強制的にダンジョンに閉じ込められ配信を始めた俺、吸血鬼に進化するがエロい衝動を抑えきれない

ぐうのすけ

第1話

 イケメンバンパイアの俺がドラゴンを華麗に倒した。

 周りにいるハーレム美女が俺に近づき、熱い抱擁で俺を歓迎した。


「わお!カゲオ、凄すぎ!」

「カゲオ君、カッコよかったですよ」

「カゲオ、ご褒美をあげるね」


 俺は窓から降り注ぐまぶしい朝日で目を覚ました。


「……夢か」


 この世界にダンジョンと魔物が現れたが俺(只野 影雄)には戦いの才能が無い凡人だ。

 何も変わらない、俺は勇者でも賢者でも英雄でもない。


 だが、才能が無くて良かったのかもしれない。

 ダンジョンはリターンが大きい分リスクも大きい。

 成功してもネットで叩かれる。

 そう思う事にしている。


 俺は無言で1階に降りた。

 今日は高校が休み、ダラダラ過ごそう、そう、平和が1番だ。

 もう、高校卒業までの勉強は終わらせている。


 のんびりとだらだらすごし、授業を受けて卒業する。

 平和な生活を続けよう。


「カゲオ、おはよう。休みだからってダラダラしすぎよ」

「そうだぞ、もう少し身なりを整えろ」


 父さんと母さんが俺の身なりを注意した。

 いつもなら注意しないのに珍しい。


「お金が入ったら家のローンを払いましょう。2人目もいいわね」

「おお、ハッスルするか?しとくか?」


 そして機嫌がいい。

 お金があったら、そんなもしも話に花を咲かせている。


 パンとコーヒーを口に運びながらテレビをつけると総理大臣が記者会見をしていた。


『えー、検討に検討を重ねた結果、英雄法が賛成多数で可決され、本日より施行されます。えーこれは、国民の皆様を守る為の……』


 英雄法。

 ざっくり言うと皆を助ける為に選ばれた英雄を徴兵しますよ、そんな法律だ。

 英雄法=人柱法や生贄法と呼ばれている。

 この法律の影響を受けるのは才能のある現勇者とかだろう。

 俺には関係無い。


 そう、俺はモブで、平和に一生を終えるのだ。


 ピンポーン!


「あら、来たみたいね。カゲオ、お出迎えしましょう」

「……ん?なに?」


 俺は母さんの言葉に違和感を覚えた。

 俺がお出迎え?ん?ん?


「そうだぞカゲオ、お出迎えだ」

「父さん?どういう事?」


 父さんと母さんは素早く玄関に移動して扉を開ける。

 すると喪服のような黒くて丈の短い服を着たミステリアス美人が入って来た。

 後ろからは黒スーツのマッチョが2人が付き従うように入って来る。


「どうも、予言者です。あなたがダンジョンで配信をしないと日本人の半分近くが死にます。さあ、行きましょう」

「え?どういう?え?え?」


「……カゲオ君に話していないのですか?」

「ええ、まあそうねえ。言いにくくて」

「話したら逃げられそうだったので言いませんでした」


 父さんと母さんは申し訳なさそうなしぐさで作り笑顔を浮かべてごまかす。


「そうですか、お約束の2億円です。要望通り現金で用意しました」


 マッチョがアタッシュケースを開けると、父さんと母さんが笑顔になった。


「凄いわ!お父さん!札束でビンタして!一度やってほしかったのよ!」

「はっはっは、いいぞお!ぺちんっと」


 父さんと母さんが盛り上がる。


「ではカゲオ君、行きましょう」

「いや、意味が分からないです」



 美人がパチンと指を鳴らすとダブルマッチョが俺の両腕をガチっと組んで俺は浮いたまま外に連れ出された。


「靴を履きたいんだけど!ちょっと!」

「大丈夫です移動しながら話をしましょう」

「それどういう意味での大丈夫ですか?絶対に噛み合ってませんよね?ちょ、ちょっと!」


 俺は黒塗りの車に乗せられ、車が動き出す。

 俺のサイドをダブルマッチョが固め、対面には美人のお姉さんが座る。


「自己紹介がまだでしたね。私の名前は早見カナタです。あなたと同じ高校生なので敬語は必要ありませんよ」


 カナタさんを見ると、黒目黒髪のロングヘア。

 スタイルが良く、最初は喪服のように見えたがあれだ、予言者か。

 顔を黒くて薄いヴェールで覆っており、服は張り付くように体のラインに合わせてある。

 オーダーメイド品なのかもしれない。

 スカートの丈が短くサイドにスリットが入っている為気になってしまう。

 太ももの奥にパープルパンツ!俺は慌てて視線を上げた。


「説明しますね」


 カナタさんはタブレットを太ももの上に乗せてその上の胸で挟み込むように固定した。

 

「英雄法は分かりますか?」

「まあ、はい」

「では次に行きます。カゲオ君、あなたが英雄に選ばれました」


「いや、でも俺は戦いの才能が無いんですよ」

「私は予言者のジョブを持っています。予言で見ました。そして他の予言者も同様にあなたの予言をしています」

「俺はどうなるんですか?」

「完全には分かりません。それに分かっている事でも言えない事もあります。言ってしまうと予言の結果が悪化する場合がありますから」


 レアジョブである予言者の、しかも複数が同じ予言をした。

 まだ1人だけなら予言が外れる可能性もあった。

 だが、複数人が同じ結果を出したとなれば逃げられない。


「お、俺は何をすればいいんだ?」

「敬語が無くなって緊張がほぐれて来ましたね」

「逆だよ!焦っているんだ!余裕が無いからのため口だよ!」


「ふふふ、冗談です。でも、怒鳴ってすっきりしましたか?」

「はあ、まあ、少しはな。それと、パンツが見えている」

「ふふふ、見えているのではありません。カゲオ君に見せています」

「いやいやいやいや、俺のサイドにいるダブルマッチョにも見えるだろ!」


「両サイドにいる男性は、あなたのような男性が大好物です」


 俺は一瞬で鳥肌が立った。


「う、嘘、だよな?」

「ふふふ、さあ、どうでしょう?」


「……」

「……」

「……」

「……」


 ダブルマッチョを交互に見るが表情が読めない。

 カナタも何を考えているのか分からない。

 両腕をホールドされ、トラックのタイヤのような感触が伝わってきて寒気がする。


「さて、何をすればいいかに対しての質問に答えますね。言える事だけ言います。カゲオ君にはこれから物資を補給して貰います。その後すぐにダンジョンに入って貰います」


 街並みが変わり、廃墟が多くなって来た。

 本当にダンジョンに向かっているのか?

 日本に1つしかないダンジョンに?


「待て待て、戦闘訓練は?自衛隊で3か月訓練を受けるとか普通やるよな?」

「無いです。着きましたよ」


 俺はダブルマッチョから違う黒服マッチョに引き渡された。


「ストレージのスキルで収納は出来るな?」

「はい」


 俺はストレージと生活魔法だけは頑張って覚えている。

 生活魔法はそこまでではないがストレージの取得難易度はそこそこ高い。

 アニメの影響で何でも自由に出したかった。

 頑張って覚えたのだ。


 まあ、お金が無くて入れる物が無いんだけどね。

 立派な金庫を買ったのに中に入れるお金が無い的な?


「これを入れろ」

「これは?」

「食料などの必要物資だ。1年分はある」

「え?そ、それって!1年間ダンジョンに居ろって事なんじゃ!」


 黒服マッチョは俺の話をスルーして事を進める。


「これに着替えろ。魔法陣とルーン文字を織り込んだ特注品だ」

「いや、あの」

「着替えて物資を収納しろ!」

「いや」

「着替えて物資を収納しろ!」

「……はい」


 こわ!

 マッチョ圧が半端ない。


 俺は物資を収納して特性品を装備した。

 ブルーのジーパン

 オリーブ色のM-65、ミリタリージャケット

 バトルブーツ

 ロングナイフ2本

 ナイフ1本


 装備し終わった瞬間に俺は魔法陣の上に誘導される。

 魔法陣の大きさはグラウンドがすっぽりと入るほど大きい。


「魔法陣の上に乗ったらワープしたいと念じろ」

「ワープ、したい」


 シュン!


 俺はダンジョンにワープした。

 ダンジョンに入ると洞窟で壁が少しだけ光っていた。

 大きな魔法陣の明かりがまぶしく感じる。

 周りを見渡すと1つだけ大きな道があった。



「ポーションは?回復が出来ないんですけど?」

「奥に進め!」


 そう言って黒服マッチョは鞭を壁に叩きつけた。


 パチン!


「進まなければ鞭で攻撃する」

「冗談ですよね?」


 黒服マッチョが無言で俺を追いかけた。


「うあああああああ!」


 俺は走って逃げる。




「あれ、追ってこない……今度はスライムだ!」


 青いプルプルした魔物が俺に近づいてきた。


 俺はナイフを構えた。


 そして逃げる。




『逃げると危ないですよ!』


 俺の斜め後ろからカナタの声がした。

 声の方を振り向くとルービックキューブのような発光体が浮かびながら俺についてきた。


「いやいや!冒険者なら余裕だけど!俺なら死ねる!」

『カゲオ君、スライムと戦ったことがあるの?』

「無いけど怖いだろ!」


『逃げていると、挟み撃ちに合います!』

「もう、手遅れだ」


 前に4体、後ろから1体がゆっくりと近づいてきた。


『カゲオ君、包囲される方が危ないわ、後ろのスライムを倒しましょう』

「くそ!」


 俺は後ろにいるスライムに向かって走り、横壁を蹴って通り抜けようとするがスライムのタックル攻撃を受けて転んだ。


「まずい!」


 スライムをロングナイフで斬りつけるが倒せない。

 傷がつかない、だと!


『武器に魔力を流してください!そうしないと倒せません!』


 魔物に魔力の通っていない科学兵器は通用しない。

 攻撃するにはすべて魔力を通す必要がある。


 俺は魔力を武器に流し込む。

 体を巡る魔力を武器にも流す、武器も体の一部のように捕らえればいいんだった!

 操作がぎこちなく感じるがそれでも魔力は流れた。

 そのまま攻撃する。


 ロングナイフを何度も突き立てて1体を倒すと、後ろにいたスライム4体がジャンプ攻撃を仕掛けて来た。

 ロングナイフをスライムに突き立てるがタックルの衝撃でまた転ぶ。

 俺は地面に転がりながら反撃する。


「おりゃああああああ!」




「はあ、はあ、たお、した」


 スライムをストレージに収納した。


『カゲオ君、泥まみれですね』

「初めての、戦闘にしては、上出来、だ」

『スライムの移動は遅めですが、攻撃の瞬間だけは飛び跳ねて来ます。包囲される前に倒しましょう』


「戻って訓練したい。魔力を武器にうまく流せていない」

『ダメです。訓練をしない方が予言の結果が良くなります』

「俺はこれからどうすれば良いんだ?」


『まずはキューブに慣れましょう。説明しますね……』




 なるほど、キューブは磁石みたいに一定間隔で俺についてくる。

 カナタの映像を映す事も出来るしマナーモードもある。

 壊れても物資の中に予備のキューブがあってみんなが自由に俺が泥まみれになっている姿を自由に視聴できるのか。


「何となく分かった」

『言っていませんでしたが配信は始まっています』


「え?」

『音声コメント機能をオンにしますね』

「え?もう?」



 するとカナタ以外の声が聞こえる。

 中には機械音声のコメントも聞こえる。


 文章によるコメントだけではなく、音声でコミュニケーションも取れるようになっているのだ。


『お!ようやく話が出来るか、よ、英雄!』

『楽しみにしてるぜ!』

『ステータス見せて』


「ちょ、待ってくださいね。まず、状況、スライムだ!」


 俺はスライムを倒して収納した。


『おお!ストレージか、俺も欲しい』

『英雄のステータスが気になる。さっきはスライムから逃げ回っていたけど何かあるんだろ?』


「はあ、はあ、あの、今は余裕が無いです。あと、ハードルを上げるのは駄目ですよ」

カナタ『自分の身を一番に考えて大丈夫ですよ。余裕が無いのに無理に答える必要はありません』


『可愛い声』

『絶対に美人だ』

『はあ、はあ、顔がみたい』


「スライムが、見えます。一旦周囲にいるスライムを倒してきます」


 カサカサ、ザシュ!

 俺は周りにいるスライムを倒していった。


 足音を消して一気に飛び込んで一気に仕留める、このやり方が安定する。


『忍者かよ。草』

『違うゲームをしているようだwwwwww』

『潜入の暗殺ゲーだよな』

『最初は逃げ回っていたのに馴れて来たな』


 文章を機械が読み上げると『wwwww』も発音するのか。

 人の声と機械音声が同時に聞こえる。

 変な感じだ。


「ゲームじゃ、ないですよ」


『暗殺ゲームすぎるwwwwww』

『黒光りするGだな』

『だからステータスはよ!』

『英雄のステータスは気になるよな』

『カナタタンの顔、はあ、はあ』

『警察の方、ここです』


「ステータス、ですね」




 カゲオ

 レベル:2

 ジョブ:ノービス

 スキル『ストレージ』『生活魔法』




『え?マジか!弱すぎ!』

『ノービスってやばないか?』

『やばくね?底辺じゃん』

『なんで英雄になったの?』


「ええええ!驚いてるのはこっちですよ!もっと言うとここに来る前はレベル1だったからな!」


『どういう役割なの?』


「いや、わからない、です。ほとんど教えて貰えないから」


『カナタタンの顔を見せて』


「キューブ、カナタの顔を出して」


 キューブからカナタの映像が映し出された。

 配信視聴者にも見えるらしい。


『おお!美人だ!』

『羨ましい』


「はあ!今からここに来るか!今から来い!ダンジョンへの出入りは自由だ!!そして俺を守ってくれお願いします!」


『こいつ必死すぎwwwwww』

『さすがに、命を天秤にかけるのはちょっとねえ』

『俺英雄じゃないし』

『じゃあお前やれとかそういうのは違うと思う』

『リスクなしでカナタタンとお近づきになりたい』


「あーいやだいやだ。目の前で人が殺されそうになってもスマホでその様子を撮影しておいて『早く警察が何とかすれば良いのに』とか言って自分では何もしない鬼畜だよ」


『そうだけど何か?』

『当然だろ?だが、俺は地下鉄殺人事件の傍観者みたいに自分だけはまともだとは思っていない。自分が悪いやつだと分かった上で楽しんでいる』


「これが日本の縮図だよ」


『カゲオ、余裕が出て来たな』

『いや、余裕が無いから敬語を使う余裕が無いんだろ』

『もう敬語が無くなった』


「ここに来れば分かる。ここは死が近くにある。敬語を使う余裕が無くなる」


『影のある言い方がおもろい』

『いいねえ。貴重な映像だ』

『人間って追い詰められるとこうなるのか。おもろい』

『カゲオ、後ろ後ろ』

『後ろに気を付けて!』


 急いで後ろを振り向くが何もない。


「あー、びっくりした」


『おもしれえ!』

『カゲオ、後ろ後ろ』

『後ろに気を付けろ』

『後ろだぞ』


「いくら俺でも、もう騙され、ぐっほおおおおおおおおおお!」


 俺は大きいスライムに吹き飛ばされた。




 あとがき

 お読みいただきありがとうございました。

 もし気が乗ったらでよいので『フォロー』と【☆☆☆】を【★★★】にしていただけると嬉しいです。


 やる気が上がります!

 ではまた!

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