第142話 ミリアムと落とし所

 ドナルドはセルカッツの言葉にはっとなるも、問題がミリアムとのことだけではないと分かっていた。

 使い魔が4人の女性を手籠めにした事を知っでおり、それは夢ではなく支配された自分の体がやっていた事を見ていただけだった。


 使い魔は頭を乗っ取るだけで、子種は本来の体の持ち主のそれだ。


「私は・・・自分の意志でしたことではないとはいえ、この体はミリアム様以外に3人の女性を口説き、性的に支配下においており、口に出すのもはばかられるような事をしてきました。ミリアムサマにしたのと同様に、あいつは己の性欲を満たすためだけに好みの外観の女性に酷い事をしてきました。その行為を止めなければならなかったのにできなかった。ミリアム様に向ける顔がありませんし、他の3人にも同じことが言えます・・・」


 自分の意思ではなく、乗っ取られた体がしたことだ!だから自分は悪くない!と言うことはない。ミリアム様の事もあまり知らない。申し訳ないが、嘘を吐くのは己の矜持に反するし、何より相手に失礼だと前置きをし、素敵な人だとは思うし、自分が貴族かミリアムが平民なら本気で惚れたかもだが、身分差によりそういった目で見ていないから愛情を持っていない。申し訳ないとは思うと。


 先程止められたとはいえ、自害しようとした。

 つまり、クソ野郎な自分に生きる資格はないと言いたいのだ。

 それを聞いたミリアムは涙を浮かべた。


「ドナルド様。私の事を女として愛してはくれないのですか?起こったことはともかく、私はドナルド様を受け入れます。他の3人ともお愛して、向きあいましょう。もちろん私も同席します」


「私には女性を愛する資格はありません・・・」


 ミリアムはドナルドに口説かれる前からドナルドに惚れていた。


 それは、信託の儀式のすぐ後、町へ護衛と買い物に出ていたが、何故かはぐれてしまい、気が付いたら裏路地でガラの悪そうな奴らに囲まれ、下卑た笑みを浮かべながら服を剥ぎ取りに来た。


 必死になり叫びながら逃げたが、服は破られ肌着のみとなっていた。


 そんな中、女性の悲鳴を聞きつけたドナルドが颯爽と現れた。

 瞬く間にそいつらを斬り伏せ、救ってくれた。

 その場で上着を着せてくれて、表通りに行くと取り敢えず女性物の服が売っている所で服を買ってくれた。

 恐怖から失禁していたが、何も言わずに女性店員にお金をにぎらせた。

 その店員に体を拭いてもらい、小奇麗な町娘の姿で寮まで送ってもらった。


 ドナルドがアイリーンの護衛と知っていた。

 学校で見ているからだ。

 寮まで来ると騎士団の者達が待ち構えており、安堵から気絶してしまい、ついぞお礼をしそびれていた。


 その話をし、それを含め女性を蹂躙したとしてもドナルドを愛していると。他の3人も探してドナルドが愛しなさいと。

 彼女は一度町中で盗賊風情に襲われた時に助けられた時、ドナルドに対して私の騎士様!と一方的に好意を持っていたのだ。


 ドナルドの体が起こした事の全てを受け入れ、償わなければならない罪があれば一緒に乗り越えると話した。


 ドナルドは感極まり、彼女のお腹で泣いた。


 自愛に満ちた仕草でその頭を撫でる様子に皆安堵した。


 国王は諦めたように一度王妃を見ると、皆にドナルドは無罪だと告げた。

 また、対外的には国王を狙った刺客が魔法学校に入り込み、国王をドナルドが助けた。その褒美に彼女を与える!そのような話に纏めようとした・・・

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