第14話、お嬢様にお嬢様が、おたずねになるご様子でございます。

紀伊国屋きのくにや栞子しおりこ様はお嬢様でございます。

 黒須くろす櫻子さくらこ様の親友であり幼馴染であります。

 ある日、櫻子さくらこお嬢様をたずねてこられました。

 お嬢様お二人による優雅なティータイムが始まるのでございます。

 

 テラスの窓ガラスの外には、宇宙を行くたくさんの開拓移民船団が見えているのでございます。

 


「お茶が入りました」


「ごきげんよう、櫻子さくらこ様」


「ごきげんよう、栞子しおりこ様」


 二人は優雅にティーカップを口に運んだ。


 ブフッ


 二人は何とか噴き出すのを耐えた。


「…………」

 二人は何とも言えない目で、金髪メイドのマリアージュを見る。


「最高級、緑光青汁でございます」 

 大麦若葉とケールが効いている。

 

「……相変わらず良い仕事をしていますね……」

 栞子は、櫻子さくらこ様と幼馴染だ。

 櫻子さくらこ様とマリアージュさん、二人との付き合いは長い。


「おほめにあずかり光栄と存じます、栞子しおりこ様」

 マリアージュが頭を下げた。


「こほん、櫻子さくらこ様は、”プラネット・フロンティア・オンライン”はお始めになられているのですよね?」


「ええ、栞子しおりこ様からお誘いを受けたのです」

「始めさせていただいておりますわ」

 櫻子さくらこ様が扇子を口に持っていく。

栞子しおりこ様は?」


「お誘いしておいて申し訳ないのですが、私は今日が初めてなのです」

櫻子さくらこ様がよろしければこれから遊びませんか?」

 私が言った。

 

「ええ、楽しみですわっ」

わたくしの部屋で一緒に遊びましょうっ」

 櫻子さくらこ様が笑う。


「ふうう」

 二人がティーカップを口に運ぶ。

 青汁だ。


「美味しくないですわ」

「もう一杯です」


 青汁のCMの文句だ。


「「うふふ」」

 二人はお互いの顔を見て”息はぴったりです”と言わんばかりに笑いあった。


「失礼しますわ、少し御不浄に」

 櫻子さくらこ様が席を立った。



「マリアージュさん」

 栞子しおりこ様が声をかけてこられます。


「……例のモノはありますか?」


「……これのことでございますね」

 私は光り輝くフォトフレームを空中に出しました


 黒須くろすお嬢様が四度目の死亡ロストの後、しょんぼりしてゲリラ豪雨に呆然とされている、少し残念なスクリーンショットです。


「交換でございます」


「くっ」


「今を逃せば二度と入手することは困難と愚考するのでございます」

 私は表情を変えずに言いました。


「これでどうですか」

 栞子しおりこ様が出した写真は、


 教室で授業中に居眠りをされる、少し残念な黒須くろすお嬢様のお姿でした。


「うっ」


 警護任務中の私には絶対撮れない写真でございます。


「いただきましょう」


 写真を交換しました。

 隠し撮りの写真データはのみ。

 櫻子さくらこお嬢様にバレたら即消去。

 私と栞子しおりこ様とで決めたルールでございます。

 (撮りすぎるから)


 栞子しおりこ様も私も櫻子さくらこお嬢様が大好きなのでございます。

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