転生アル中吸血鬼は怠惰に過ごしたい〜どれだけ堕落しても才能までは抑えられないようです〜
🐴張田ハリル🦌
序章 酒の飲み過ぎで死んでしまった件について
プロローグ
「あー! 就職したくねぇー!」
就活に失敗した男、佐藤蒼は嘆いていた。
現在、大学四年の冬休み中。卒業も間近に迫り酒を飲みながら蒼は頭を抱える。別に内定先は悪い場所では無い。ただそれでも内定を貰えなかった企業の方が青く感じてしまうのだ。
高校まで努力を続けたものの大学入試で力が発揮されることも無く、俗に言うFラン大学へと進んでしまった。それが悪かったわけではない。その大学だからこそ、学べた事も多かった。だが、それでも世間は大学の名前を見て就活生を選んでしまう。ましてやーー。
「女……女に会いてぇよ……」
大学に女性が少なかったのだ。
入ってみて分かったことではあるものの男子に比べて女性は極端に少なく、その殆どがテニスサークル、もといヤリサーに取り込まれ愛らしさというものが消えてしまう。
そして決まった就職先にも女性は少ない。
だからこそ、こうして夜な夜な酒を飲んでは嘆いているのだ。高校の時の元カノを思い出しながら酒を口に含み、過去の栄光に縋っては自分の惨めさに吐き気を催す。
「マジで! 飲まねぇとやってられねぇ!」
少しばかり飲みすぎたせいか、蒼の口は上手く回っておらず、それでも尚、ハイボールを口に含み続けた。コップに入ったハイボールを一気に飲み終えると小さく舌打ちをして冷蔵庫を探す。
そこにあったのは現実逃避の道具だった。
通称『ストロングゼロ』、その禁忌の力を得るために蒼は蓋を開けて喉に流し込んだ。一瞬だけ過ぎる高揚感、アルコール度数の割に飲みやすい味わい。……その気分に浸るために蒼は飲んでは息をして飲んでは息をした。
五百ミリリットル缶が五分と経たずに空になり、再度冷蔵庫から新しいストゼロが取り出される。そしてそれを同じようにして飲んでは空にして新しいものを取り出した。
十は空けてしまった。
だが、それでも蒼の手が止まる事は無い。既に飲み過ぎたせいで一種のランナーズハイのような現象に陥り、あまつさえ死んでも良いとさえ思えてきていた。小さな死にたいという気持ちが酒によって掻き消され、それが顔を見せては酒によって掻き消される。
「あ……りぇえ……?」
そんなアホな事を繰り返したせいでーー
佐藤蒼は急性アルコール中毒によって二十二歳という若さで命を落とした。
◇◇◇
「ここは……」
真っ白い空間……以外に感想が出ないな。
えっと、僕は確か酒を飲んでいて……あれ、そこからの記憶が無いな。最初の方は刺身を食べながら楽しく飲んでいたのは覚えている。だけど、就職先のメールを見てから……。
あれれ……もしかして、酒の飲み過ぎで死んじゃったのか。いやいや、そんな最悪な死に方があるわけ……いや、ここにありましたわ。何があったにせよ、酒を飲んだせいで死んだ事には変わりないし、この空間も現実の日本では起こりえない状態が続いている。
ホワイトアウト……よりも視界が取れないもんな。こんな場所があったとしたらテレビとかに出ていてもおかしくないし。それに……不思議と寒さも暑さも感じない。
とりあえず……奥まで行ってみるか。
雰囲気からして横には見えない壁みたいなのがあるようだし進むなら前か後ろだ。……ただ、後ろは何も無さそうなんだよなぁ。こういうのってゲームとかなら前に進めって状態だろ。だったら、戻ったところで途中で壁に阻まれるっていうのがオチだ。
もちろん、知らんけど。
まぁ、前に進んで何も無かったら戻ればいいさ。死んだ状態から死ぬ事なんて無いでしょ。まさかゲームとかじゃあるまいし……いや、こういうのがフラグになるからやめておこう。
それにしても……本当に何も無いな。
このまま先に進んで大丈夫なのか。逆に進んだら何があるんだろう。アレか、就職先を自由に決められる権利とかでも貰えるのか。それだったら公務員か、可愛い女の子の多い大手化粧品メーカーとかを選ぶけど……。
はぁ、何か虚しくなってきたな。
やっぱり僕って死んで正解だったんじゃないか。死ぬべき存在が早く死んだだけ……そう考えると神様の判断は間違っていないような気がするな。自分で言うのも何だけど僕ほど生産性の無い男はいないだろうし。
って、パソコンみたいのがあった。
何だろう……僕の精神と繋がっていたりするのかな。訳が分からないけど……色々弄ってみるか。これ以外に何かがあるとは思えないし。
「……さすがに不用心すぎじゃね」
せめて、パソコンにパスワードは付けておけよ。友達とかにパソコンを弄られて自分の夜のオカズがバレるのとか嫌だろ。……いや、このパソコンの所有者は友人すらもいないのかもしれない。その点では僕の勝ちだね、ざまぁみやがれ。
と、冗談はここまでにして……。
これはステータスか。いや、確かにライトノベルっぽい展開だとは思っていたよ。それかゲームのチュートリアル。だとしても、現実で目の当たりにしたら少しだけ驚いてしまう。
詳しい数値は見えていない。ただ数値の横のアルファベットは弄れるみたいだ。種族も弄れるから何か別のものになってもいいな。エルフ……は彼女を寝盗られそうだからやめておこう。それ以外に選ぶとしたら……。
「吸血鬼か、鬼人か」
名前的に吸血鬼が魔法系、鬼人が物理系に強そうだよね。それなら……折角の機会だ。魔法が強い吸血鬼にしよう。しっかり、全ステータスの横のアルファベットの部分をSにしておいてっと。
後はスキルって部分だけど……ここは弄れないみたいだね。まぁ、ここも好きな物を手に入れられますよだったらヤバ過ぎるもんね。間違いなく空間魔法と異世界の物を買えるスキルとかを手に入れていた自身がある。
仮にここを弄れなくても闇魔法と魔眼は種族の関係で手に入るんだ。それだけあれば十分だろう。この魔眼で女の子を虜にして……くぅ、俄然、やる気が出てきたぞ。
決めた! 僕は異世界の美女の血だけを吸って生きていく! 僕専用のハーレムを作るぞ! そして幸せに楽に生きていくんだ!
完了のボタンを押して……そしてパソコンが消えるのを眺める。消えるのと同時に辺りの白い何かが晴れ始めて……。
「へっ……ここって……」
青い空、下には広大な森。
えーと……これは落ちますね!
「いーやァァァァァァァ!」
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