明晰夢

幽彁

第1話

夢を、見ていたらしい。

割引チケットをもらって、水ぞく館に行こうとしたけどチケットをなくして、しのびこもうとする夢。

朝の来ない朝はこわい。

光のない目は朝が無いから?

最近、夢と現実のちがいがつかないような、そんな気がする。

ずっと地に足着かない、お風呂で水死体ごっこしてるみたいなゆらゆら。

頭もぐらぐらする。あまりものをよく考えられないような気がしている。

そんなきがする。

カーテンを開けると、カラスがこちらをのぞきこんで首をかしげていた。

窓ガラスをなぐりつけても、まだこちらを見つめ続けている。

いやな気分になったので、皿を一枚割ってみた。

よけいにいやな気分になっただけだった。

カーペットにちらばる皿のはへん、と切れと切れになったつると花のも様。

どうしよう。

いつかかたづけよう。

スリッパで食たくまで向かう、目玉焼きののった皿を運ぶ。

食べ始める、ニュースをつける。あれ、何か足りないような。

気のせいか。

なんだか今日は目玉焼きがまずい。

少し塩味はついているけど、少し油のにおいが強い、たまご自体の多少生ぐさいようなにおいがするような。

少しはき出してみると、赤と白と黄色がぐちゃぐちゃにまざった何かが出てくる。

ケチャップつけたっけ。

食たくを見回しても、からの牛乳パックといつ出したか覚えていないソースしかなかった。

口に戻して、もう一度かむ。

少し鉄くさい。

ん?

そういえば口の内がわが少しどくどくジンジンする。

いつのまにかんだんだろう、そっか、だから赤くて塩味がしたのか。

ということは、調味料を忘れていたのか。

どおりで何か足りないと思ったわけだ。

もう出かけよう、歯をみがいて血を洗い流して、かみの毛を結ぼうとすると、ゴムがちぎれたのでてき当にハサミで切った。校則に引っかかっちゃうからしょうがないよね。

時間割を見るのは面どうなので、五教科全部リュックにつめこむ。

まばたきをすると、目に何かが染みていたかった。かんそうかな。

だから冬はいやなんだよ。

おもいドアを開けると、冷たい風がふきこむが、ふみ出す。

あ、くつはいてなかった。あわててマンションのろうかをもどってくつをはきなおして、また出かける。

ここは何かいだったっけ、四かいか。ここから飛びおりたら、どうなるんだろうな。

こっせつかな、歩けなくなるかな、それともしんじゃうのかな。

てき当に落ちたら頭が下になって落ちるものなのかな。

物かげでハトの腹をカラスがつっついていた。

さっきのやつだろう。

じゃましてやろうと小石を投げると、ハトの方に当たったらしくて、虫の息だったハトはついに動かなくなったように見えた。

見えただけかもしれなかった。

鳩って走馬灯見るのかな。

何か黒いかげがしかいのはしにうつったような気がして、ふり返ると何もなかった。

黒いものすらない。

でも、いたと思えばいたのだ。

いなかったことはしょう明できないでしょう?なら面白い方にしちゃおう。

指が痛い。てぶくろを忘れたらしい。

あれ、そういえばてぶくろどこやったっけ。そろそろ汚くなってきたから洗おうと思って、思っただけで洗ってないんだっけ?あれ?

まぁ、いっか。いつか思い出すよ。


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