第2話 欠陥品悪役令嬢の過去


 シオンは私が7歳のときに拾ってきたのです。そのころの私は『異世界だぜ!俺Tueeeeだぜ!』という貴族の令嬢としては、駄目な生き物だったのです。


 公爵令嬢である私が何故、駄目な生き物になってしまったかといえば、16年前にお母様が亡くなった事がきっかけだったと言えばいいでしょう。


 そう全てが変わってしまったのは16年前からでした。


 私はザッフィーロ公爵家に生を受けました。ただ、幸せだったのはお母様がいた頃までだったのです。





 私が3歳の時ザッフィーロ公爵家は襲撃を受けました。なぜ、全滅と言っていいほど襲撃を受けたのか。その時子供だった私にはわかりませんでした。

 しかし、子供であった私にも知っていることはあります。ザッフィーロ公爵家は王家の闇を担っている。きっとそれが襲撃の理由でしょうと、その時の私は思っていました。

 そして、私がその襲撃を生き延びられたのは、たまたま助かったと言っていいでしょう。


 あの日、家人の目を盗んでお父様の書斎に籠もって魔法書を読んでいたところ、お兄様に見つかってしまい、お説教をされていたときでした。


 屋敷の中が異様に静かになったことに気がつきます。いつもなら、家人たちは明日の準備や僅かな自分たちの自由な時間を楽しむため、何かと雑音がするのに、何も何も音がしなかったのです。


 私がお父様の書斎に籠もる一番の理由はここには特殊な魔法が掛けられているため、当主の直系またはその許可を得た者のみが出入りができ、悪意ある魔法の影響を受けないという構造だからです。


 嫌な予感がする。この幼い体が憎らしい。早く行動するには不適切だともどかしさを感じ、お説教をしていたお兄様に異変を伝えました。


「にいちゃん。いえがおかしい」


 私の言葉にお兄様は顔を顰め、私を見ます。まぁ、いつもどおりコイツは何を言っているのだろうとか、言葉遣いがおかしいと思っているのでしょう。


 幼い頃の私は大体こんな感じの話し方をしていました。子供らしくないと公爵令嬢らしくないと思われているのも重々承知していましたが、身分というものに囚われない世界の記憶を持ったまま転生をした私にとって、ですわ口調は鳥肌物で、お祖母様の教育の成果ののち令嬢として最低限見苦しくない口調までに成長したと言ってよかったのです。


「何がおかしいんだ?」


 9歳であるお兄様は歳の割にはしっかりしており、私の奇行にも対処できるという優秀なお子様でありました。いいえ、私に慣らされたと言ったほうが、しっくりくるかもしれません。


「おとがしない。なにかがおこってる?とうさまはきょうかえってくる?」


「父上は10日は帰って来ないと聞いている」


 10日は長い。書斎のお父様の机の下に仕込まれている短剣を手に取り、お兄様に渡しながら


「これでみをまもって、へんなひとがいたら、ようしゃなくコロスこと。にいちゃんできるよね」


 お兄様の目を見て言うと、お兄様は困ったような表情をして短剣を受け取り、はっきりと言いました。


「できるかもしれないけど、僕は大人と剣を交えても勝てないよ」


 正直な言葉です。それは当たり前のことで、別にこのままで勝てるとは思っていません。


「だいじょうぶ。『身体強化』『能力向上』『斬撃強化』これでいい」


「ん?体が軽い?」


 これは転生前のゲームとか小説とかの知識ですから、この世界の魔法とは少し違うので多少の問題はありますけど、そこは目を瞑ってほしいです。

 以前、私自身で試して大変な目に遭った記憶があります。にいちゃんごめんねと心の中で謝っておきますね。


 書斎の扉を少し開け、廊下の様子を見る限り異様な静けさが満ちている以外何も問題がないように思えます。

 しかし、魔力の残滓が微かに感じ取れました。


「ねむりのまほう?」


 目を瞑り屋敷の気配というか、誰しも大なり小なり持っている魔力を検索します。

 数がおかしい。一階で仕事をしている家人が誰もいない?二階に集まっている?移動している方向は・・・


「にいちゃん!かあさまがあぶない!」


 書斎から急いで廊下に出ようとすれば、ふかふかの絨毯に足を取られ顔面から倒れてしまいました。ふかふかの絨毯のおかげで怪我はないけど、やはりこの小さな体は頭が重いようで、よくコケてしまいます。


 起き上がろうとすれば、体がふわりと浮き上がり、お兄様に抱えられていました。


「兄様にしっかり掴まっていろ!お母様のところまで走るから、舌を噛まないようにな」


 そう言って私を抱えたままお兄様が走り出しました。書斎からお母様の部屋まで一直線の廊下で繋がっているけれど、屋敷が大きすぎて遠い。


「にいちゃん!急いで!かあさまのへやにひとが、たどりついてしまった」


「わかっている」


 お兄様が扉を蹴破ってお母様の部屋に入れば、3人の黒い服に身を包んだ人物が立っていました。その足元には背中から銀色に光った刃物が突き刺さって倒れているお母様が···。


 あれは知っている。なぜ。なぜ。裏切った。なぜザッフィーロを裏切る!私は手を前に突き出す。


「『風刃乱舞』」


 複数の風の刃が黒い服に身を包んだ人物に向かっていきましたが、避けられてしまいました。

 でも、それでいい。


 私はお母様のところに駆け寄り背中の刃物を抜き取ろうとして気がつきました。うつ伏せになった胸にもナイフが刺さっていたのです。コレは何?胸に刃を刺したあと、助けを求めようとしたお母様の背中にトドメを刺した?


 そう、この部屋は公爵夫人の部屋。だから書斎と同じく魔法防御が施されていたはず。それ故、眠りの魔法は効いていなかったはずなのです。だから、お母様は助けを求めたのでしょう。お父様に···お母様が手を伸ばしている方向はお父様の部屋に続く扉。


「ヴィネ。この魔法は凄いな。子供の僕が大人の首を一撃で落とせた」


 血を被ったかのように血まみれになったお兄様がそう言いながら私のところに歩いてきました。その背後には物言わぬ肉塊が存在しています。


 その身体強化、2日後ぐらいにとてつもなく酷い筋肉痛に襲われることになり、丸一日はベッドの住人となるのです。2日後ってのがとても微妙。


 私はお母様の命を取り戻せないかと、悪あがきをしてみましたけれど、零れ落ちてしまった命を救い上げることはできませんでした。私が無力さに嘆いていると、更に5人の襲撃者が侵入し襲ってきました。私はその者たちを迎え入れるために立ち上がります。このような事は許されることではありません。

 お兄様が短剣で襲撃者の一人の首を掻き切ります。それを口火に両手に剣を持った者、糸のような物を操る者、火の魔法を操る者、苦無のような小さな剣を投げ放つ者が一斉に攻撃をしかけてきました。お兄様は双剣を持った者の腕を斬った隙に私は襲撃者二人の胸に風の魔法で風穴を開けて息の根を止めます。私が魔法を放っている間にお兄様は3人の襲撃者の息の根を止めていました。流石お兄様です。


 私は、他に侵入者の魔力がないか探ります。いた!

 手を天井に向け炎の渦を打ち放ちます。悲鳴と天井の破片と黒く焼け焦げた肉塊が落ちてきました。


 燃え落ちた天井の隙間から光が落ちてきました。見上げるとそこには、誰も守ることができなかった私たちを嘲笑うかのような歪んだ月が見下ろしていました。


 なんとか襲撃者は撃退しました。生きている家人を探しましたが、誰もいなかったのです。家人の全てを確実に殺されていました。


 本当ならお父様に相談したいところですが、10日は帰って来ないとお兄様が言っていたため、あてにはできそうにありません。


 爺やと婆やが居てくれたら···ちょっと待って!1月ほど前、領地に戻ると言って爺やと婆やが王都を去ってしまった。それも突然隠居すると言って。

 そして、黒装束の者たちの裏切り。おかしい。これは誰かが裏にいる?


 次期当主であるお兄様を守るにはどうすればいい。横を見ると血がそのまま付いたお兄様が寝ていました。


 しかし、いくら考えても所詮私は子供です。何ができるでもない。

 そもそも相手も目的もわからない。もう全てお父様に任せて子供らしく過ごせばいいかと思いそのまま眠りにつきました。



 騒がしい声と駆けてくる足音で目が覚めます。それと同時にお母様の部屋の壊れた扉から焦った形相のお父様が現れました。そのお父様の姿も血に塗れていました。ああ、きっとお父様の方でも裏切りがあり、途中で引き返して、今、屋敷の惨状を目にしたのでしょう。


 そんなお父様と目が合い、慌ててお父様が駆け寄ってきました。お父様の姿も私とお兄様の姿も変わらないので、それは慌てるかもしれません。


「ヴィネーラ!レーヴェ!無事か!」


「はい。でもかあさまが・・・ごめんなさい」


 私の言葉にお父様は顔を上げお母様を探すように視線を巡らせ、ベッドの上に眠るように横たわっているお母様を目にしました。


 お母様はお兄様と一緒になるべく血を拭き取り、美しい状態にしておきました。お父様はお母様を溺愛していましたから、あのような状態のお母様の姿を見せたくなかったのです。


 すぐにお母様の側に駆け寄ると思われたお父様が時が止まったかのように、何も言わず動かなくなってしまいました。どうしたのだろうと顔を上げれば、そこには表情が抜け落ちだお父様が存在していました。



 それからでした。屋敷の中がおかしくなったのは


 お母様を失ったお父様は殆ど屋敷には戻って来ず、屋敷内の事を全て新たに据えられた執事が取り仕切り、息苦しい生活が始まったのです。王都の屋敷の使用人の全てが新しくなったのもそうですが、あの日から誰かに監視されているような視線を感じるようになりました。


 まずはお兄様と引き離されてしまいました。会うにも新しい侍従長の許可がいると言われ、外に出るにもその侍従長の許可がいると言われ、何をするにも侍従長の許可が必要だったのです。


 今となってはそれが公爵家の令嬢として当たり前のこととわかっていますが、当時はわかりませんでした。

 だから、それが窮屈でしかたがなかったのです。


 そして、食事に毒物が混じるようになっていました。それは貴族は毒に慣れさせるために、毒を摂取しなけれがならないと前世の小説か何かに書いてあったような気がするので受け入れることにしました。


 あと、あの日から10日ぐらい経ったぐらいからでしょうか?夜に襲撃されるようになりました。そう、黒ずくめの者たちに。本当に私が子供だったら受け入れられないことだったかもしれません。

 だけど、私は前世の記憶を持ち、大人の思考を持った子供です。だから夜は結界を張って寝ることにしました。おかげで無傷で爆睡することができたのです。


 しかし、心配なのはお兄様。お兄様とお茶をする許可が侍従長から出たのはあの襲撃から3ヶ月も経ってからでした。

 なぜ、家族とお茶をするだけで、こんなに時間がかかるのか。お茶ぐらい毎日一緒にしても問題ないはずです。



 3ヶ月ぶりに会ったお兄様は、私が知っているお兄様の姿ではありませんでした。顔色が悪く、人を視線だけで射殺すような鋭い目。その目の下にはクマが青黒く浮き出て、見るからに痩せこけていました。


 これは何があったの?私は思わず問いかけそうになってしまいましたが、ここには信用ならないお兄様の侍従と私の侍女がいます。口に出すのはぐっとこらえ、他愛も無い話をして久しぶりの兄妹の会話を終えることになりました。


 お父様にお兄様のことを相談したかったけれど、中々帰って来ません。やっと帰って来ても私が寝ている夜中に帰ってきて、早朝に屋敷を出ていっているようで、全く会うことができなかったのです。

 それから、お父様に会うことができたのは更に1ヶ月後のことでした。お母様が亡くなって4ヶ月が経とうとしていました。


 玄関で待ち受けていた私は、思わず逃げ出したい衝動にかられてしまいます。私の目に映ったお父様は半死人状態と言っていい姿だったのです。痩せこけて目はくぼみ落ち、その目がギラギラと鋭く尖っていました。纏う雰囲気は虚無と表現していい感じで、そこに存在しているようで、存在していない。姿はあるのに気配がない。目の前に深淵の闇が広がっているような底しれぬ恐怖に支配されました。

 しかし、しかし、私は心を振り絞って声をかけます。


「おかえりなさい。とうさま」


 しかし、お父様の耳には私の声など聞こえていないかのように、私の横をとおり過ぎていったのです。私は話をするべくお父様を追いかけます。


「とうさま。おはなししたいことがあるの」


 お父様は私など存在しないかのように、歩みを進めていきます。その、後姿に私はお父様に頼ることを諦めました。


 ああ、お父様の中には死んだ姿のお母様しかいないのだと。そのお母様を殺した何者かを探しているのだろうと。


 でも、お父様。私、わかってしまったのです。お母様を殺した者が誰かって、でも言わないでおきます。復讐してもきっとお母様は喜ばないと思いますから。


 歩みを止めた私は踵を返し、私の部屋に戻ります。そして、荷造りを始めました。お父様に頼れないのなら、他の人を頼るべきだと。


 夜中の月明かりがない屋根の上を歩き、お兄様の部屋のバルコニーに降り立ちます。私の背中にはシーツを切って大風呂敷のように結んだ物を背負っています。そこには私の大切なものを詰め込みましたが、何だか泥棒になった気分になってしまいます。


「にいちゃん」


 声をかけて窓を叩きます。するとカーテンが開けれそこからゾンビが···いえ、痩せこけたお兄様が姿を現しました。夜にその姿は心臓に悪いです。


「ヴィネ、どうした?」


 お兄様は困惑したような顔を私に向けます。


「ばあちゃんのところに行こう。ここにいたら、にいちゃんが死んじゃう」


 私の言葉にお兄様も何か思うことがあったのでしょう。すぐさま準備をし、私とお兄様は月の光がない暗闇の中に飛び出して行きました。


 そう、私は6つ年上の兄を連れて、お祖母様の屋敷の扉を叩き保護を求めたのです。


 私とお兄様は前ザッフィーロ公爵に面会を求めました。前ザッフィーロ公爵であるお祖父様はザッフィーロ公爵領の地で老後生活を送っていたため、旅人が寄り合って乗る乗合馬車を乗り継いで、なんとか、たどり着いたのです。

 そこで前ザッフィーロ公爵であるお祖父様にお兄様の剣の腕を見出され、私も一緒に剣の修業をして、お祖母様から淑女教育をされ、貴族の子女が受けることができる教育と平穏という日常を送ることができました。おかげでお兄様も健康を取り戻し、今までのお兄様と変わらないお姿になることができました。


 4年が経ったころ、お兄様は学院に入り、お祖父様がお体を崩され、お祖母様はお祖父様につきっきりとなりました。

 そのときにお祖母様が教えてくれたのです。15歳年上のお祖父様に一目惚れをして猛アタックして一緒になったけれど、お祖父様がこの世を去ってしまえば、お祖母様も生きてはいけないと。

 私のお父様もきっとお祖母様のそういう所を強く引き継いてしまったために、あなた達に寂しい思いをさせてしまったわね。と。そして、お父様を恨まないであげてとも言われました。


 その3ヶ月後お祖父様が亡くなり、後を追うようにお祖母様も儚くなられ、大切な家族を失った私は7歳で『冒険者』デビューをしました。意味がわからないかもしれませんが、泣きつく父親もおらず、兄は学院に入ったため邪魔はしてはいけないと現実逃避をしていたのでした。



 私はとてもはしゃいでいました。『ヴィ』と名乗り7歳だけれど10歳と偽って冒険者登録をして、お祖父様に教えられた剣と【俺tueee脳】で作り上げた魔法を駆使して、魔物を蹂躙していたら、どこをどうしてだか父親に私の噂が耳に入り、ザッフィーロ公爵家に連れ戻され、脱走をし、連れ戻されるを繰り返していたときにシオンに出会ったのです。


 冒険者の依頼を受けた帰りに、昨晩の大雨で水嵩が増し、濁った泥水が勢いよく流れている川岸にボロボロの布切れが引っかかっていました。

 それをカラスが寄ってたかって突いていたので、気になりなにかあるのかと思って近寄れば、そのボロボロの布切れがもそりと動いたのです。駆け寄ってボロボロの布切れをめくってみれば、すみれのような紫の濡れた髪が一番に見え、かすかに動いているので、生きている人間だとわかりました。


 このまま放置するわけにもいかないので、助けようにも、流石に成人している男性と思われる人を担いで川岸から道まで戻るには子供である私は無理ですから、川岸から水が来ない安全な河原まで引きずっていきました。途中で色んなところにぶつけてしまったけれど、子供なので許して欲しいです。


 見た感じその人物は擦り傷しかなさそうでしたが、念の為私の鑑定さんで視てみますと、状態異常が出ており、猛毒となっていました。

 私はすぐさま【解毒】の魔法を使い解毒を行いました。3歳のときに毒を盛られたことが役に立ちました。

 しかし、助けた人物は目を開けそうにありません。回復するどころか、徐々に顔を歪め体温が高くなっていきます。おかしいと思い、成人していると思われる男性の衣服を剥ぎ取るのは失礼だと思いましたが、人の命がかかっているのでそこは許してほしいです。

 そして、調べた結果、右腕の骨折、背中から剣で斬られた傷、あとは激流に流されていく過程でできたと思われるかすり傷がありました。それも、背中の傷はどす黒くなっています。おそらく剣に毒でも塗ってあったのでしょう。剣に毒を塗るのは駄目ですよ。毒は。

 その傷は【治癒】の魔法で全て癒やしました。


 けが人が目を覚ましたのが、それから2日後でしたが、意識が朦朧としているようで、話はできず。更に2日経ってやっと話ができる状態になりました。


「ねぇ。お兄さんの名前は何?どこから来たの?私、ヴィって言うのよろしくね」


 何も答えてはくれません。しかし、なんとなくわかってはいました。彼の目はいつか見たお兄様と同じ目をしていたのです。


 彼にはきっとお兄様のように安全に日々を送れる場所が必要なのだとすぐにわかりました。だから、私は彼に言います。


「名前を教えてくれないのなら、勝手に呼んじゃうよ?お兄さんの呼び名はシオンだよ?」


「しおん?」


 薄い紫色の髪からシオン紫苑と勝手に名付けました。


「そう、シオン。シオン、行くところがないのなら私と一緒に来る?」


 そうして、訳ありそうなシオンを引きずって、ザッフィーロ公爵家に戻って来たのでした。



 そして、そのときまだ半死人状態だったお父様を殴りつけ、とある契約を交わしました。それに際し私はお母様を殺した犯人を教える代わりに、シオンを私の侍従にするようにという条件を付け加えました。

 復讐はきっとお母様は望んでいないでしょうが、お父様には区切りというものが、きっと必要なのだと思いました。


 そして、ザッフィーロ公爵家の使用人になりすました者たちを排除するようにとも言いました。彼らを雇っているのはお父様ですから、お父様に動いてもらわなければなりません。信用ならない侍女なんて側に置けません。まだ、拾ってきた者の方がましというものです。


「お父様!いつまでウジウジしているのですか!そんなことで死んだお母様に胸を張って会えるのですか!

 お父様ではなくお祖父様がザッフィーロ公爵家の事をお兄様に教えていたのですよ!すでにお祖父様の子飼いをお兄様は譲り受けています。せめて父親らしいことをしてください!

 それに命日の墓参りのときなんて、雨の中丸一日立っていて、お母様の墓の前で私達子供のことなんて一言も報告はしていないのでしょ?丸一日突っ立っていられると、私とお兄様が墓参りできないのでやめてもらえません?」


 溜まりに溜まったことをお父様に吐き出してしまいました。しかし、それがよかったのか、今では親子の仲は改善しておりますよ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る