飲み屋で武器談話


「おいおい、聞いたぜ?まぁた、武器変えたんだってな?」


「そうなんですよ!トードフィン達を相手に大鎌でくるくる立ち回って、華麗にズバッと喉をひと裂きしてたんですっ!すごくないですか?」


「えっ!なにそれなにそれ!トードフィンって、表面が魚みたいにぬるぬるしてるカエルもどきだよね?あいつを鎌で一太刀ってほんとっ?」


「へぇ?中々やるじゃない。というよりも、私はレ…レ……あなたが主にどの武器を得意としているのかを知らないのよね」



 上から順にアレックス、リオ、レイラ、アリーが喋っている。というか、アリーよ……名前で呼ぶことに慣れてなさすぎだろ…やっぱあれか?貴族には友達らしい友達ができないって本当なのか?



 昨夜、依頼達成の報告を終えた後でアレックスとアリーから飲みの誘いが来たんだが、疲れてたのもあって断ったんだよな。そしたら、翌日の昼過ぎに時間をずらして、飲みの約束が取りつけられたんよ。


 場所は俺お気に入りの静世亭。名前に見合わず今は騒がしいんだが……ちなみに、こっちの会話には参加していないものの、豊穣の灯りメンバーのエマとルーナもいる。

 隅っこで水を片手に何かつまんでるっぽいな。俺と同じ嗜好とは……なかなか解ってる奴等じゃねぇか。

 

 

「そんな一気に質問するなよ……武器なんて何使ってもいいだろうが。そもそも、魔物相手だぞ?対人じゃあるまいし、技量はそんなに求められねぇよ」


「んー、それは違うと思うけどなぁ……ボクがおっさんの戦いを見たことないから、なんとも言えないんだけどさー」


「僕もそう思います!弓と短剣が魔物相手に通用するまで、数年はかかりましたし……」


「私はギフト頼りの大味な魔法戦闘だから、武器術の技量についてはわからないわね……でも、レイラは大盾が基本でルーナは槍。エマはナイフや飛び道具が主体だわ」


「俺は大剣が得意武器だしなぁ…というかそれしか使えん」


「レイラやアレックスは年取ったら大変そうだな……おっさんは二人みたいな重量級の武器は使いたくないね」


「はんっ!なぁにがおっさんだ。俺よりも若いだろうが……だが、実際のとこお前さんはなんの武器が一番得意なんだ?」



 おいおい、結局みんな知りたいのはそこかよ。質問振られた瞬間、いっせいに目をキラキラさせやがって。


 だが、得意武器と言われてもなぁ……武器の使用用途を理解して、腰落として、刃筋をたてる。これさえできれば基本的にはどの武器も大差ないんだわ。対魔物に限った話ではあるが。

 なんで、重要なのはどっちかというと体の使い方になる……素人考えかつ十年程度の経験則によるものなんで、確証はない!



「あー、拳……とか、か?」


「「「え?」」」


「まぁ、レオンはそう答えるだろうなぁ……ようは体術って言いたいんだろ?」


「なぁんだ。わかってんじゃん。なら聞くなよな」


「えっ、でもでもっ、武器によっては使い方とか体の動かしかたとか全然違うよねっ?体術ってひとくくりにまとめられるものでもないと思うな、ボクは!」


「そりゃあ、まぁ対人ならそうだろうさ。けど、魔物相手に型とか効果ないだろ?武器のリーチとかは関係あるが……武器に振り回されないこと。これだけで充分じゃないか?」


「んー、なんか納得できないなぁ……こう、言葉にはできないんだけどさ?……じゃあさ!対人だとどの武器が得意なの?」


「あ、それは私も気になるわね」


「僕に稽古をつけてくれたときは、同じ短剣でしたよね?」


「あっ?そうなのか?」


「まぁ、そうだけどよ……対人なら槍か鉈…後はその辺に落ちてる石とか………んまぁ、そのあたりだな」


「えっ、短剣はどこに行ったの?」


「んなもん、対人戦闘で正面切って使えるかよ。どんだけ懐に入り込まなきゃ行けねぇんだ」


「えっ……じゃあ僕が教わったのって…」


「リオは小さいし瞬発力も高い。その上、お前さんが持つスキルと相性いいからな。あくまでも、俺みたいに短剣向きのギフトもないやつが正面からナイフとか持って挑むのは無謀って話だ」


「そっかー。そういえばおっさんは……じゃあじゃあっ、鉈はなんで対人で得意なの?」


「軽くて、頑丈。尚且つ叩けるし切れる……これに限るわな」



 相手がロングソードだろうがショートソードだろうが、お構いなしに刃を叩き壊せるんだぜ?それに片手で扱えるとこも良き。


 採集するときにも使えるし、獣道を進むときの雑草とか小枝をどけるのにもいい。切れ味はあるんで魔物相手にも通用する。んでもって、その後の解体や火をおこすための薪作りにも持ってこいな代物ときた。俺が森に入るときに愛用している道具の一つだな……あ、これって……



「……あー、やっぱ…鉈が対人に限らず俺の得意武器だわ」


「「なんじゃそりゃっ!」」


「なんですか、それっ!」


「そんなにすごいものなの?鉈……私も一つ買ってみようかしら」



 おう、買っとけ買っとけ。冒険者やってるならあって困るもんじゃねえしな。

 しかし、そうか……俺の得意武器って鉈だったんだな………なんか、地味じゃね?

 

 ――大鎌の扱い練習するべきなのか?これは……。





―――◇◆◇―――


ルーナ「レオンさん、対人で槍だなんて……解ってるわね~」

エマ「石を使うというのも良い判断だと思います。さすがは御嬢様が選んだお方ですっ」

ルーナ「石を例えに出した後、少し含みがあったもの……きっとそれだけじゃないわ~」

エマ「恐らくですが、対人慣れしているのでしょう。頼もしい限りです」

ルーナ「そうね~。強い殿方は大歓迎よ~、うふふ……」

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