子猫をもふもふしませんか?〜転生したら、子猫でした。私が国を救う!
碧桜 汐香
お別れにゃー
おかあさん、おかあさん、おかあさんから、私を離さないで……おかあさん……。
おかあさんから離された私は、おかあさんが“かいぬし”と言っていた人間に、どこかに連れてこられた。
「ったく……こいつだけ、柄が微妙なんだよな」
兄弟たちは、おかあさんによく似た真っ白な毛色に青いおめめ。
私だけ、おとうさんに似たらしくて、グレーの毛色に黄色のおめめ。
おかあさんが、大好きなおとうさんに似ててかわいいわ、と言ってくれたこの姿も、“かいぬし”のお眼鏡には適わなかったらしい。
「ほら、自然に返してやるから、好きに生きろよ」
私はまだ、おかあさんのおっぱいしか飲んだことないよ……。ちくちくしたものが刺さった。おかあさん、おかあさんに会いたい……そう思って、“かいぬし”を追いかけようとしたけど、私の足じゃ追いつけない。
にゃー、とお母さんを求めて鳴いてみた。ガサガサ、と音がする……大きな
よちよちと大きな
「シャーーー!」
すごく威嚇されて、追い払われた。
「ここは、俺の領地だ! どっかいきな! ちび!」
慌てて逃げていった先は、森の中だったようだ。
ーーーー
おかあさん……最後に、おかあさんに会いたいよ……おかあさん……。
森の中に逃げ込んだ私。いろんなところから落ちて、高いところから落ちても平気なはずなのに、ボロボロだ。
大きな空飛ぶものや、地面を這うこわいもの、いろんなものに追いかけられた。
おかあさんのおっぱいがなくなって、食べるものもなくなったから、一生懸命虫を捕まえて食べた。
昔、かいぬしが怒りながらやっつけていた虫だ。1匹だけ食べることができたよ。
でも、もうおなかもぺこぺこで、喉とカラカラ……そう思って草陰に隠れて倒れていると、大きな生き物に見つかった。食べられる、おかあさん、おかあさん……。そう思いながら、目を瞑る。前足に衝撃を感じたと思った瞬間、大きな生き物が突然倒れた。
「陛下! 遠目から見ても、立派な狼ですよ! 今夜は、狼鍋ですね!」
2人の人間が、やってきた。
「狼鍋なんて臭くて食べられん。お前にやるから、持って帰れ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
2人のうち、どちらの人間だろう。人間が、がさりと、私のいる草陰をかき分けた。
「……子猫?」
「狙われているはずの狼が逃げんと思ったら、そういうことか」
「にゃ……」
逃げなきゃ。“かいぬし”みたいな人間だったら、こんなボロボロの私を蹴飛ばすかもしれない。逃げなきゃ。
「死にかけてるな。治癒魔法をかけてやれ」
「もちろんです!」
陛下と言われた人間が、もう1人の人間に言った。
その人間が私をそっと持ち上げた。
「にゃ」
「ごめんね、傷を治させてね」
私の周りを優しい光が包む。おかあさんみたいに優しい。おかあさん、だいすきなおかあさん。幸せだなぁ……。
身体中痛かったはずが、痛みがひいてる。まるで
変な記憶に巻き込まれた私は、そっと目を瞑って意識を失った。
「おい!? 死ぬな、子猫!」
「死なないで! 今治したよ!?」
「お前、ちゃんとやったのか? チャールズ」
ーーーー
「にゃ」
私は、陛下のおうち、王城というところに連れて来られた。
チャールズの治癒魔法でちゃんと元気になって、おめめからお尻まで。身体中綺麗に拭いてもらった。虫も1匹1匹とってもらった。お水と他の猫から分けてもらったミルクを毎日飲ませてもらった。ちょっと元気になったところで、お湯に入れて洗われた。綺麗になったようだ。
「見違えるほど、綺麗になったね? 子猫ちゃん」
チャールズに撫でられて、コロコロと言ってしまう。勝手に喉がなるんだ。不思議。
「連れてきてすぐ診察させたが、一応、もう一度医者に見せるか」
医者? 注射とかされたら怖いな。なんで私、そんなこと知ってるんだろう?
「少し炎症が残ってる部分がある以外、もう特に異常はありません。先ほど採血したので、感染症も調べておきますね……あぁ、問題ないです」
痛かった。
「あぁ、そうだ。そろそろ、あいつとの相性を見てみるか」
「じゃあ、俺が子猫ちゃんを連れて行きますよ」
チャールズに抱き上げられ、どこかに連れて行かれた。
「シャーーーーー!」
優雅そうな見た目の
怖すぎて、チャールズにしがみついてガタガタ震えた。
「ウーーー!」
変な唸り声も出ちゃう。やめて! 私、猫大嫌いなの! 犬派なの! 小さい頃に噛まれて、トラウマ!!! ……あれ、これって異世界転生ってやつ? なんで猫? 私死んだよね?
脳内に膨大な記憶が流れ込んできた。全て思い出した。そのまま、私は固まってしまった。
ーーーー
「一緒に飼うのは、無理だな」
「これは、無理だと思います」
先住猫との相性チェックだったらしい。もれなく、不合格だ。
「仕方ない、お前が飼え。チャールズ」
「えぇー? 無理ですよ! 一人暮らしですし、猫飼ったことありません!」
「大丈夫だ。かわいいだろ? 餌も分けてやるし、子猫の間は、毎日一緒に登城していい。子猫がいるときは、あいつは執務室に入れんようにする」
「えぇー……わかりました、陛下のお心のままに」
不安そうなチャールズに抱き抱えられて、目を合わされた。
「にゃっ!」
ん? やる気か? 目を合わせたな? やる気だな?
目が合っただけで一瞬戦闘モードになりかけた。猫って怖い。
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