第25話 精霊運動会準備

 結局、イザベラのサークルに加入することにした。


 ブルレッドさんには、数字の覚え方として、語呂合わせと場所法を説明したけど、うまくいくかな。誰にでも苦手なことってあるよね。

 ブルレッドさんは感謝して、代わりに格闘術を教えてくれようとしたけど、小柄で非力な私には、ブルレッドさんのような腕力と脚力をつけるのは難しいです。


 サークル活動って、何か文化的なことをするのかなって思ってたけど、やってることは勉強が多い。

 主にイザベラが、ブルレッドさんとスノウさんに無理やり勉強を教えてる。そういえば、二人のクラス順位は19番と20番だった。まあ、私も18番だし。落ちこぼれサークルでした。

 ちなみに、サークル名は「気品あふれる淑女たちのティーパーティー」だそうだ。……もう、イザベラ・サークルで良くない? どこにいるのよ、気品あふれる淑女って。



 そんな風に、日々が過ぎていく中、


「精霊運動会の参加種目を決めるぞ」


 バトラール先生が、黒板に大きな文字で3つの種目を書いた。


 ・障害物競争  7人

 ・借り物競争  8人

 ・リレー    5人


「2年生クラスの対戦相手は3年生クラスだ。勝利すればクラス全員のそれぞれの中間考査に100点加点される」


 やる気なさそうだったクラスメイトが、先生の発言で目の色を変えた。

 真剣に話し合って、リレー選手を自薦・他薦する。

 私は足の速さよりも、運が大切な借り物競争に決められた。

 みんなよりもずっと背が低いからね。当然、足も遅いですよ。でも、運はある方かなぁ? 100点ほしいからがんばらなきゃ。

 ブルレッドさんとスノウさんがリレー選手に選ばれたので、その練習のため、サークル活動は当分お休みになった。やった!


 寮のレストランで注文しておいたテイクアウト料理を持って、部屋に戻る。シャルがつまみ食いするから、少し多めに入れてもらった。そう言えば、ここのところ夕食時にはいつもやってくる。忙しくないのかな。でも、一人で食べる食事は味気ないから、シャルがいてくれることがうれしい。


「ごめん。カナデ」


 ドアを開けるなり、シャルが謝ってきた。


「本当に、ごめん。楽しみにしてたのに、今度の精霊運動会に行けそうにないんだ。人間と契約をしたことを聞きつけた侯爵たちが、高位貴族の品格と尊厳が何たらとか因縁をつけてきて、少しもめてね。法律上は人間との契約には何の問題もないのに、威信と矜持がどうこう言いだして、ほんっと老害はさっさとくたばれよ。あんまりうるさく言ってくるから、陛下までが当分の間、公にするのは控えるようになんて言いだして……」


 シャルがいっぱい何か言ってるけど、何にも頭に入ってこない。だって、だって、そんなことよりも、目の前のシャルの姿が、


 軍服!!!


 輝く金色の長い髪が流れ落ちるのは漆黒の長い上着! 肩の所には金の鎖のような飾緒が付いていて、キラキラ光ってる! それから、金のボタンに金の肩章に、首元や裾や袖にはきらめく金糸の刺繍! なんか胸元にバッジもいっぱいついてる! おまけに裏地が真紅の黒マント!!!


 ひぃーっ。写真っ、写真撮らなきゃ。スマホ、スマホはどこよ〜!!


「うん? どうしたの。カナデ」


 イケメンに軍服という衝撃で、興奮して停止してしまった私に、シャルは首を傾げた。


 議会の帰りに寄ったんだって。

 軍服の美形精霊たちの出席する議会って、中継したら、視聴率めちゃくちゃ稼げるに違いない。

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