チーズ1

 女神様が、語り出した。


『自分たちだけが、飢えから逃れられても、周囲が飢えていたら、襲われますよ~?』


 え~と? 周囲?

 ここは、辺境なんだけど……。

 すっごい、不便な土地を開墾して、ギリギリの生活をしてたんだけどな~。


『難民が来ますよ~。それと盗賊も』


 難民か~。土地を捨てて逃げて来たんだな~。そうなると、隣の土地?

 この国は、もうダメかもしんない。戦争も続けているし。

 そっか~、スピネル男爵領と同じ境遇の領地もあるんね。


「う~ん。家畜とならジャガイモと交換したいんだけどな~」


『山羊も羊も、豚も牛もみーんな食べられちゃいましたよ~。交換できるモノがないから、盗賊に身を堕とすんですよ~』


 王都は何してんだろう? 王族貴族? 国家経営?


『アゲート子爵領が酷くて、200人の難民がスピネル男爵領に向かって来ていますよ~』


 隣接する領地でも、麦が育たなかったんだな~。

 それも、そっか。

 あーしは、女神様に助けて貰ったんだし。奇跡が貰えない人たちが、当たり前なんよね~。そうなると、おすそ分けだ~。


「そんじゃ、テントの増設と、炊き出しからかな~。ジャガイモを食べて貰って、仕事を考えないとな~」


『……分かってんですかね?』





 あーしは、難民を快く受け入れた。

 皆涙を流しながら、ジャガイモを食べている。とりあえず、乱暴者はいなかった。それと、盗む人もだ。

 ここで、一人呟いた。


「チーズやバターをかけて食べたいな……」


 ナイスアイディア!


「採用!」


 調味料が、塩だけだったので、あーしも考えてはいたんだよね。


「「「えっ!?」」」


 ふっふっふ。次の目的が決まったのだ。


「女神様~。チーズを作れる人材が欲しいで~す。扉カモーン」


『……まあ、いいでしょう』


 目の前に、"扉"が現れた。

 チーズ、チーズ、チーズ……。

 私は、祈りながらドアノブを回した。



「ここは……、何処じゃ?」


「異世界です。良く来てくれました、異界の勇者様~。あーしは、領主代理のリナ・スピネルと申します~」


「はえ?」


 来てくれたのは、迫〇喜二さこた○じさんだ。

 異世界に連れて来られたんだけど、落ち着いてあーしの話を聞いてくれた。


「ふむふむ。チーズが欲しいとな。だけど、材料も道具もなく、製法も知らないと……」


「そうなんよ~。領民に教えて貰えないかな~?」


「OKじゃ。儂に任せんしゃい。異国より持ち帰ったこの知識。この地にも根付かせてみせようじゃないか」


 うふふ。期待出来そうだ~。今回も良い人が来てくれた~。

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