辺境伯の狙いはなんだ?!
おはよう、諸君!お茶会から一晩明けて、今日も今日とて採集に励んでいるまもなくおっさんなレオンだ。
いやー……予想外の言葉だったとはいえ、あんな厄ネタ詰まってそうな人と勢いで友達になってしまうとは……迂闊だったなぁ。
たぶんアリー本人の意思としては、純粋に友達になりたいっていうだけのことなんだろうが……そうはいかないのが大人の世界よ。
首輪は掛けられなかったとはいえ、要注意対象くらいには警戒されるだろうな。辺境伯ともあろう人が、親の情だけで冒険者になることを認めるはずがない。いくら、本人の才能が高かろうとな……この世界における貴族という立場は、そんな軽いものじゃあないはずだ。
それに、冒険者になったからといってアリーの身分は辺境伯家令嬢ということに変わりはない。おそらく、あいつの交友関係や知人とのつながり、一日どのように行動したのかを逐一報告……もしくは監視されているはずだ。
ご丁寧に、アリーが辺境伯の次女であるという噂を本当にする用意もされていやがったしな。アリーが冒険者をやめて貴族に戻ったとしても、エマがその代役をこなせる。髪色から目の色、体型や顔つきまでもが近く、冒険者としての彼女の行動や言動を常に観察できるほど身近にいる存在のな。
意図的かは知らんが……アリーが周りに侍女と紹介している時点で、エマという存在がいなくなってもそこまで怪しまれないだろうし。
んでもって、辺境伯の長女としての影武者的役割を担えるのがあの双子ってところか。仮にアリーの変装が解けたとて双子の存在によって、一発で辺境伯の長女まで結び付かないようにもなっている。
いざというときは、本当に影武者のような役割も果たせるんだろうな。
市勢から今の冒険者アリーが、いついなくなっても問題のないような状況が綺麗に整えられている。ここまで徹底しているとはな。
さぁて、そんな辺境伯の狙いはなんだ?有用な人材の発掘か、それとも辺境伯の弱味を握ろうとする勢力のあぶり出しか……伝聞でしか貴族社会を知らんから、これくらいしか思い付かねー。
少なくとも豊穣の灯り含め、冒険者アリーという存在は釣りのルアー的な餌であることは間違いないだろうな。
あんな性格でもパーティーメンバーのギフトはかなり強力な性能だったし。それにギフト・スキル云々だけじゃない。あれはおそらく騎士として、護衛としてしっかりと鍛えられてきたメンツだ。心身ともにな。
「はぁ……今後はよりいっそう力の使い所で注意する必要がありそうだ……やれやれだぜ」
不幸中の幸いと言えば、何故かは知らんがアリーが俺のスキルについて一切他言していなかったことか……。
たしかに、命を助けた代わりとして黙っていてくれとは言ったが……口約束をそこまで守れるなんてどんだけ人間できてんだよ。貴族ってもっと腹が黒いって聞いてるんだがな?
いつまで経っても監視や追っ手が来る気配がしないんで、長い間この街に留まることになってしまっている現状だ。かといって、今この街を出ていくのはいくらなんでも怪しすぎる。
まぁ、いいか。もうひとつの厄ネタをあっちに押し付けることが出来たんだ。友達というつながりの方がまだ擬似的な家族関係よりも細い。差し引きでいうなら、少しプラスってところか………はぁ、ほんとに心からそう思えたら楽なんだがなぁ……。
「今のところ俺をつけている反応は無い、か。」
情報が届いて、案を練り、実行するまで……早ければ今日の採取帰りに何かある…か?――いや、さすがに帰り道には何もないな。いくら獣道があれど森の中で俺の帰り道を予測し待ち伏せするのは手間だし難しい。
そんなことをするより、冒険者ギルドがいちばん自然に接触できる。
となると、豊穣の灯りのメンバーのうちの誰か……替え役だろうエマはないとするならルーナとレイラのどちらか……いや、そもそも辺境伯子飼いの冒険者連中がいるかもしれんな。冒険者はどの職業でも兼任できる訳だし。
ま、少なくとも冒険者関係からの接触は間違いなくあるだろうなぁ。
とはいえ、だ。周囲からすれば、俺はただの銅級冒険者に変わりはない。10年近く積み上げてきた銅級の不変さが、俺の存在の程度を証明するっ!
――自分で思っといてあれだが、俺の小物感がハンパねぇぜ!
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