第151話 舞踏会

 元々何かの舞踏会が開催される予定があり、その会場を城に変更したと聞いた。

 イベントに餓えている貴族は、国王からの話と有りこぞって参列した。

 殆どの貴族は何の集まりなのか分からずに来ており、祝ったのは単に面白いイベントをありがとう!だった。

 ある若い男は美人ばかりがいるなと、羨ましいなとは思うも、その者も今日の妾を連れてきており人のことは言えない。


 だが、国王の言葉に聞き捨てならぬワードを聞き取った目聡い者は、早速動き出す。


「セルカッツ殿、ご結婚おめでとうございます。確かダイランド家は我が国の貴族家ではなかったはずですが?」


 1人の青年が現れた。

 2枚目で眼鏡をくいくいとしそうな見た目だ。


「ありがとうございます。数年以内にこの国でご厄介になると思います。確かに他国の貴族家ですが、理由あって本国へは戻るつもりがないので渡りに船のお話を頂戴しました」


 執事の1人がその男に耳打ちする。


「成る程。おっと失礼したね。私はルグラン・デルン。公爵家の2男だ」


「これはご丁寧に」


「警戒されていますね。まあ仕方がありません。お美しい奥様方を娶られて羨ましい」


「あれ?お1人で来られたので?」


「ははは。一応元々私は婚姻相手を求めて舞踏会に来たのですよ」


「元々この集まりは何のはずだったのですか?知らされずにこうなったので」


「ほら、あそこにいるシーシャ令嬢の魔法学校卒業パーティーですよ」


「ははは。恨まれるかな?」


「いえいえ。男爵の娘のパーティー会場が城になり国王陛下と王妃様がいらしたのです。気絶しないのが不思議なくらい震えており、父親なんかは天にも登る程喜んでいるでしょう」


「なら良いのですが」


「妙齢で美しい令嬢に合えればよいのですが」


「シーシャ嬢はどうなんですか?見た目だけなら私の妻と引けを取らないと思いますよ」


「そうなんだが、如何せん身分が違い過ぎて向こうが恐縮してしまうはずなんだ。確かに良い人なんだが・・・」


「アイリーン!ちょっといいかい?」


 今は入れ替わっているのでヤーマだ。


「紹介するよ。妻のアイリーンです。こちらはルグランさんで、公爵・・・」


 当たり障りのない会話をし、耳打ちをするとアイリーンは去っていった。


 中々良さそうな男で、年齢も近いので、交友を深めるのも良いと思いつつ話していると、アイリーンが話題の男爵の娘を連れてきた。


「紹介しますわ。同じクラスのシーシャですわ。夫のセルカッツとご友人?のルグラン様よ」


 シーシャはセルカッツに挨拶し、ルグランにも挨拶しようとしていた。


「・・・ルグラン様、ごきげんよう。シーシャでございます。今夜は・・・」


 シーシャは今話している相手の身分を知らなかったが、その方が幸せだろうと思いながら、セルカッツは小さな鏡をルグランに握らせた。そして意中の女性に渡せばイチコロだよと囁き別のところに向かった。


「お節介だったかな?」


「いえ。身分がどうのと出会いがないのは可愛そうよ。出会いさえすれば関係ないと思うわ」


 新たな出会いもあり、有意義な舞踏会となった。

 ルグランは多分彼女の事が好きなんだろう。

 うん。そう言うことにしよう!

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