落ちこぼれ聖女だけど黄金の精霊に誘惑されてます〜Sランク聖女と黄金の精霊〜
白崎りか
お見合い編
第1話 聖女召喚
「こっちへおいで」
ベッドの上から、私の契約精霊が誘ってくる。
「明日、聖女進級テストだから、今日は、無理」
私は、教本から顔を上げ、ちらっと金色の精霊の方を見た。
黄金の髪が、精霊の美貌を縁取っている。
はちみつみたいに甘いまなざしで、誘惑してくる。
地下のせまい部屋の中で、高貴で妖艶な精霊と二人きり。誘惑をかわして、机に向かい、勉強に集中する。明日の試験に落ちたら2年生に上がれない。
「なんだ、これなら僕が教えられるよ」
後ろから抱きついてきた精霊が、私の肩ごしに教本を取り上げた。
「こんなもの読まなくても、僕に何でも聞いて?」
精霊は、教本をぱたんと閉じた。表紙には『精霊の種類とその習性』の文字。
「精霊のことなら、誰よりも詳しいよ」
彼は、精霊界に100人ほどしかいない貴族階級の精霊。たぶん貴族の中でも、とても位が高い。それが私の契約精霊。
「カナデになら、なんでも教えてあげるよ。なんでも、ね」
吐息が耳にかかる距離で話しかけられて、あわてて体をひねって逃げる。真っ赤になって距離を取った私に、精霊は面白そうに微笑んだ。
1年前は普通の高校生だった私が、異世界で金色の精霊と、聖女進級テストの勉強をしているなんて、そんなこと信じられる?
全ては、あの日に始まった。
今から約1年前。
氏名 ササハラ カナデ
レベル 18
職業 聖女(見習い)
住所 なし(召喚者寮予定)
HP 120
MP 30
契約精霊 なし
聖力 SSS
精霊共感力 E
精霊抵抗力 A
「なにこれ?」
バスが事故をおこして橋から落ちる瞬間に、「死にたくない」って思ったら、異世界に召喚された。
まぶしい光に包まれたと思ったら、カラフルな髪と服の人がいる部屋にいて、黒いローブの男性に渡されたのが、このカード。
「あなたのプロフィールカードです。身分証の役割もありますので、大切に保管してください」
「え? え? どういうこと?」
疑問だらけの私に、説明してくれたことによると、
この世界、リヴァンデールでは、生命の危機の瞬間に「生きたい」と強く願った独身女性を異世界から召喚しているそうだ。望めば、元の世界に帰還させてくれるけど、召喚された瞬間に戻るので……、つまり、死ぬかもしれないってこと。
じゃあ、この世界で、私はこれからどうしたらいいの?
不安そうな私に、その男性、召喚庁の職員は、封筒を渡してきた。
中に入っていたのは、
『初めての異世界生活』『精霊辞典』『精霊Q&A』『聖女学校入学願書』
なにこれ?
「召喚者は聖力が非常に高いのです。聖力を糧とする精霊と契約して、聖女になり、この世界の発展に力をお貸しください」
そして、私は、聖女見習いとして、精霊と契約するためのお見合いパーティに参加することになった。
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