死にたがり邪神と嫁入りした生贄少女 第二章 死にたがり

光闇 游

0.伝承についての考察


 かつての四神には、それぞれ奇跡と呼ばれる力があったと言い伝えられている。

 水を統べる水神には、治癒の奇跡を。

 風を統べる風神には、浄化の奇跡を。

 地を統べる土神には、豊穣の奇跡を。

 そして、炎を統べる火神には、再生の奇跡を。

 四神はその奇跡の力を均等に世界に与えることで秩序を形作り、世界を見守っていたのだという。


 しかし、火神は邪神へと堕ちた。

 四神が作り上げた秩序は崩れ、その結果、世界は一度、滅んだと言われている。


 ならば今、この世界が一度滅びながらも在り続けられているのは、何故なのか。

 この世界が邪神の炎によって滅んだのだというのであれば、邪神の炎には再生の奇跡が宿っている。もしも、四神の力の均衡が崩れたことによって、邪神の再生の力が暴走していたのだとすれば。


 つまり、この世界は、邪神の力で再生された巻き戻しの世界であり。

 そして世界は今も尚、再生され続けているということではないだろうか。

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