第87話 工房の最後

 工房につくと子供達が荷物をまとめていたが、ネイリスとイザベルが俺達より先についており、荷物をまとめるのを手伝っていた。

 イザベルは何かをしたいが、手持ち無沙汰だったのも有り、ネイリスと共に工房の撤収の手伝いをお願いしていた。

 

 しかし、相変わらず鎧を着ており、仮面をかぶっている。

 

 宿ではどうしているのだろうか?

 折角の美人なのに残念だ。

 荷物が少ないのも有り、1時間もせずに撤収の準備が終わった。


 荷馬車の車体を小さくし、リアカーを4輪にした感じの荷車で、荷台に荷物を載せていた。

 それが2台あり、1台は俺、もう1台はイザベルが牽く。

 勿論身体能力向上を掛けまくっており、どうという事はない。


 先行したネイリスが最近買ってやった服に着替えさせ、思い入れがある服以外のボロは持っていかない事にし、この際ボロ布にしか見えない服はその場に捨て置かせた。

 そうやって荷物を減らしていた。

 もし賊が押し入ったら、何かの用事で全員出払っていると思うだろう。


 完成した鏡は子供達が大事そうに持ち運ぶ。

 大した作業ではないが、何か仕事を【させる】事が彼ら彼女達の将来の為になる。


「イザベル様、立派な騎士様にこのような事をさせ申し訳ありません」


「ウルナ殿、気になされるな。拙者は無骨で女らしい所は皆無なので、このようにしかご主人のお役に立てませぬ。その、ウルナ殿、私に女らしくなるコツを教えてはくれまいか?」


「今のままでも十分女らしいと思いますわよ?」


「このままではご主人様は私を寝所に呼んでくれないと思うのです。このようななりですから、少しでも魅力を上げねば無理だろうと思うのですが?」


「分かりました。私に出来る事ならいたしましょう」


 ウルナさんには俺の傍にいて欲しかったが、イザベルと話をしているので仕方ない。

 むしろ2人が新たな仲間と早々に打ち解けようとしている事は良い事だよね!


 うんうん!


 ただ、時折2人が俺をそっと見るのはなんだろうか?

 目が合うと逸らされる・・・


 意味ありげに話し込んでいたけど、俺何かやった?

 ウルナさんはあの2人とは添い寝だけで、やっていないと分かっているはずだよね?

 しかも、やっていても何も言ってこないはず・・・謎だ。


 子供達は俺が押す荷車に乗り喜んでいたな。

 毎度そうやっているからか、おにぃちゃんありがとう!と言われ、時折肩を叩いてくれたりと、まあ懐かれたもんだ。

 悪い気はしない!


 屋敷に着くと、大いにはしゃぎ、屋敷組と軽く紹介をして先ずは荷物を中へ入れた。


 その後子供達には食事やお風呂を済まさせてから、各自の部屋へ案内した。

 おこちゃま組は数人で1部屋だけど、泣いて喜んでいたのが印象的だった。


 あと、アルテイシア達へ奴隷契約を施した。

 黒き薔薇の面々には明日来るようにと伝えたけどね。


 そうして荷物の整理やらなんやらで、1日はあっという間に終わった。


 俺達が寝静まった頃、町にて2箇所の火災が発生していたのだが、それを知るのは夜が明けてからだった。

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