第83話 夜の秘め事

 俺はいびきをかいていた。

 本物ではなく、意図的にだ。

 2人はずっと固まっており、下手に動くと俺が起きると思ったのか、俺にピトッと身を寄せている形だ。


 心臓はバクバクしているようだ。 

 俺の手は彼女達の胸にある。時折モミモミして反応を見る。

 体が硬直するのが分かる。


 でも、2人共そこそこの大きさがあり中々心地よい。

 本当に14歳の体か?

 でも寝た振りだったけど、俺の手の動きが少なくなると、彼女達も落ち着いたようで俺が寝ながら手を動かしていると本気で思ったようだ。


 いや、そう信じたいと言うか、祈っていたんだと思う。


 しかし、心臓の鼓動が緩やかになると、俺の鼓動も同調し始めた。


 そうすると、何故か心の声が聞こえてきた。


「来るの?来ないの?私、前世でも経験なかったのよ!この状況で何故来ないの?確かに怖いけど、覚悟をしてきたのよ。でも、初めての相手が見た目イケメンなのが幸いかな。でもなんで2人纏めてなのよ!・・・」 


「セルカッツ殿・・・私は貴方に全てを捧げるのは本望だし、子を産みたいとも思う。でもせめて初めては2人きりが良かった!」


 ヨルミクルは心の中でそう呟く。


「来ません・・・ね」


「来ないですわね」


「アルテイシア殿、貴殿はこのお方をどう見まするか?」


「私・・・思い違いをしていたのかしら?奴隷を手籠めにするクソ野郎だと思っていたんです」


「クソ野郎ですか?貴女の口からそのような言葉が出るとは意外としか言えませぬ」


「私はそんなにお上品な女ではなくてよ」


「淑女の鏡然とした貴女の口から聞こえると不思議な感じがしまする」


「ヨルミクルさんも変わった話し方をされますね」


 2人は俺の胸に両肘を着いて手のひらに顎を預けている。

 なので非常に胸に当たっている肘が痛い。


「あら?ヨルミクルさん?お顔が?」


 アルテイシアが頬を撫で、瞼を触る。


「艶々しているわよ?」

「何を言って・・・えっ?どういう事でしょう?治療には金貨1000枚は必要だと諦めていたのですが、何故?」


「この人の仕業でしょうか?」


「見、見えます!ううう!セルカッツ様!一生ついてまいります」


 その気配はあったけど、ヨルミクルが完全に僕のモノと言うか信奉者になった瞬間だ。


 「起きませんわね。きっと戦闘でお疲れなのね。でも明日は流石に来ますよね!?」


「アルテイシア殿、期待しているのか、怖がっているのか分かりませぬよ!」


「私も疲れました。今日はこの人の腕枕で寝ましょうか」


「分かりました!お休みなさいませ!」


 2人が漸く寝た。

 しかし、腕が痛い。

 流石に途中から腕を抜いてヨルミクルに抱きついて寝たよ・・・


 ヨルミクルが気に入ったとかじゃなく、癖で右を向いて寝るから偶々右側にいた方に抱きついたんだ。

 それがヨルミクルだった。

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