第123話 侵入

 俺達を襲った者のリーダーであるゲーリーに案内させ、アジトに向かう。


 既に奴隷となっており、嘘偽りを禁じ、先程食らった苦痛から命令を破ったり騙そうとするなどと、悪意をもった行動は命取りになると理解したようで、案内をきちんとしているようだ。


 アジトの近くに行くと、俺達が中に入る時に近くで待機することの許可を求めてきた。


「御主人様、その、間もなくアジトでやすが、その、厚かましいでやすが1つお願いがございやす」


「聞くだけ聞いてやるから話してみろ」

 「ありがとうございやす。いくらおらっちが盗賊で奴隷になったとは言え、仲間を裏切ったと分かると刺違えてでも殺しにくるんでやす。それに仲間に殺されるのだけは勘弁して欲しいので、中に入るのだけはどうか・・・」



 元々邪魔になるし、騒いだりして結果として足を引っ張りかねないから宿に行き仲間の所に戻り、指示を仰げと伝えるつもりだった。


「ああ、その事か。丁度お前を宿に返すところだったからな。お前に俺達をどうこうしようとする意志がなくとも、足を引っ張りかねないから宿に行って指示を仰げ」


「ありがとうございやす!アジトはその建物でやす。入り方は・・・」


 入り方を聞いた後、ゲーリーを宿に戻した。


「よし、ヨルミクル、イザベル、準備は良いか?」


「セル殿、今更ながら何故拙者とイザベルを伴なったのでごさるか?」


「美人と夜中に外へ出たかったじゃだめか?」


「コホン」


 イザベルが窘めるように咳払いをする。


「俺達の中で狭い所で斬り結ぶ事が可能なのはこの3人だ。実際に剣を習ったのが俺達だけだ」


「うむ。では参りましょう!」


 イザベルは金属鎧を着ているが、不思議とガチャガチャと音を建てない。


 入口は閉ざされており、外からはちょっとした衝立で隠れている所に隠し扉があり、言っていた通りに見つかった。


 仕掛け扉となっており、聞いていたのでサクッと開く。


 少し感動。


 こんな盗賊如きがこんなからくりを使っているとは!という内容で、2人も目を丸くしていた。

 流石に建物の側で声を出せず、手振り身振りで中へ入る。


 中はお香が炊かれているのか独特の匂いがするも、基本的に中は臭かった。

 その臭いを打ち消すのにお香が炊かれているようだ。


 血、精液、小便、酒が混ざったような臭いに顔をしかめる。

 地下室があるようだが、入口の床には重りが置いてあり、余程の力持ちじゃないと出られなさそうだった。


 ふと誰かが廊下を歩いてきた。

 粗末な腰布を巻いただけで、欠伸をしながら、こちらの手前の扉を開けて中に入る。


「ふう、すっきりした」


 小便をしていたようだ。

 扉に近付き、そいつが出てきた所で体に触れ奴隷に。 


「喋ったり音を立てる事を禁じる。呻き声も出すな!お前は奴隷となった。この3人が主だ」


 そいつは一瞬身体を硬直させ頷く。


「他の奴は寝ているのか?」


 そいつは頷く。


「案内しろ。声を出しても良いが、俺達の事を悟られるような事をするな!分かったら頷け」


 俺は耳元で囁く。

 そして階段を登り2階の1室に入るのであった。





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