第147話 対談

 どうやら誰かが鏡を開発したという話は、国を越えて知れ渡っているらしい。

 雑談として何処から聞いたのか訪ねると、執事の1人から教えられたが、どうやって得た情報なのかは気にしていないと、セルカッツは聞いた俺がばかだったと呟いていた。


 それはさておき、この世界での鏡はまだ製造方法が確立されておらず、希少価値は鏡の大きさに反比例し、姿見なんかはこちらの言い値のはずだ。

 作るのも枚数を裁けないので、政治的な駆け引きに使う事になる。


 ウルナ達に良い生活をさせてやりたい!そんな思いで作ったが、そのインパクトはセルカッツの想像以上で、考えが甘すぎた。

 子供達は14歳になると、身体を売れるのでそちらに走る者もいたようだ。

 ウルナはそれを是とせず、そうしなくても良いように自分の元にいる者達だけは何とかしていた。

 今は屋敷でふかふかな布団、温かい食事を食べられる。


 彼女達も鏡の価値はわかっているが、彼女達だけだと販売できない。


 そこでセルカッツの出番だったが、予想より早いペースで出所が知れ渡っているようだ。


 まあ、俺のように父は甘くないだろうから、色々手を回しているだろう。


 国王陛下には鏡の出どころがわからないようにしてほしいと頼んだが、恐らく手遅れだという。

 何故なら国王が鏡の販売元としてのセルカッツの名前を知っており、つまりそういう事だ。


 甘かった。

 これから屋敷に鏡の取引を希望する者達が列をなすだろうと、執事にも言われた。


 それはともかく晩餐を共にし、王妃様が退席した後セルカッツは国王の執務室に呼ばれていた。そこには側室が数人来ており、人数を数えるとなんとか大丈夫そうだったので手鏡を渡す。


 国王の話だと、王妃以外は皆同格とし、子作りも王妃が決めた相手が寝所に来るのだとか。

 そのローテーションに王妃もいるが、鏡の数が揃っており抱きつかれて泣いたほどだ。

 

「セルカッツ殿は世の恩人だ!王妃にだけ鏡となると・・・」


「ええ。そうでしょうとも。大変なんですね。僕もいずれそうなるのでしょうか?」


「分かるかい?うん。君も私と同じ苦労をする事になるよ。いや、君の場合はもっとくろうするかな」


 そこから鏡を渡すと妾さん達は皆感謝しつつ去っていったが、2人だけになると本題に入った。


「セルカッツ殿は魔王を倒す算段をしていると言っていたが、どういうことだろうか?」


「それを聞きますか・・・」


「為政者としては聞き捨てならぬワードだからね。復活は近いのかい?」


 国王はセルカッツが色々知っていると踏んで聞いてきている。


「早くて1年以内にも。遅くても3年未満となるでしょう」


「どうやって倒すんだい?」


「ここだけの話にしてもらえますか?それと場所の詮索をしないと誓ってほしいです」


「もちろん」


「魔王の封印されている場所に行き、トラップを仕掛けました。場所を知っている者はまずいないでしょう。魔王は復活するとすぐ死ぬはずです。そういう即死系のトラップを仕掛けましたから」


「ほう。眼の前まで行ったのかね?」


「ええ」


「何故魔王が封印されている場所を知っている?」


 急に国王の口調が変わった。


「詳しくは言えません。僕以外に何人かは魔王を討伐する為にこの世界に来ました。何となく察していると思いますが、誰がそうかは例え陛下であっても言えません。僕がそうだ、それで満足してもらわないと魔王を殺せなくなる恐れがあります。まあ、魔王を倒した後なら良いかもですが」


「そうか。なら聞くまい。それじゃあ鏡も君の知識かい?」


「まあ、そういう事になります。一応言っておきますが、僕の知識でできることには限りがあります。知っていても、その間の技術をしらなくて、使い方がわかるも作り方がわからない物は多いんです。その辺りは今後同類が何とかするかもですが、私に出来るのは今は鏡とか、紙くらいですから」


 国王が満足したのか、その話で開放された。

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