絶対に履いてはならないパンティ

永嶋良一

第1話

 「キャー。何これぇ? 『絶対に履いてはならないパンティ』ですって?」


 結奈ゆいな頓狂とんきょうな声を挙げた。それを見た美優みゆがお腹を抱えて笑いながら大声で言った。


 「あはははは。結奈、何それ? 『絶対に履いてはならないパンティ』なんて・・そんなのが本当にあるの?」


 私はあんず。結奈と美優と私はS県A市にある県立高校の2年生。私たちは同じクラスの仲良し3人組だ。


 今日は日曜日。私たち3人は、今度A市に新しくできたショッピングモールの探検にやってきた。そして、2階のきれいなランジェリーショップに入って、ワゴンの中に山と積まれた『特売ショーツ』を見ていたのだ。すると、結奈がその『特売ショーツ』の山の中に『絶対に履いてはならないパンティ』を見つけたのだ。


 『特売ショーツ』はワゴンセールの商品だ。ショーツがむき出しでワゴンに積まれているのではなくて、3枚がセットになって、ビニールのような透明な1つの袋に入れて売られていた。・・・そして、そのワゴンに積まれた『特売ショーツ』の山の中に、『絶対に履いてはならないパンティ』と印刷された透明袋がポツンと1つだけ埋もれているのを、結奈が発見したのだ。『絶対に履いてはならないパンティ』も『特売ショーツ』と同じように、3枚がセットになって、1つの透明な袋に入っていた。


 私は、結奈の手の中にある『絶対に履いてはならないパンティ』を覗いてみた。ピンク、赤、紫のレース柄の派手な3枚組のパンティで、透明な袋には黄色い文字で大きく『絶対に履いてはならないパンティ』と印刷されていた。


 結奈がその透明袋を私の方に差し出した。


 「杏。あなた、これ、履いてみなよ」


 私は飛び上がった。


 「なんで私がそんなの履くのよ!」


 「だって、こんな原色のド派手なレースのパンティなんて・・履けるのは杏だけだよ」


 「そんなの理由になってないわよ。だったら、結奈が履けばいいじゃない」


 すると、美優が結奈の持っている透明袋を見て、笑いながら言った。


 「あれっ、袋に何か説明みたいなものが書いてあるよ。結奈、ちょっと、それを私に見せてよ・・」


 美優は結奈から袋を受け取ると、しげしげと表面を眺め始めた。


 美優は池島いけしま美優。私たち3人の中で一番冷静沈着な女の子だ。成績もクラスのトップを争う優秀な子で、もちろん優等生なのだ。身長は168cm。クラスの女子の中では高い方だ。今日のコーディネートは、ブルーのシックなワンピース。胸に届きそうな長い髪を学校ではポニーテールにしているのに、今日は二つに分けて、左を前に持っていって、右を後ろに流すというお嬢様スタイルだ。ワンピースに合わせたブルーのポシェットがとっても映えて、いかにもおしとやかでお上品なお嬢様という雰囲気をかもし出している。


 結奈は津島つしま結奈。運動神経抜群の活発な女の子だ。いつもおちゃらけて、私と美優を笑わせてくれる。身長は163cmで、私たち3人の中では真ん中だ。今日はピンクのTシャツに青いミニのデニムスカート。まだ春先なので、見るからに寒そうだが、この子は露出系のファッションが大好き女子なのだ。ミニスカートから伸びた、すっきりした足がとっても素敵。ショートボブの髪に、ピンクとブルーの野球帽子をちょこんとかぶって、ピンクの柄のついた伊達眼鏡を掛けている。伊達眼鏡がとってもよく似合って、かわいいわ。


 私は垣嶋かきしま杏。ごくごく普通の女の子だ。勉強では美優に、運動では結奈にとても敵わない。身長は158cm。クラスの女子の中では真ん中ぐらいの身長だが、美優と結奈が背が高いので、二人からいつも見下ろされている。今日はベージュのブラウスに、茶色のロングスカート。いつもは肩まで伸びた髪をストレートでゴムで止めているだけなのだが、今日はツイストにしてゴムで止めて、サイド結びで左肩から前に垂らしている。私の大好きなお出かけ用のヘアースタイルだ。ブラウスとスカートに合わせた茶色の麻のトートバッグを持っている。


 私たち3人は高1、高2と同じクラスだ。高校に入ったときに、結奈が私と美優に「私たち3人とも姓に『しま』がついてるでしょ。だから、私たちは『三い(姉妹)』だね」とダジャレを言ったのがきっかけとなって、なんとなく話をするようになった。


 それから、私たちは三人三様でタイプが違うことが返って幸いして、とっても意気投合したのだ。いつも、私が『おちゃらけ結奈』にいじられて、私と結奈の漫才のようなやり取りを美優が笑って仲裁するという爆笑構図が展開される。仲裁といっても、いつも美優が結奈の肩を持つので、私が二人に押し切られるというワンパターンなのだが・・


 そんな私たちは、今では、学校で女子トイレに行くのも一緒で・・・どんなときも、どこへ行くのにも3人が一緒という仲なのだ。


 私が私たち3人のことを考えていると・・・『絶対に履いてはならないパンティ』の透明袋を見ていた美優が声を出した。


 「へえ~。このパンティって、履いたら・・」


 美優の次の言葉を聞いて、私は飛び上がっちゃったのよ。


          (次回に続く)

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