第4話 これからのこと

契約の儀終了後、第二王子ルキウスはアントニオと精霊と共に自室へ戻っていた。契約の儀で精霊が現れた時点で契約は成立するが、信頼関係などを築くためには交流が必要だ。自己紹介で互いの能力などを確認し、実践でどれほどのものか確認する。精霊持ちは戦闘に有利なため、魔物の討伐や治療など依頼は尽きる事は無い。精霊によって能力は違い、主との魔法が合わされば威力、効果はまた違ってくる。そのため、幅広い依頼が受けられるので実践の場はいくらでもある。


「改めて、ルキウス=アルガディスです。このアルガディス王国の第二王子です。この度は、私の呼びかけに応じて頂きありがとうございます。精霊様、お名前をお聞きしてよろしいでしょうか?」


優雅にお辞儀をして自己紹介する様は、さすが洗練されている。


「シギだ。あと私は上級精霊などではない。神獣だ。」


「それもう精霊じゃなくね?」


「神獣とは、神に限りなく近くさらに神聖な存在っ。そのような方がなぜ!?」


 精霊が自分の呼びかけに応じただけでも奇跡だと思っていたのに、まさかそれよりも上位の存在が召喚に応じるなど、醜さの権化と言われる身にはすぎたこと。いや、それ以前に精霊召喚でなぜ神獣が。誇らしさと共に疑問が浮かんでくる。


「精霊の血も入ってるからギリセーフ。」


「いいのかっ!? セーフ?!」


「なるほど、精霊の血が。だから召喚の魔法陣にも適正があったのですね。ところで、セーフとは?」


召喚に使われる魔法陣は精霊召喚専用のもので、間違っても他の生物は召喚されないようになっている。適正のある、つまり主なしの精霊が体内に宿す”種”に反応する。神獣であるシギ様に精霊の血が流れているということは、”種”があるということだ。


「問題ないということだ。」


「問題あるということです。」


シギの言葉にアントニオがすかさずかぶせる。ルキウスはどちらの言葉を受け止めればいいか困惑している。それと同時に、初めての気軽な会話のやり取りに心は舞い上がっていた。


「えっと、とりあえず。シギ様についてもっと知りたいことがあるのですが。よろしいでしょうか?」


「主よ。神獣とはいえ、今は貴方が主だ。そうかしこまることはない。」


「しかし、」


「王子様、シギはこう見えて常に人恋しいやつです。どうか主人として時には友人として仲良くしてやってください。そして俺はただの一般人ですので執事にしていただけるないでしょうか?経験とかはないので訓練が必要ですが。」


「執事になってくれるのか?!」


 本来なら、第二王子に執事がついていないというのはありえないことだが、ルキウスの両親がつけさせず、使用人たちへ拒否権も与えた。もともとルキウスが抗議したとこで味方につくものはいない。だから使用人さえもまともに世話をしていないのだ。さらに、執事は基本、片時も離れずに主人の傍に控え、時には忠告もする教育係としての役目の期待されている。家庭によっては強力な味方をつくるため、忠誠心を育てるためにと同年代の子どもと一緒に育てるということもある。だが、ルキウスにはそんな話とは無縁だっため執事を持つことは昔からの憧れだったのだ。


「私でよろしければ。先ほども言った通り訓練とかないと使い物にならないんですけど」


「構わないっ!すぐ手配しようっ。あと、君がよければゆ、友人としても接してもよいだろうか?」


「もちろんです。」


「気軽に接してくれると嬉しい。敬語も、公の場以外では無しで頼む。」


「分かった。」


 ルキウスは精霊だけでなく執事と友人の両方を手に入れられたことによりゲッダ王国との会談に前向きになっていた。心では、遠くにいる友人に何から話そうか考えている。しかし、シギの言葉ですぐ現実に戻される。


「して、私に聞きたいことがあるのだろう?」


「あっ、はい。まず能力の確認をさせていただけ、…させてほしい。」


アントニオの圧のある視線とシギの期待するような顔を向けられ、負けたように言い直した。


「うむ。一言で言うのは難しいな。まず私は精霊と違い、一つの能力に特化しているわけではない。火も水も風もたいていの自然現象は扱える。攻撃、治癒、補助など使い分けや程度も加減できる。ただし、死者の復活など世の理から外れたことはできない。はっきり言って実践した方が早いな。」


「なるほど。扱える技が多いほどギルドで受けられる仕事は多いので少しずつ、色々な依頼を受けてみましょう。」


 基本、精霊は位以外にも分類することができる。火や風、水などの自然現象のどれか一つだけに特化しているため、火の精霊、水の精霊という風に分けられる。


「ギルド?!やっぱりそういうものがあるんですね?!」


「ギルドを知っているのですか?」


「入ったことはないですけど。町とか国の便利屋組織みたいなものですよね。」


「はい、そのような認識で間違いないかと。」


「じゃあ、ギルドへの登録にっ!」


「先に、私と主の交流とお前の執事訓練だ。」


「あぁんっ。夢のギルドー!!っけど、訓練よろしくお願いします!」


 当分の課題、アントニオの執事訓練とルキウスとシギの交流。


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ルキウス「そういえば、何で人間のアントニオが精霊召喚の魔法陣で?」


シギ「だてに神獣やっとらん。精霊の魔力と神気しんきでアントニオの体と魂を包んだ。」


ルキウス「なるほど、だから精霊として認識されたんだですn、されたんだな。」


アントニオ「つまり?」


シギ「ほんの隙間が開いてるドアにつま先ねじ込めばこっちのものだ。」


アントニオ「力技かよっ」

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