チーズ1
女神様が、語り出した。
『自分たちだけが、飢えから逃れられても、周囲が飢えていたら、襲われますよ~?』
え~と? 周囲?
ここは、辺境なんだけど……。
すっごい、不便な土地を開墾して、ギリギリの生活をしてたんだけどな~。
『難民が来ますよ~。それと盗賊も』
難民か~。土地を捨てて逃げて来たんだな~。そうなると、隣の土地?
この国は、もうダメかもしんない。戦争も続けているし。
そっか~、スピネル男爵領と同じ境遇の領地もあるんね。
「う~ん。家畜とならジャガイモと交換したいんだけどな~」
『山羊も羊も、豚も牛もみーんな食べられちゃいましたよ~。交換できるモノがないから、盗賊に身を堕とすんですよ~』
王都は何してんだろう? 王族貴族? 国家経営?
『アゲート子爵領が酷くて、200人の難民がスピネル男爵領に向かって来ていますよ~』
隣接する領地でも、麦が育たなかったんだな~。
それも、そっか。
あーしは、女神様に助けて貰ったんだし。奇跡が貰えない人たちが、当たり前なんよね~。そうなると、おすそ分けだ~。
「そんじゃ、テントの増設と、炊き出しからかな~。ジャガイモを食べて貰って、仕事を考えないとな~」
『……分かってんですかね?』
◇
あーしは、難民を快く受け入れた。
皆涙を流しながら、ジャガイモを食べている。とりあえず、乱暴者はいなかった。それと、盗む人もだ。
ここで、一人呟いた。
「チーズやバターをかけて食べたいな……」
ナイスアイディア!
「採用!」
調味料が、塩だけだったので、あーしも考えてはいたんだよね。
「「「えっ!?」」」
ふっふっふ。次の目的が決まったのだ。
「女神様~。チーズを作れる人材が欲しいで~す。扉カモーン」
『……まあ、いいでしょう』
目の前に、"扉"が現れた。
チーズ、チーズ、チーズ……。
私は、祈りながらドアノブを回した。
「ここは……、何処じゃ?」
「異世界です。良く来てくれました、異界の勇者様~。あーしは、領主代理のリナ・スピネルと申します~」
「はえ?」
来てくれたのは、
異世界に連れて来られたんだけど、落ち着いてあーしの話を聞いてくれた。
「ふむふむ。チーズが欲しいとな。だけど、材料も道具もなく、製法も知らないと……」
「そうなんよ~。領民に教えて貰えないかな~?」
「OKじゃ。儂に任せんしゃい。異国より持ち帰ったこの知識。この地にも根付かせてみせようじゃないか」
うふふ。期待出来そうだ~。今回も良い人が来てくれた~。
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