植物学者
「え~と、詳細は?」
あーしの目の前にドアが現れた。"扉"かな? この質感……、物質じゃないな、魔法だな~。
『欲しい人材を思い浮かべて、そのドアノブを回せば、その願いに見合う人が現れます。より詳細に……、今は何の植物に詳しく、どんな対策がひつ……』
「う~ん。食料を増産してくれる人!」
――ガチャ
『ザックリし過ぎ!』
女神様から突っ込みが来たけど、もうドアノブは、回したのだ。
"扉"が開いて、光の中から誰かが出て来た……。
「あれ? ここは何処かな?」
「良く来てくれました~。あーし、嬉しいよ~。食料の増産よろしくね~」
領民は、頭を抱えていた。
詳細を話す。今困っているのは、麦の不作だ。
「うん? 麦が枯れて育たないの?」
「そうなんよ~。何とかなんないかな~? 植物に詳しんっしょ?」
「OKよ~。私に任せておいて!」
扉から現れた人は、胸をドンと叩いた。
どうやら、頼もしい人が来たみたいだな~。
◇
「うん? 私? 西暦1800年くらいから来た……、異世界人っぽいね。うん、ここは私にとっての異世界だな」
異世界人?
こんな人なんだ? あーしたちと外見は変わらないな~。
それと、勇者とは名乗んないんだ?
名前は、
「ふむふむ。『赤かび病』だね。別な作物を育てればいいだけだよ」
「種もみが、ないんっすけど……」
「ふむふむ……。ここは……、西洋に近そうだね。『ジャガイモ』なんかどうかな?」
「芋ですか……。ですが、種が……」
――ピ、ピ、ポン
「「「え?」」」「おお!?」
「異世界人が持つ
牧野富〇郎さんが、抱えきれないほどのジャガイモを空中から取り出した。
異世界人って、便利な人なんだな~。
「まだ、夏の季節だから、今からでも育つと思うよ。それと、麦は蒔かないでね。来年もジャガイモを育ててね。再来年には、麦を蒔いてもいいかもしれないけど……、隣接する他領次第かな~」
「あり~す。牧野富〇郎さん!」
私は、深々と頭を下げた。
その私の頭を、ポンポンする、牧野富〇郎さん。
「リナさんは、若いのに領主代理か……。苦しい時期かもしれないけど、頑張ってね」
母は、若くして亡くなり、父は病気で臥せっている。兄は、徴兵で戦場だ。
領地経営をするのは、あーししかいない。
「それと、これを……」
ん? なんだろう? 見た事もない植物だな?
「米という植物だ。私みたいな、黒目黒髪が訪れたら、
黒目黒髪?
『異世界召喚者のことですよ~。異世界の勇者と言ったじゃないですか~』
「あれ? 女神様?」
『異世界召喚者に働いて貰ったら、帰してあげて下さいね~。長居させると、迷惑がかかるので~』
「え~、牧野富〇郎さん、帰っちゃうの? 領地経営にこれからも力を貸して欲しいのに~」
「ははは、私も暇じゃないからね~。そうそう長くはいられないよ」
「ぶ~」
こうして、牧野富〇郎さんは、元の世界に戻って行った。
お土産を残して……。
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