楽しいお茶会 前編


「あ、あのぅ……本当に僕なんかが一緒で大丈夫なんでしょうか…?」


「何度も言うが、問題なんてねぇよ。それに…今回の護衛依頼を達成すれば、お前さんも晴れて銅級冒険者の仲間入りだ。俺と同じランクだぞ?もっと喜べ、コノヤロー!」


「わわっ。えへっ…もー、髪の毛わしわしするのやめてくださいよー」



 まっ、全く同じランクではないがな。銅級とはいえ、俺のドッグタグは金色で縁取りされている。コンビニのバイトリーダーがつけてる名札のように……そう例えるとなんかちゃちいな。

 まぁ、でも実際そんな感じだからなぁ。銅級の中でも有能ってだけだし。そういうやつはたいてい、縁取り認定される前に銀級に上がるしな。



「でも……先輩の護衛ですよ?なんだかズルしてる気がします……」


「してる気がするもなにも……実際ズルしてるからなぁ」


 

 今回の俺は金級冒険者の案内がメインだ。その案内人が冒険者に護衛依頼をお願いしてもおかしくないだろう?

 身内間での依頼ってのはあまり評価されないんだが、鉄級から銅級に上がる条件の一つは護衛依頼の経験の有無だ。だから、こんな裏技が使えるのさ。



「そ、それに……本当に僕が、豊穣の灯りに…?」


「ええ。ちゃんと、皆と話し合って決めたわ。だからそんなに心配しなくてもいいのよ?」


「心配というか……」


「だーいじょうぶだ、リオ。こいつらもアレックスと同じタイプだ。そもそも俺と普通に接してる時点でそこはわかってるだろ?」


「まぁ、はい……でも世間体とか…」


「はんっ!そんなもの、言いたい奴には勝手に言わせておけばいいのよ。ま、私とその仲間に向かって言えるものなら……ですけどね?」


「ははっ……おいおい、そんなのほとんどの冒険者が黙っちまうぞ?


――ん、目的地周辺です。運転お疲れ様でした……ってな。ここら一帯がオークとゴブリンの集落跡地だ」



 あれからまだそんなに日は経っていないが……辺り一面真っ赤っかだ。シバザクラみたいな育ち方するんだな魔喰草。ここまでくると綺麗なもんだよ。後3日もすれば周囲の残留魔力もなくなって、枯れるんだろうがな。



「死体を苗床にして周辺に咲き、生前の魔力残滓が散る頃に枯れる深紅の花……こりゃあ、彼岸花よりも死に寄り添ってるかもな…」


「ヒガンバナ、ですか?」


「ん?…あー、いや。俺の生まれ育ったところにそう呼ばれている花があるんだよ。ま、あんまし気にすんな。

 で、嬢ちゃんたちはここからどうするつもりで?」


「そうね……見るものも見れたし、リオ君の歓迎会もかねて、ちょっとしたお茶会でもしましょ?こんな素敵なロケーション、あまりないわ」


「それでいいのかよ、金級冒険者……といってもまぁ、こうして花が残ってるってことは、あっちにとってもそこまで重要度は高くないんだろうな」


「報告者のレオンが五体満足でいるもの。その時点でお察しよね」


「え、えぇ……こんなので僕、銅級冒険者になるんですか…」


「いいじゃねえか。銅級になったからといって偉くなるわけでも、稼ぎが良くなるわけでもねえんだ。受けられる依頼の幅が増えるだけ。結局は自分の実力次第だぜ?」


「ごもっともね。金級になれば爵位はもらえるけど」


「そんなもん貰っても仕方ねえよ。個人の実力で稼ぐ職業に名誉なんていらないやい」



 爵位を目指してランクを上げようとする冒険者ってわりといるみたいだが……そんなものもらってどうしたいのかね?中途半端に大きい権力は邪魔にしかならないと思うが。



 っておいおい、いつの間にか~屋外でもできるアフタヌーンティーセット~みたいなのが展開されてやがる……ご丁寧に席は3つ。護衛と侍女は立ちっぱなんだな…お疲れ様だよ、ほんと。


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