倒せたけれどもスーツはボロボロ。
もう修理できない。
もう戦えない。
そんな非情な現実がノノの心を抉る。
「ノノだったんですね」
「あ――」
そう言えばヘルメット壊れてたんだと思った。
「ごめんなさいマリネ先輩。私は――もう戦えないの」
「それは、どうしてですか?」
そしてノノはマリネにその理由を明かした。
もう戦えない事。
次が来たら皆を守り切れない事。
「そんな――どうにもならないんですか?」
「うん――」
「国や他の人に頼る事は出来ないんですか――」
「無理だよ」
マリネの提案を即座に否定した。
「私も提案した。だけど修理、整備には特殊な資材が必要なんだって。それを作れるお父さんもお母さんも死んじゃったから」
「そんな――」
「でも戦い続けてみる」
「無茶だわ」
「それでも、戦います――」
「どうしてそこまで――」
マリネは思わずノノを抱きしめる。
そして――
『そうかもう戦えないのか』
『つまり嬲り放題ってワケだな』
『学園の連中ともども始末に』
ザターンの新手がやってくる。
最悪な時に最悪な連中がやって来た。
「まだ敵が――」
ノノは立ち上がる。
もう戦えない。
だからと言って戦わないと言う選択肢はノノにとってありえない。
『そんな体に何が出来る!?』
『お前はもう終わりだ!!』
「うっ!!」
それでも現実は無情。
軽い攻撃でノノは吹き飛ばされてしまう。
「戦うんだ。どうなってもいいから戦うんだ」
ノノはそれでも立ち上がる。
立ち上がったところで何が出来るとかそう言うのは関係ない。
「本当に強情な女の子だよ!! 桜木 ノノ!!」
そして現れたのはキサラさんだった。
走って新たなブレスレットを届けてくる。
見た事がないセイバーチェンジャーを授ける。
「キサラさん、これは!?」
「黙って変身しろ!!」
「はい!!」
ノノはキサラを信じて変身。
そして新たなピンクセイバーとなる。
「詳しい話は後だ!! そいつでぶっ飛ばせ!!」
『はい!!』
パワーが満ち溢れている。
以前のピンクセイバーのスーツの力も凄かったがこのスーツはそれ以上だ。
あっと言う間に怪人を斬り倒し、撃ち貫き、蹴り砕いていく。
『す、すごい!!』
「だろ? まあ詳しい話は後だ。ここから去るぞ」
☆
キサラさんがどうにか知恵を絞りに絞って解決策を出そうとした。
危ない橋だが政府機関に頼ると言うのも考えた。
そんな時にキサラが所有するコンピューターにある座標が示されていた。
極秘の研究施設の位置とスーツの修復必要な資材の作り方や開発方法が記されたデーターである。
どうしてこのタイミングで? とも思ったがキサラとしても渡りに船だった。
そして新型スーツを突貫工事で作り今に到ると言う――
☆
【新・研究所内部】
「そんな事があったんですか――」
驚くノノ。
キサラも「ああ、私も驚いたよ」と同じ気持ちだったようだ。
「それよか顔バレしちまったけど大丈夫なのか?」
「はい――」
SNS全盛の今のご時世。
変身ヒロインの顔バレは社会的な死と同意犠だ。
それでもノノは――
「私はそれでも戦い続けます」
「そうか」
悲し気な表情を浮かべるキサラ。
(さようならマリネ先輩――)
心の中で別れを告げるノノ。
かくして二人の新たな戦いが始まる。
【短編】桜木 ノノはピンクセイバーである。 MrR @mrr
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます