スライムすら倒せない俺はメンブレ寸前です・・・。

ゆりぞう

第1話 迷宮の誕生

「ようやく学校も終わったな。迷宮いこうぜ!」


「今日こそ中階層の魔物を俺の異能でコテンパンにしてやる」


「お前じゃ無理だって。大体お前回復専門だろ?」



高校の門からはこれからの予定を楽しそうに話しながら一斉に帰って行く生徒の姿がある。そんな中、二人の生徒が校門の前で立ち止まっていた。


琉偉るい、本当に1人で迷宮に行くのか?」


 琉偉の事を心配そうに聞いてくるのは、唯一の友人であるひとし。その言葉に振り返りもせずに「行く」と一言告げて立ち去る。



 迷宮に行く為、琉偉は満員電車に揺られていると、迷宮の特集が電車内のモニターから流れているのに気付く。画面の向こうのキャスターが迷宮について話しているのをなんとなく聞いていた。



 『日本に世界初の迷宮が確認されてから今日で15年が経ちましたね。そこで、今日は迷宮の研究をしている専門家、田村教授にお越しいただきました。本日は宜しくお願いします。今でこそ迷宮は探索者という職業や法整備もされ、注目の職業となっておりますが、迷宮について何か新たに分かったこと、というのはあるのでしょうか?』



『どうも。田村です。現在でも迷宮については世界中の研究者が、日夜研究を続けていますが、分かっている事と言えば、迷宮に住む魔物から取れる、魔石が新エネルギーとして重要な資源になる、という事は皆さんご存じかと思われますが、それの新たな活用方法が最近見つかりましてね』


 

(今日が迷宮が誕生した日か…。当時は迷宮が出現したせいで沢山亡くなった人が居る…俺の両親も迷宮のせいで…)




『‥‥‥それと、迷宮が誕生した年に生まれた子供が、『異能』という、特異能力を持って生まれてくる事も最近話題になりましたね』



『それについてもこの2,3年の話ですからね。迷宮先進国のアメリカの研究機関ですら、まだ解明できてない謎ですが、その特異能力は迷宮攻略を大きく進められる事になると期待はされていますね』


『ですが、特異能力を持っているのはまだ10代の若者ですよ?これからの未来を担う若者に、危険な事をさせるべきではないという声も一定数ありますが、その点についてはどう思われますか?』


『私はどちらかと言うとその件については、反対派なんですけどね。ただ、最近になって日本政府が迷宮法の制限を緩めて大きな話題をよびましたよね』


『今までは低階層という比較的危険が少ない階層に限り、10代の探索者の活動を認めるという法でしたよね?それが4人以上のパーティーを組めば中階層に行っても良い事になりましたからね』


『生活に必要な電気やガス、水道なんかの値上がりが著しい中ですからね。魔石がそれらを解決するとはいえ、少し性急な判断だと私は思いました。それに…』




 テレビの向こうではキャスターと専門家の話は終わったようで、15年前の迷宮が出現した日の上空からの映像が映し出された。



街中に大きくぽっかりと空いた穴…付近では消防車や救急車などが救助活動をしている光景が映し出されている。


突如として現れたこの大穴は付近の住民を飲み込み、大勢の人が亡くなったという。


そんなテレビに映し出された光景を琉偉は憎しみを籠った目で見ていた。

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