審問官の話
ところで、なぜ俺たちは冒険に出たのだろうか。
この世界で冒険者になる者は必ず何かしらの目的を持っている。
未知を探求しまだ見ぬ世界を夢見る者、強大なモンスターを倒し英雄となる事を目指す者、一攫千金を夢見る者などだ。
(俺の場合、主人に当たるノワルが冒険者をやっているからだが、元々、実家があったころから冒険者になる気だった。色んな世界を見て感じたかったから。っていうのはあったけど。)
帰路に着きながらタカシはあれ、俺たちの家って無事なの?という周りの瓦礫の山を見ながら呟いた。
『そこは問題ないわ。その辺も計算して戦ってたから。念の為、結界を張っておいたけど。』
さすがノワルだ。その辺りも考えていたらしい。
『…決闘空間のおかげであれだけデカブツが暴れたのに、この程度で済んだのは運が良かったのかな。』
アロガント変異体は結構な暴れっぷりだったが、結界も張ってあったからなのか、傷一つ無かった。
ノワルの言う通り無事だった屋敷に着いて、一息ついていると、気になる事があった。
『…うちの家が無事だったのは良かったけど、建物の補修費用はどうなるの?…街ぶっ壊した奴があの調子だと返済能力も…』
『うーん。そこは街が負担するしかないんじゃないかしら。』
なんて事を話していると
コンコン
ドアがのっくされた。
『どちら様ですか?』
開くとそこには修道服を着た女性が立っていた。
目元も布で隠れているため顔の半分もわからないが、若い女性だった。
その女性は突然
『あなた方はアロガントが起こした事件について何か良からぬ事を隠していませんか?』
尋ねてきたシスター服の女性は、こちらに質問突然投げ掛けた上に、光輝く剣をこちらめがけて振り抜いた。
『!?』
余りに突然の出来事にタカシは反応すら出来ない。
『は!?』
『…速い!』
ノワルとルキナは反応し、防御の構えを見せるも間に合わない。
剣が体に彼女触れるとそのまますり抜ける様に振り抜かれた。
『斬られた!?…あれ?』
『ッ!?え?
痛くも痒くも無い?いや、確かに当たったはず?』
『…撫でられるというか、感触を調べられた様な気持ち悪い感触』
自分の体をすり抜ける様に振り抜かれた剣はシスター服の女性の手元に戻っていく。
すると、その女性は深々と頭を下げてきた。
『突然の無礼極まる行いをしてしまい、申し訳ありませんでした。』
突然の謝罪に武器を構えた俺たちは止められた。
『え。な、何なんだ?』
『どういう事か、説明してもらえる?』
『…』
俺たちの疑問に対し、シスター服の女性は申し訳なさそうに答える。
『私は審問機関"アストレア"に所属している者です。此度の事件に関して念の為、試させて貰いました。先ほどの剣はあなた方がこの一件に関して、何らかの悪事をしていたかを判断する物です。悪事をしているならば、あなた方を無力化して捕縛していました。』
(とんでもない事を、申し訳なさそうにのたまうこの女は、もしかしたら大物なのかもしれない…)
『ほう?何とも無かったという事は疑いは晴れたという事で良いの?』
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